<4>~今度は正義の男が仲間になり、磐石な態勢を整える。~ (4)
「……微妙だな」
廻家は苦い顔をした。
流石にこんなアバウトな情報ではいい情報とは思えない。
「いや、これより他に――――――、」
「そういうなよ。こんなもんでも俺達の母さんが命がけで紡いでくれたんだぜ?」
紅の言葉を消すかのように桜さんはおどけたように言う。
「しかしこういうより他は無いだろう。そのUSBはあるのか?」
「ない。“風”ってやつに渡しっきりだったからな。家のパソコンには」
その後。
廻家は紅から情報を引き出した後少し思案顔になって、「お前らもう帰れ。次は何か動きとか用があったら来い」とぶしつけに言った。
そしてすぐ出ることにした。時間がもう六時を回っていたからだった。
「お、もう帰るじゃん?」
「じゃー、帰るー」
「しかし私たちよく考えたら何でここに来たのでしょうか?」
「……ノリ……?」
「考えたら駄目ってことだろ」
二階に居た八人も忘れない。
この後。
桜島先生は気を使ってくれたのか、俺達三人だけになれるように「じゃ、こいつらは俺が送るから」と言った。
「あんがとな」
「何のことだ?(ニヤリ)」
こういうところが仲の良いところなのだろうか。
桜島先生のはからいで三人きりに。
「……お兄ちゃん! どうして嘘をついたの!?」
三人きりになったとたん紅が叫んだ。
「嘘?」
そういえばさっき……。
「あのUSBにはまだ情報が入ってたはずよ。どうして……?」
「まだ情報が?」
そうだ。
さっき何かを言おうとしていた紅を桜さんが止めるようにしたんだった。
「ま、確かに情報はあったわな。でも、俺にはまだアイツは信用できないんでな」
「なんで?」「どうして?」
もちろんここで聞き返すのは当たり前で。
「赤井君はともかく、俺と鍵音はあの男と初対面なんだぜ?鍵音は信用しすぎだ。少なくとも疑え」
「……ごもっともで」
確かに初対面であんな人は信用しづらいよね……。
ところで、気になる点が一つ。
「じゃあ、その言ってない情報ってのはなんなんですか?」
そこで答えたのは紅だった。
「USBの中にはファイルがあったんだけど、その中にはロックがかかっているものや、隠しファイルがあったのよ」
「多分母さんは“統一された幸福な世界”のメインコンピューターあたりから大きなファイル丸ごとコピーしてきたんだろうな」
桜さんが補助。
でも、今のちょっとおかしくないか?
「待てよ。ロックがかかっていたものはともかく、どうして隠しファイルまでわかったんだよ」
普通見えなくしてこその隠しファイルだからな。
「それは私たちのお父さんのせいね……」
「俺達の父さん、紅火切。親父は色々とパソコンってのに詳しくてな」
「詳しい?」
「そういうのを見抜けるプログラムとかが勝手に入ってるって事。俺達が普通に使うようにまでそんなもの入れとくな、って話だがあの親父なら仕方が無いか」
よく分からないけどプログラマーとか言う人種なんだろうか。
赤井のパソコン関係に乏しい頭ではその程度しかわからなかった。
どうやら家のパソコンにはデータを保存していて、全情報は多分紅の父さんが解いてくれるそうだ。
その連絡を待つことにした。
そして次の日。
届いた連絡は「しくじった」だそうだ。
どうやらファイルを開くことには成功したようだが、本当の開け方で開けないと発動するウィルスがあったようで、中身が全滅したそうだ。全力で復旧してみるそうで、一週間くらいかかるそうだ。本気でやれば二日で出来るそうだが、火切さんも社会人。時間はそうは取れないらしい。
そして火切さんから連絡も無く、廻家さんのところに行くほどの用事も無く、この日から六日後の5月1日(月)。
一週間を待たずして、大事件、これからの日本史に残る出来事が起きた。




