~話し合いの末、結論が出た。~
「人間を、辞めろだと……。おとなしく吸血鬼になれって事か!?」
相馬は目の前の鉄格子に両手をかけ食って掛かる。
「落ち着け。時間が無いから結論だけ簡単に言うゆーたやろ」
まぁまぁ、と相馬をなだめる“鳥”。
「正直言ってその篠崎っちゅー彼女から吸血鬼の部分をとるなんて事はもう不可能なんや」
「それは、ある程度は想像していたが……。やはりか」
「だが、理性を失わないようにする、人間としての意識を持たし続けることは出来ない話じゃない。ほら、わいがそうじゃ。結構な荒療治となるけどな」
「勿体つけなくていい。それは、どんな方法なんだ」
「あぁ。拳で分からせろ」
ぐっと手錠が掛けられている両手を握って前に突き出してきた。
「それ、本気で言ってるのか?」
「大マジだ。本来方法は三つある。一つは長年吸血鬼でいることで身体のほうを慣れさせる。これはお前が時間が無いって言ったから却下だろ。二つ目は大量の血を与えて吸血鬼の性質を満足させる。これも、非人道的なことをしたくないだろうから却下。そして三つ目、吸血気化した女の子を倒す。これには色々と意味があってな。吸血気化している最中に意識が戻ればいいわけだ。だから、一度吸血鬼を倒して意識の戻るチャンスを与えてやるわけだ。それである程度操れるようになる。選択肢は三択に見えて一つだろうが」
「お前は、どの方法だったんだ?」
「わいも三番目や。あれは、どれくらい昔のことだったかね……。ちなみに同じ風に“創造主”にも殴られたんじゃけどな。それが仲間に入るきっかけになったわけやけど。いや、今はそんなことどうでも良い。あ、言っとくけど夜に倒さなければならないぞ? 昼間にその手錠を外して開放させちまったら日焼けで死んじまうからな」
「本当に、そんな方法で……」
相馬は嫌そうな顔をした。
このことは他の誰にも話せない。
だから、この倒すという方法を自分の手で行わなければならないのだ。
もちろん、他の者にも元からさせる気なんか無いけれど。
「お前さんにも、その篠崎って彼女にもかなりきつい判断じゃろうけどな。じゃが、これしかないぞ? 幸いわいが血をちょびっとしか飲んどらんから、吸血鬼の性質もかなり制限されるじゃろ。吸血衝動も、頑張ればほとんど消せるじゃろうし。さしづめ、半吸血鬼じゃな。だからこそ、この作戦はかなり成功率は高いと思うぞ?」
「分かった。努力してみよう」
「せいぜい気ぃつけときや。制限されとるとはいえ、相手どっとるのは人外の化物、吸血鬼っちゅーことを忘れるな」
「人外の化物は余計だ、糞野郎」
相馬が吐き捨てるようにそういった直後、上から焔が降りてきた。
約束の30分がもう経っていた。
「そうじゃ」
最後に“鳥”と、ある程度会話してこの場を去った。
「やれやれじゃな。まぁ、自分が蒔いた種とはいえ。若いのにあの少年、随分な業を抱えて……」
相馬がいなくなった独房で、“鳥”は呟いていた。
「本当に面白い少年じゃわい。もしかしたらいい友人になれるかもな。応援しとるわい!!」
“鳥”の顔は、捕らえられているものとは思えないほどの笑顔だった。
相馬は警察署からすぐに出、行動を開始した。