~篠崎は恥ずかしげに家事能力をアピール。~
「策、あるの!?」
篠崎はベッドから飛び起きて答えた。
「えぇ。簡単な話です。あの“鳥”という男を思い出してみてください。あの男は、完璧にその吸血鬼の力をコントロールしていたんじゃないでしょうか?」
「あ……」
言われてみればそうだった。
私達と一応会話は成立していたし、 暴走という感じでは無かった。
「ですからあの男に話を聞いてきます」
「どうやって!?」
確か“鳥”は、唯一“統一された幸福な世界”の大幹部で、都市警察が捕まえられたうちの一人の筈だ。
そんな人間に会いにいけるものなのだろうか?
「それには少し時間が掛かります。ですが篠崎さんは急を要しそうですので、策その2を使わせてもらいましょう」
相馬はそういうと、ガサゴソと自分が持ってきていたバックをあさる。
「これです」
相馬がバックから取り出したのは、手錠だった。
「それって……」
「えぇ。あの“統一された幸福な世界”と、都市警察が使っている才能を封じる手錠です。これが吸血鬼にも効く事は“鳥”で実行済み。ですから、しばらくの間はこれを片腕につけていればいいんですよ」
篠崎に手錠を手渡す。
「どうして相馬が?」
「あの事件のときに“鳥”から二、三個もらっておいたんです」
バックから更にもう一つ手錠を見せた相馬。
「鍵はこれです」
ホイッと鍵を放り投げた。
「あ、ありがとう……」
早速篠崎は右手に手錠を掛けた。
「とはいっても、これは一時的なものです。それをつけていると、篠崎さんの本来の才能“重力遮断”まで消えてしまいますから。だからこそ、“鳥”に会いに行くわけですが」
相馬はそこまで言うと立ち上がり、もう暗くなってきたので、といって篠崎の家を出ようとした。
「ま、待って!!」
帰ろうとしていた相馬の腕を、篠崎が掴んだ。
「どうしたのですか?」
「い、いや、その……」
篠崎が顔を赤らめてもじもじとしている。
「大丈夫ですか? まだ具合が優れないとか……」
「べ、別に大丈夫、大丈夫だから!! そ、その、もう暗いから、晩御飯、食べていかない?」
篠崎は顔を背けて上目遣いに相馬を見た。
「……、そんな表情を見て帰るなんて男は男じゃないと私は思いますね。迷惑ではないなら、いただきましょう」
相馬はさっきまで自分が座っていたところに腰かけた。
「そ、そう!! ならそこに座ってて!! 作ってくるから!!」
多少慌てた様子で、篠崎がキッチンと思しきところに走っていった。
篠崎さんの手料理ですか、どんなものなんでしょうか。
「篠崎さん、今日は何を作るんですか?」
「肉じゃがを作ろうと思うの!」
キッチンのほうから声がする。
肉じゃがとは、結構定番ではありますが。
こういうのに顕著に家庭の味が出るというものです。
「そうですか、肉じゃが作れるんですね。将来いいお嫁さんになれるんじゃないでしょうか?」
「も、もう、馬鹿言ってないの!!」
おや、怒らせてしまったでしょうか。
まったく自分のナチュラルジゴロトークに気がついていない相馬であった。