~相馬は篠崎に対して積極的。~
5月9日(火)、昼休みの間之崎学園第二図書館。
間之崎学園は第一から第三まで三つの図書館がある。
その中の第二図書館に相馬は居た。
「やはり、そうですか」
相馬は一冊の本を読んでいた。
タイトルは『吸血鬼伝説』というものだった。
「皆さん忘れているのでしょうか、いや、知らないのでしょうか。吸血鬼に血を吸われた者は、吸血鬼に成るという事を」
放課後。
「今日は用事がありますので、お先に失礼させてもらいます」
相馬は放課後になると急いで教室から出て行った。
「あんなに急いでどこ行くんだろうな?」
「さぁ。わかんないじゃん」
篠崎の部屋。
「どうして、こんなことに……」
ビッチリとカーテンが閉められた仄暗い部屋にひとり、篠崎が座っていた。
テーブルの上にあった鏡を見て、溜息をつく。
「こんにちわ。篠崎さん」
その時、部屋の中にいきなり男が入ってきた。
「そ、相馬!? どうしてここに!?」
篠崎は飛び起きてベッドの中にもぐりこんだ。
「確かに何のアポも取らず入ったことは謝りましょう。ですが、正攻法では話してくれそうには無かったので、すこし荒業を使わせてもらいました」
相馬の才能、“通行許可証”はどんなものでもすり抜けられる。
もちろん、鍵の掛かった扉も。
「だからって、入ることは無いでしょう!!」
「ですから、女性に対してこのような手を使わざるを得なかったということは謝ります」
相馬はそう言って、正座をし両手を地面につけ腰を深々と下ろした。
額が地面についている。
いわゆる土下座の構えであった。
「ちょ、ちょっと!! そこまでしなくても良いんだって!!」
思わずベッドから篠崎が出てきて相馬を止める。
「そうですか。では、本題に入らせていただいてもよろしいですか?」
相馬は篠崎の目を見てそう言った。
「篠崎さん、あなた、吸血鬼ですよね」
冗談でもなんでもなく、至って真面目に言った。
「…………」
篠崎は無言で答えない。
それこそが、答えだった。
篠崎麻耶は、吸血鬼に成り果ててしまっていた。