(Next Prologue、そのニ)
5月1日、“創造主”達のいたビル、壁一面にモニターのある司令室。
「へぇ。“創造主”はあんな化物みたいな奴を持ってたのか。“影”ねぇ」
そこには男がひとり立っており、モニターを見ていた。
その部屋には大きなデスクもあり、女の子がデスクに突っ伏して気を失っていた。
「そんな化物でも、あの男には負けるわけだ」
モニターの奥では、赤井が“影”を殴り飛ばしていた。
「あーあ、身体の半身が消されちまってるよ。流石にこりゃ無理だろうな。って、爆散しやがった」
身体の半分を消された“影”は爆散していた。
「しかし、最後の連係はどうみてもアイコンタクトですら取って無かったよな」
部屋の中でじっとモニターを見ながら、静かにひとり呟く。
「これが、赤井夢斗の才能だとでも言うのか。やはり、赤井夢斗は只者ではないということか」
男は忌々しげに続ける。
「味方は知らない間に赤井を庇うように行動し、敵は知らない間に隙を見せる。俺はこんな化物と昔やりあったってことかよ」
「やはり、“才能帰却”なんてのが赤井の才能、いや、真の才能ではないな」
「敵も味方も、赤井と共にいたものは全員がハッピーエンドを迎える。まさしくアイツの本当の才能は――――」
「“主人公”。無自覚だろうが、まさしく化物の才能だな。だが、まだ俺は負けたと思ってはない」
男は拳を握り締める。
「策は考えた。準備にそこまで時間も掛からないだろう。良い勝負をしようぜ? Mr.バッドエンドとして、お前に絶望を見せてやる」
モニターにそう語りかけると、瞬間移動のように一瞬で男はその場から消えた。
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5月2日、事件後、“都市”外の二人の会話。
「これは、“創造”じゃないか」
“5.01事件”について書かれている記事を見て、その男は見知った顔を発見して立ち止まった。
「“創造”って確か、きょーすけが探している人よね?」
男の横にいた中学生くらいの女の子が新聞を横から覗き込む。
「そうだな。こんなことをしでかすなんて……。あの野郎、やっぱりあのことが頭に残って……」
「それって、きょーすけが話してくれたあの事件?」
「あぁ。俺はあの男に嵌められたんだ。いや、俺だけじゃない。“創造”もだ。あの男は関わった人間すべてに絶望を味わせる、バッドエンドにする男にな」
その顔は苦虫を噛み潰したかのようなものだった。
「きょーすけ、顔怖いよ?」
「ん? あぁ、そう? 悪かったな。後、お前別に見た目にこだわらずに口調は普通で良いぜ?」
「そうかしら? とはいっても、どうせこんな姿なんだからエンジョイさせてもらうわ」
そのときの女の子の口調は老成されたもののようだった。
とても見た目からは想像できない。
「まったくお前は……。とにかく、こいつが今行方不明なんだとよ」
「ん? それがどーかしたの? それは今まで通りでしょ?」
「お前、その口調はちょっと幼稚すぎるんじゃねぇか。いや、今はそんなことよりもだ。行方不明って事は、“都市”以外のどこかにいるってことだ」
「あ、確かにー。頭良いんだね」
「お前に言われるとな……。とにかくだ。外国から当たってみるぞ」
そうしてきょーすけと呼ばれている男は歩き出す。
「あ、そうだ。この事件を解決したのが赤井だそうだ。ほら、警察から表彰を受けたって写真とかマスコミが殺到したとか、新聞の一面を飾ってるだろ?」
思い出したように新聞の下を指差す。
「あ!? 赤井!!」
その記事を発見して女の子は凄く驚いていた。
「中一のときとはえらい違いねー」
「いや、むしろあのときの経験のせいでこんなことに首を突っ込むようになっちまったと思うんだが」
「そんなことないって。あー、久しぶりに赤井に会いたいなー」
その女の子は新聞を胸に抱いて言った。
「もしかしたら、“都市”に行くことにもなるかもしれないな。そのときは、会いにいけるかもしれん」
「本当!? やったー!!」
手を挙げて女の子は喜んでいた。
赤井も、あまり色々なことに首を突っ込み過ぎないように釘を刺しておかんといかんな。
そういう風に目立つと、あの男が来るかもしれない。
なんとなくだが、嫌な予感がしてならない。
Mr.バッドエンド、お前は殺したと思っていても死んでいない男だということはよく分かっている。
まだ油断をする気は無い。
とにかく誤解を解かないとな。
嫌な予感がする。
お前はまだ、潜んでいるんじゃないか?
きょーすけと呼ばれている男は、“創造”を探し、ある誤解を解こうと考えた。
次からの話はSkills Cross~Another Life~で更新されていた話となります。