<4>~最終決戦!!~ (7)
「成程な、策士が。これを狙っていたということか」
“創造主”は忌々しげに呟く。
「本気で、賭けだったがな……」
ふらふらになりつつも高原は答える。
「“雷”?」
「じゃあ、あれは天音であって天音でないって事じゃん?」
「そういうことになるのでしょうか。あれは私の知っている天音さんではありませんし」
「そうなの? てっきり私はこんな人かと思っちゃったわよ」
十島、染山、相馬、姫岸は“雷”のその説明を聞いて一応は納得する。
「やるだけ、やってみようとするか。天災よ」
【人間ノ反抗ナンテ小サイ物ダガナ】
“雷”はそういうと、右手に電気を集中させる。
とはいっても、ほんの一瞬気をそむける程度。
そのまま右手を前に出す。
【ダガ、命令デモ無ク己ノ信念ダケデ俺ト戦オフトシテイル、其ノ心意気ハ買オフ】
“雷”の右手から幾重もの電撃が飛び出す。
“創造主”は“帰却者の左手”でこれを打ち消して止める。
【ン? 消ヘタ?】
「さて、化物退治と行くか」
“創造主”は右手を後ろに、左手を前に構える。
もしもこの男が“花”の報告通りなら、ほとんどの物理攻撃を無効化できる、変異系ということになる。
いや、もしもなんて希望的観測は避けよう。
希望は砕かれ、絶望が我が物顔で闊歩するのがこの世の中だ。
そうなれば勝てるのは、俺の左手だけか。
「“消し去る砲弾”!」
今までの最高噴出で“創造主”が飛ぶ。
【其ノ程度デ俺ニ殴リカカロウト思ッタノカ?】
馬ー鹿、とでも軽く言うかのように。
“雷”は一瞬でその大砲のような速度の拳を右に移動することで避けた。
そして一瞬で“創造主”まで詰め寄った。
【“神鳴”】
そのまま“創造主”の両耳から両目にかけて手を合わせると、“雷”の両手が輝く。
ドォォォンという、漫画的な音がよく似合うほどの爆音がホールに響き、“創造主”のいた辺りが鋭く輝いた。
それは、ホールが揺れたかと錯覚するような程の音だった。
「……!? 何だ!? 敵襲!?」
その音は意識を失っていた赤井が目を覚ますほどのものだった。
他の全員も耳を塞いだ。頭がくらくらする。目の前がちかちかしたりする。
【命ダケハ取ラナイデヤルヨ。俺ハアンタニ恨ミガ其処マデ有ル訳ジャ無イシナ】
“雷”はそこで立ちっぱなしでいる“創造主”に言う。
“創造主”は、目を見開いたまま硬直していた。
別に直接電撃を受けた訳ではない。
ただ、超至近距離で超爆音と閃光が爆裂した。
“創造主”の耳から血が垂れた。
そしてバランスを失ったのか、ふらりと倒れこんだ。
超爆音は鼓膜を破壊し、閃光は目を焼いた。
耳には三半規管という人間がバランスを保つための器官があるが、それも破壊され“創造主”はバランスを取れなくなったのだ。
あっけなく、実力差、才能差を見せ付けられ、
戦いが集結した。
歴史なんてあっけないものです。
むしろ、主人公がラスボスを倒せるなんて実際では稀なことなのです。
あっけなく、人は負けるのです。