<4>~最終決戦!!~ (3)
これがチートキャラっていうのでしょうか。
“創造主”さん。
「だが惜しい」
“創造主”は慌ててもおかしくないような状況下で冷静にそういった。
そして染山の右手を左手、“帰却者の左手”で掴むことで温度の問題を回避し、この一手で倒せると思っていてバランスが崩れている染山を後ろに投げ飛ばした。
染山はそのまま後ろに投げ飛ばされる。
“創造主”は次に左手を地面から出ている手を掴もうとした。
すると、慌てて相馬は地面から飛び出す。
「少年、お前だったのか。面白い才能だな」
相馬が飛び出した理由は至極明快だった。
どうやら赤井の言っていた通り“創造主”の才能は赤井の身体と同じようだ。
つまりその手に触れられている間は才能を発揮できないということ。
ということは、触れられた瞬間壁をすり抜けるという才能が使えなくなり、相馬は一発で圧死するところだったのだ。
たとえ地面に隠れたとしても、この“帰却者の左手”がどの範囲まで才能を使えなくさせるのか分からない。地面全体で才能の効果を受け付けなくなってしまえば、やはり相馬は圧死してしまうのだ。
だがこの場合、出たとしても出なかったとしても結果は変わらなかったのかもしれない。
相馬は自分が死んでしまうかもしれないことを一瞬で計算し脱出したが、その後のことまでは考えていなかった。
それが、実戦経験の差というものなのかもしれない。
戦闘というのは一瞬の中で数手先を読みながらしなければならないものだ。
“創造主”は飛び上がった相馬の右足首を左手で掴み、右手を頭に向ける。
「創造:雷」
そういった瞬間“創造主”の右手から紅のときと同じように電気が放出され、相馬は逃げることが出来ずもろにそれを受けてしまう。
相馬はビリビリと身体から言わせながら、その場に倒れこんだ。
「心配するな、死ぬほどの電圧では放っていない。さて、“痛”でも起こしに行くか」
“創造主”は歩いて“痛”の元まで向かう。
「あの人に対するー、対抗策がー、見当たらないー」
「しょうがないんじゃ、無いかな、十島君。あの人の左手は赤井君と同じなんだから」
十島は自分では戦力にならないことを自覚している。
自分の才能は補助である。
敵の隙が見えたとしても、十島ではそこに身体が追いつかないことは重々承知していた。
篠崎は先ほどからずっと苦しそうに息をしており、座り込んでいた。
汗も大量に噴き出していた。
「お姉ちゃん、どうしよう!!」
「そうは言っても、私の“一寸先の未来”じゃあの男がどんな行動をしてくるかが読めないのよ……。だから、戦えないわ……」
叶は先ほどと間之崎学園での“痛”との戦闘があり、先ほどの戦闘でのダメージもあって、満足に戦える状況ではない。
祈は“痛”との戦闘ではダメージを受けたが、先ほどの試合を無傷で終わらせている。だが、自分の才能が全く効かない相手とは正直言って戦いたくない。
というか祈は傭兵で培った体術があったとしても、今は戦うだけ無駄、足手まといにしかならないと考えている。
この辺りが元傭兵なりのあっさりとした考えだろうか。
無謀な挑戦は避けている。
「白道、もしもこれがアイツの左手で解除されたら、次は出来るか?」
「無理だ……、なぁ。そうしたら、俺が、本気で、ぶっ壊れるからよぉ……」
太陽は“恋”との戦闘で自分から太ももにナイフを刺していてあまり足を使った身動きが取れないので、“創造主”の隙を見計らっていた。
隙があれば、座った状態でも攻撃可能な拳銃で撃つ予定だった。
だが、“創造主”には隙が無い。
いつ、どの瞬間で撃っても瞬時に防御されそうな気がする。
事実、紅や染山が“創造主”に攻めていたとき、こちらにもしっかりと注意を向けていた。
白道は才能の乱発のしすぎで今にも倒れそうな感じになっている、
体中からは篠崎と同じくらい汗が噴き出し、目は充血しているが顔は蒼白としていた。
まさしく、絶望的状況という言葉がぴったりだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あらら。まだ赤井は状況をひっくり返してないのかよ。せっかくお前と友達の染山と十島を送り込んで全員救出させてやったのによ。俺が見込んだ、嫌敵手だろ?」
その男は現在ある部屋にいた。
そこは壁一面モニターがあり、デスクの上には色々なボタンやらレバーがセットされてある。
そんな司令室のような場所に一人の女の子が座っていた。
だが女の子はデスクに突っ伏すようにして気を失っている。
男はその後ろでモニターを見ていたのだ。
「まったく、“花”ちゃんの才能とか、こういう空間把握能力っていうの? 大量の画面を見る力って、うらやましいよな」
その男はそのままデスクに近づく。
「俺にこうさせることですらアイツの力の内なら、大したもんだよ。赤井夢斗。いや、俺なりに言うならMr.ハッピーエンドの方がいいのか?」
男は黒い服を着ていた。
それこそ、“統一された幸福な世界”の制服の様な黒い服を。
その黒服はデスクに近づくと、あるボタンを三つ同時に押した。
「もう“創造主”なんておもちゃ飽きちまったな。さっさとアイツに絶望でも与えてやるか」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
“創造主”が“痛”に近づいているとき、ガコンガコンと機械的な音がホールに響いた。
その音が気になって振り向いてみると、そこには、
「どういうことだ……!?」
ゆっくりと階段が出来上がっていた。
その階段は太陽や叶達が降りてきたときの階段。
ここの階段は目的の者が空間に入ってからすぐに閉じるようになっているはず。
ある程度の敵を下の階に送ることで、敵を分離、もしくは閉鎖するのに。
その階段が今、もう一度現れていた。
語句の説明が出来なかったので少し。
好敵手と書いてライバルと読ませるそうですが。
彼の場合は憎んでいますから。
だから嫌敵手と書かせてもらいました。
彼の説明はまた……




