<3>~二人は一日置いて、目的地へと向かう。~ (2)
まぁ。
そりゃそうだよね。
何にも起きるわけ無いですよね。
ひょっとしたら黒服が来るんじゃないかとも思っていた俺が馬鹿みたいじゃん。
そして朝。
幸い今日は土曜日なので特に何にも無い。
「さー行くか」
「どうしてさも当然のように付いてこようとしてんのよ」
朝食を食べた後、紅は母さんにお礼を言って出て行った。
だから付いていっただけ。
「お前狙われてるんだろ? 助けてやるって」
「赤井はあいつらの恐ろしさを知らないんだから……」
そうはいっても駄目だとは言わなくなった紅。
心を開いてくれたのかな…?
と思っていると、紅は興味深い一言を言い出した。
「でもま、その手間も私が家に着くまでだけどね」
「ん、どういうことだよ」
すると紅は急に顔をキラキラさせて、
「だって、お兄ちゃんがいるんだもん!」
と、とびきりの笑顔で言い出した。
「に、兄ちゃん?」
「そう、お兄ちゃんよ!」
「おいおい、どんな兄さんか知らんけど、こっちにいるってことは普通の人なんだろ? 俺と大差変わんねぇじゃねぇか」
どんだけ兄さんが好きなんだよ。
このころ、まだあの人に会う前はそんなことを考えていた。
さてしも。
電車やらバスやらを使いこなし。
4時間程度で着いた。
「お前6時間位って言ったよな!!」
「だってバスとか電車とか使ったこと無いんだもん」
「どんだけ箱入り娘なんだよ!」
「だって私の才能があったら別に使う必要ないし。跳べばいいから」
「……、そうか、超跳躍だったっけか」
そういやそんな才能聞いてたな。
「直線に跳べば結構な短さで行けるのに……。わざわざ金を使っちゃったじゃない」
「直線に跳ぶ!?」
「流石にビルだと厳しいけど、家とかアパートくらいなら跳び越えられるわよ?」
「小さなところでやっぱ才能ってすげぇなと思ったぜ……」
そんなこんなで紅の家。
普通の住宅街にある普通の一軒家だった。
「もういいわよ。ここまで付き合ってくれてありがとう。赤井のこと、たぶん忘れないわ」
「多分て。でも、とりあえず任務完了なのか…?ていうか、お前で何とかできるのか?この後」
「大体私とアンタは他人。後はあたし達の家族で何とかするわ。警察にも頼ればいいしね」
「そうか、お前の兄ちゃんってのがどんな人かってのは気になったんだけどな」
どうしてこんなことを言ったのか。
「じゃあ、見てく?」
今でも謎。
紅がチャイムを押す。
ピーンポーン。
よくある普通のチャイムがなると、数秒ほどで玄関のドアが開いた。
そこにはラフな格好をした男が。
「…、鍵音!!どうして帰ってきて? ってそれより」
俺が聞いたのはここまでだった。
「お前は誰だー!!」
玄関にいた男によって、顔面をおもっきり殴られ、俺は意識を失ったからな訳で。