4話 新しい場所へ
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「どこの大馬鹿だ!!『壁を食べて脱出しよう!』なんて天才的な作戦を考えた奴はぁぁぁ!!」
ビシッ! と決めポーズをとり自分を指差した!
「我だぁぁぁぁぁ!!!!」
ルクの情緒がおかしくなり始めた……そんな時だった。
【ワールドスキル《ダンジョンマスター》により、ダンジョンの変更が可能です】
何やら女性らしき声が、聞こえた気がした。
「今……誰か喋ったか?」
しかしこの空間には誰もおらず、あるのは砂と岩と、昨日まで食べていた壁だけ……。
「……もしかして、お前か?」
ルクはハッと気づき、これまで枕代わりにしていた少し大きめの光る石をそっと撫でてみた。
確かに「不思議な石だな」とは思っていたのだ。最初はダンジョンコアかとも疑ったが、こんな殺風景な初期部屋がコアルームであるはずもない。
とりあえずほのかに光っていて便利だったため、食べずに放置していたシロモノである。光る石を穴が開くほど凝視してみるルク。……しかし、それ以上何者かの声が聞こえてくる気配はなかった。
「……なんだ、気のせいか」
シュンと肩を落としたルクは、チラリと例の石扉に視線を送り、シャドーウルフたちが扉の向こうで待ち構えていないことを遠目から確認する。
「よし! 今日も無事に生き延びたぞ」
軽く身体をほぐすと、素振りのような体術の型をこなし、腕立て伏せ、腹筋、そして最後に繊細な魔力操作の訓練へと移行する。
この八年間で完全に習慣化した日課である。前世の己を超える最強の魔王へ至るための地道な鍛錬は、一日たりとも欠かすわけにはいかないのだ。!
するとまた……。
【ワールドスキル《ダンジョンマスター》により、ダンジョンの変更を推奨します】
「やっぱりなんか喋ったぁぁぁ!!!」
急に声が頭の中に響き渡り飛び上がるルク。ババっと辺りを見回すがやっぱり誰もいない。
「くっ、一体どこだ??」
【ワールドスキル《暴食》により蓄積したストックエネルギーが一定値を超えました。ストックエネルギーを消費し、ダンジョンの変更が可能です】
「…………?? 何を言ってんのかさっぱりわからんのだが?」
【ワールドスキル《ダンジョンマスター》を使用しますか?
【▶YES はい】
「いやいやいや!!」
どこの誰かは知らんが、余りの適当ぶりに思わずツッコンでしまう。
「絶対意思あるやん!! YESとはいの選択肢とか、どっち選んでも同じじゃないか!!」
だが、腕を組み一度冷静になり考えてみる。
「というか……ダンジョンマスターと言ったか??」
(何だそれは、聞いたことがないぞ?)
前世で魔王を何百年もやっていたが、そんなスキルは一度も聞かなかった。
「嫌な予感しかしないのだが」
(スキルのオンオフは……ないか……スキル削除は……。勿論ない)
「…………本当に大丈夫なんだろうか??」
ルクが悩みに悩んでいると次の瞬間。
【意志の弱いマスターに変わって、ワールドスキル《ダンジョンマスター》を強制的に起動します。ストックエネルギーを消費。食料を生成します】
ポン——と、目の前に赤いリンゴが現れた。
「え? 今弱いって言わなかったか??」
一瞬イラッとしたルクだったが、目の前に現れた大好物の『それ』を見て完全に思考がフリーズした。
「…………リ、リンゴ……なのか……? ゴクリ」
生唾を呑み込む。ここで食べないという選択肢など、この世のどこにも存在しないのだ。
——シャクッ……!!!! 澄んだ快音が響いた次の瞬間には、ルクの手元にはリンゴの芯しか残っていなかった。
「うっひょおおおぉぉぉぉーーー!!!!」
脳天を突き抜ける衝撃的な美味さに、ルクは叫んだ。
「うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」怒涛のように押し寄せる至高の幸福感に、ルクはボロボロと大粒の涙を流した。
「甘い……! 果汁……! 果肉……! これだ……! これが、これが『食べ物』というものなんだぁぁぁぁぁ!!!」
溢れ出る涙が止まらない。
「岩じゃない……! 土の壁じゃない……! ちゃんとした、本物の食べ物だぁぁぁぁぁ!!!!」
暗闇のダンジョンに生まれて八年と少し。初めて口にした人間らしい食糧に、元・魔王は魂の底から咽び泣いた。
「うお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ん゙!!!」
……パタリ。急激な糖分の摂取と、許容量を超えた幸せの過剰供給により、ルクの意識はあっけなく吹き飛び、そのまま気絶してしまったのだった。
——数十分後
「…………はっ!」
パチクリと目を覚まし辺りを見渡す。
「何だ今の……、とてつもなく美味い物を食べたような……。」
【ワールドスキル《ダンジョンマスター》を使用しますよね?
【▶OK もちろん】
「夢じゃなかったぁぁぁぁぁ!!!!」
ここまで来るともう疑いの余地はない、このスキルはとても有益なスキルなのである!
いつの間に手に入れたとか、代償とかあったら怖いな
とか、そんなものはもうどうでもいいと飛び起き全力で叫ぶ!
「オケオケオケオケ!! もちろんもちろん。流石我のスキル! いやっほぉぉぉぉーーーい!!」
その瞬間、視界いっぱいに文字が表示された。
【ダンジョンマスター Lv1】
食料追加
・リンゴ 2DP
・その他果物 4DP
・水(コップ一杯)4DP
家具追加
・食器 10DP
・布 一枚 50DP
機能
・ランダム転移 200DP
・ダンジョン帰還 100DP
現在ストックエネルギー
9996
「……ええ?? ツッコミどころ満載の一覧をありがとう。なんでリンゴだけ半額なんだ、まぁ好きだからいいけども……。」
しばらくメニュー表を眺めて、(自称)天才魔王の頭をフル回転させる!
「ふむ?」
どうやらスキル暴食で蓄えたエネルギーをDPとして使えるらしい。
「ランダム転移にダンジョン帰還……それは一体どこに??」
「スキルよ、説明を求む」
【――――――】
「…………。…………。説明ないんかーーーい!!!!」
シーンと静寂が辺りを包み込む。
「おーーーい!! スキルさーーーん!! 聞こえてますかーーー!!」
しかし、もう返事が返ってくることは無かった……。
「何だこのポンコツスキル……。さっきの威勢はどこに消えたんだ……。」
頭を抱えどうするか悩んでみるが、結局もう答えは出ているような物だった。ここでまた壁生活を続ける気はさらさらないのである!
「……行くしかないな! 転移というからには転移なのだろう!」
拳を握りスキルを使い布を生成する。
「八年間壁を食い続けた我にもう怖いものなどない。行くぞ! ランダム転移!!」
その瞬間、足元の魔法陣が眩く輝くとルクはこの場から未知の場所へと転移していくのだった。
「美味い食べ物を探しに、いざ行かん!!」
暗いダンジョンの片隅から、ついに幼き魔王が解き放たれたのであった!
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