第九回:名のつけようがない
「かちゃ。」
扉が開く音が響き、孔雀がまだ考えをまとめ切れていない思考の流れを断ち切った。
長身の人影が入ってきた。
深みのある青緑色の格調ある長袍を羽織り、腰には官の帯をきちんと締め、頭には幞頭を端正に戴いていた。顎の髭は長く整えられ、齢はもう五十を越えているだろう。
部屋の中の光景は、滑稽とも言えるほど奇妙なものになっていた。
威厳ある官吏が入口に立っている。
そして部屋の中央では、二人の若者が汚れた嘔吐物で満たされた木の盥の傍らに跪いている。
彼はまっすぐ盥を見つめ、それからまだ立ち上がれていない二人へと目を移した。
高旭は慌てて立ち上がり、衣の裾を整え、急いで手を合わせた。
「晩生、太医令大人にお目通りいたします。」
孔雀も立ち上がった。頬がほんのり赤らんだ——まったく恥ずかしい場面だ。
「小女・孔雀、太医令大人にお目通りいたします。」
彼は木の盥に目を落とし、それから立ち上がった二人へと視線を移した。
高旭は場の空気が張り詰めているのを感じ、慌てて申し上げた。
「大人に申し上げます。こちらのお嬢さんは孔雀と申しまして、楊太医丞大人のご推薦により今回お手伝いいただいております。」
その官吏は「ふむ」と一声発した。
「本官は太医令の安子と申す。」
「小女、太医令大人にお目にかかれ、光栄でございます。」
彼女はすぐに答えた。
楊太医丞の傲慢で気まぐれな性分と比べ、この太医令はまるで違う。落ち着いていて、きちんとしていた。
「本官が邸を離れていた間、怪しい者がこのあたりをうろついていなかったか?」
「大人に申し上げます。内室に入った者と言えば、こちらのお嬢さん以外にはおりません。」
そのように尋ねるということは、まさか秘密にするつもりなのか。
御史ともあろう方が、正月を目前にして毒を盛られた。
大理寺と刑部が手を出せば、現場は封鎖され、邸内の者全員が調べられ、使用人から行き来する官吏まで尋問されることになる。事件は正月をまたいで長引くだろう。
しかも被害を受けたのは、百官を弾劾し監察することを専門とする御史だ。年末にこれが外へ漏れれば、民心は動揺し、市中に噂が飛び交うことになる。朝廷は新年の祝典を中断して弔意を示さなければならず、国家に大凶が降りかかったも同然だ。
どうりで木然が「危篤ではない」と言ったわけだ。彼自身も御史の容態を正確には把握していなかったのかもしれない。あるいは安子太医令が意図的にそう伝えたのか。
安子は高旭に向き直った。
「大人には必要な薬を飲ませたか?」
「はい、大人のご指示通りに行いましたので、間違いはございません。」
「先ほど李公子の邸に立ち寄って診察してきたが、必要な薬材がまだ揃っておらんのだ。年末は市場も混み合っておるし……」
「高旭、今から市場まで一緒に来い。」
高旭は目を丸くし、思わず自分を指差した。
「晩生……でございますか?ですが大人のご身分で、まさか……」
まだ言い終えないうちに、孔雀が隣から彼の腕をそっと突いた。
「先輩、太医令大人が自ら市場に出て薬を一つ一つ尋ねて回るところを見たことがありますか?大人が先輩についてきてほしいのは、盾になってほしいからですよ。」
太医令ともあろう方が自ら市場に出れば人目を引く。しかし医学生が先に立って尋ね回り、その後ろで彼が見守るだけなら話は別だ。
「行くぞ。時間を無駄にするな。」
安子はまるで聞こえていないようだった。
しかし半歩進んだところで、ふと立ち止まった。
安子は振り返って孔雀を見た。その目に一瞬、まだ言い残したことがあるような懸念の色が過ぎった。
孔雀はそれに気づき、できる限り無害に見えるよう微笑んだ。
手を合わせた。
「お二方、どうかご安心してお出かけください。」
「小女、大丈夫でございます。」
安子はもう一度彼女を見つめ、それからようやく身を翻して出ていった。
孔雀は廊下に立ち、木然の姿を探した——あの食えない男がもう立ち去ったかどうか確かめるために。
外はひっそりとしていた。
年末の風が吹き過ぎ、枯れ葉をいくつか転がしていった。人影は見えない。どうやらずいぶん前に立ち去ったようだ。
彼女は二人を少し見送った。
「お二方、道中お気をつけて。」
二人の姿が廊下の角の向こうへ完全に消えるのを見届けてから、孔雀はようやく背を向けて戻った。
内院は不思議なほど静まり返っていた。
「よし……」
声を低めた。
「もう邪魔者はいない。」
「探し始めよう。」
孔雀は両袖をまくり上げた。
御史はそこに横たわり、か細い息をしていた。深い昏睡状態だ。
なぜか頭の中に妙な場面が浮かんだ——彼が突然目をかっと開けて、まっすぐ自分を指差し、「我の部屋で何をあさっておる!」と怒鳴る場面。
「大丈夫……気を失っているんだから。」
と自分に言い聞かせた。
その考えは少々不謹慎かもしれないが、それだけが彼女が冷静さを保ち、探し続けるための唯一のよりどころだった。
孔雀は部屋をぐるりと歩き回り始めた。
卓。香炉。本棚。薬盆。何一つ見逃さない。
寝台のそばに置かれた木の棚に近づいたとき、足を止めた。
棚の表面に、何かある。
孔雀はさらに近づき、顔を近づけてじっと見た。
花粉のように細かい粒子だが、金のようにきらきらと光っている。
指先で軽く一筋こすってみた。細かい粉が肌に付着した。鼻先へ持っていく。
蒜の匂いだ。
「間違いない……」
しかしその刺激的な匂いの傍らに、もう一つ別の匂いがあった。
焦げた匂い。まるでマッチを擦ったときのような匂いだ。
蒜と焦げ。
御史は最初から最後まで一言も発せられなかった。喉から何の音も出ない。全身麻痺の症状が明らかで、手足は固く強張っていた。
棚の表面に付着した細かい金色の粒子。
「なるほど……」
「先に診た二人の医師が毒の原因を突き止められなかったのも道理だ。」
「下手人はなかなか巧みだ。」
もし推測が正しければ、まだどこかに痕跡が残っているはずだ。
孔雀はほとんど顔を床に近づけるようにかがみ、目を大きく開けて一枚一枚の板目を丁寧に追った。
部屋は静まり返っていた。閉じられた窓の枠から差し込む光が、垂れた簾の隙間から斜めに射し込み、壁の一角をぼんやりと照らしていた。
窓のそばに壁際に寄せて置かれた小卓があった。その卓の脇、床板の上に何かあるようだ。
近づき、しゃがみ込んだ。
黄緑色の細かい粉が一つの円形に、床にしっかりと付着していた。
蠟で磨かれた暗い色の床板の上に、その黄色い粉がくっきりと浮き出ていた——そこに何かが十分な時間置かれていた痕跡のように。
やはりここに置かれていたのだ。
しかし今朝の早い段階に、もうすでに片付けられてしまっている可能性が高い。
今探しに行っても、完全な状態で残っているかどうかわからないし、すでに証拠を消されているかもしれない。これほど緻密に計算した者が、うかつにもそれを手元に残しておくわけがない。
「どうすればいいんだろう。本当に行き詰まってしまった。もう何もないのか?」
彼女は頭をがしがしとかき、髪を少し乱しながら御史の寝台のそばへ歩み寄った。
腕を組み、昏睡している人物をじっと見つめた。
その手が、掛け布団の上に力なく置かれていた。動かない。
孔雀は手を伸ばして彼の手首を掴み、もう一度脈を診ようとした。しかしそのとき、ふと目に入ったものがあった。
爪が根元近くまで切り詰められていた。ほとんど肉に触れるほどだ。しかし不思議なほど丁寧で、几帳面に整えられていた。
しかしそれだけではなかった。
切り口のきわに、怪しい黄褐色の染みがある。
孔雀はその手を持ち上げた。
黄灰色……
切り口の染み。
床に残った黄金色の粉塵。
孔雀の頭の中で、まるで稲妻が走ったようだった。
バラバラだった断片が、寸分違わずぴたりと噛み合った。
孔雀は御史の手を放し、すっと立ち上がった。
「一つの誤り……なんと愚かな。」




