第十一回:嫦娥
「師匠、弟子、戻りました。」
名名は寺の扉を押して入った。
手には市場で買ってきた正月用品がいくつか——赤い紙、砂糖漬けの干し菓子、小さな桃の枝。
高梁は木椅子に乗り、頭より高い薬棚を手を伸ばして拭いていた。
白髪交じりの髪は後ろにまとめられ、こめかみに数本の毛が垂れて、薄く埃がついていた。
振り返ることなく、ただ尋ねた。
「今日は少し遅かったな。」
「孔雀はどこだ?」
名名は荷物を卓に置き、少し間を置いて答えた。
「孔雀は用があると言って、どこかへ行きました。小女にはよくわかりません。」
高梁は年月で色褪せた木の表面の埃を軽く払った。
「次からは、もっと多くのことに気をつけなければいかんな。」
「やはり、朝廷の事に関わると碌なことがない。」
「師匠……あの子のことが心配ではないのですか?」
高梁は手を止めた。
部屋に沈黙が満ちた。
「あれは自分でやっていける。」
彼は寺の前庭に目を向けた。
年の瀬の冷たい風に、木々がゆるやかに揺れていた。
「それに……」
「縁というものは、人が止めようとして止められるものではない。」
……
太医はもともと病を治す命を受けた者であり、事件を調べる者ではない。
証拠はそろった。
下手人についての手がかりもそろった。
残るは大理寺に報告して、正式に動いてもらうだけだ。
もうすぐ正月でもあるし、朝廷はきっと穏便に処理して大事にしないようにするだろう。
そう思いながら、孔雀は自分の役目はここまでだと心の中で告げた。
彼女は正庁に立ち、高旭と安子が書記役の文官に事の経緯を説明しているのを眺めた。
二人ともよどみなく、筋道立てて、言葉も滑らかだった。
どうやら自分がこれ以上出る幕はないようだ。
「お嬢さん、もう終わりましたか?」
不意に真後ろから声が聞こえた。
孔雀はたちまち顔をしかめた。
振り返った。
やっぱり。
この木然という男は、なぜいつも一番肝心なときに現れるのか。どこかに目や耳でもあるのだろうか。
「木大人、ひとまず落ち着きました。」
「ほう、お嬢さんはやりますね。楊太医丞大人の見る目は確かだった。」
木然は満足そうに言った。
またこれを口実に次の仕事を押しつけるつもりだ……
と孔雀は心の中で思った。
「安子太医令大人からご報告を受けました。大人がご無事で何よりです。」
「功績の大半は高旭先輩と安子大人の機転によるものでございます。卵白で一時的に毒性を抑えていただかなければ、命を保てる確率はおそらく半分以下に下がっていたでしょう。」
「命は救われましたが、回復の道は険しいものになります。」
「長くかかりますか?」
「最初の三日間が最も辛いところです。」
「その間、身体は残った毒素を排出しようとします。大人は嘔吐と激しい下痢が続くでしょう——これは自然な解毒反応です。」
「吐息にはまだ蒜の強い匂いが残り、嘔吐物は腐卵の臭いがします。甘草の水で清解し、適切な利水の薬材を用いれば、血脈中の毒素の濃度は次第に下がっていきます。」
「しかし身体は自力では起き上がれないほど衰弱するでしょう。」
「その後、一週間から二週間ほど。」
彼女は続けた。
「そのころには麻痺の状態が変わり始めます。しかし痛みが消えるというわけではありません。」
「むしろ逆で、指先や足先に針で刺すような痛みや、蟻が這うような感覚が現れます。それは損傷した経絡が少しずつ回復しているサインです。」
「足の痺れはまだ残っているかもしれません。大人は幼子が初めて歩くように、立つことから歩くことを一から練習しなければなりません。」
「手のひらの皮が剥けることもあります。毒素が根本を損なうため、髪も少し抜け落ちることがあるでしょう。」
木録事は真剣な様子で聞いていた。
孔雀はまとめた。
「完全に回復するには、最低でも三ヶ月から六ヶ月はかかります。」
「六刻にわたって雄黄の煙を吸い続けた方が元の身体に戻るには、経絡と腎気が安定するまでに半年を要します。」
「養生を丁寧に行わなければ、手の震えや歩行のふらつきが後遺症として残る恐れがあります。」
木然は腕を組み、いかにも悠然とした、腹の立つほど余裕のある態度で立っていた。
「では、お嬢さんにも大人の回復を見届ける責任があると思いますが。」
「それこそが相応の礼に値するというものでしょう。」
孔雀は目を丸くした。
何?
心の中で悪態をついた。
誰が好き好んで仕事を増やしたいものか。
しかし表向きは礼を保った。
「大人、冗談がお上手ですね。民女が最初に引き受けたのは病因の解明であり、長期にわたる調養の責任を負ったわけではございません。」
「そこは否定しません。しかしお嬢さんが付き添えば、大人の回復はより早くなるのではありませんか?」
「何といっても、大人が何の毒に当たったかを最初に突き止めたのはお嬢さんご自身なのですから。」
孔雀は袖の中でそっと手を握りしめた。
この理屈は……本当に癪に障る。
強制しているわけでもなく、命令しているわけでもない。
ただ「責任」という二文字を使うだけで、断りにくくさせる。
「邸の大人に完全に回復していただきたいだけです。」
彼はごく当たり前のことのように言った。
「それとも、お嬢さんは自分の腕を信じていないのですか?」
孔雀は一瞬止まった。
なるほど。
医者としての自尊心を突いてくるとは。
「大人の誤解です。」
「民女、自分の能力を疑ったことは一度もございません。」
「ただ、三ヶ月から六ヶ月の調養というのは、決して小さなことではありませんので……」
「その通り。」
後ろから別の声が割り込んだ。
「ではお嬢さん、承諾したということで。」
孔雀はぎくりとして振り返った。
高旭がいつの間にかそこに立っており、まるで至極当然のことを言ったという顔をしていた。
この医師もいつの間に現れたのよ!
木録事は一応礼にかなった程度に手を合わせた。
「高医師にお目にかかれ、光栄です。」
「では、そういうことで。」
木然はお嬢さんに向かって言った。
「大人がご全快の際には礼をお届けします。では失礼します。」
木然は正庁を出ていった。
一手を打ち終えた後のような、悠々とした足取りで。
高旭はそこで額をぽんと叩いたように言った。
「ああそうだ、肝心なことを忘れていた。お嬢さんにまだ名乗っておりませんでしたな。こちらの大人は姓は仲、名は元と申します。先ほどは状況が急でしたので、失礼いたしました。」
「いいえ、構いません。あの状況では、名前など考える余裕もありませんでした。」
「ところで……先輩、一つ伺いたいのですが。先輩と安子大人はいつここにいらしたのですか?」
「安子はもともとここにいた。私はといえば……大人のお声がかりで呼んでいただき、大人と一緒に状況を確認しに来た次第です。」
高旭は答えた。
孔雀はまばたきをした。
「少し待ってください——小女はてっきり、お二方が今朝着かれて、それからあの症状を発見されたのだとばかり思っていたのですが。」
高旭はその言葉を聞き、思わず首の後ろを無意識にかいて、苦笑いした。
「うーん……そう言われれば……間違いでもないか。」
「間違いでもない?」
高旭はあたりをさっと見回した。
書記役の文官が少し離れたところで安子と話しているのを確認してから、近づいてきた。
そして不意に身をかがめ、孔雀の耳元にぐっと顔を寄せ、声をひそめた。
「お嬢さん、外には漏らさないでください。」
一拍置いてから、慎重に言葉を選びながら続けた。
「仲元大人の長男は……幼いころから身体が丈夫ではなくて。男子ではありますが、体格も体質も常の人より劣っているのです。」
「大人はそのことでずいぶんご心配なさっておいでです。ですから邸では太医を定期的に呼んで、公子の脈を診させ、身体の調養をさせているのです。」
「だから安子がここに長くいるのも、別に不思議なことではありません。」
高位の官吏の子息というのは、決して楽ではない。
言葉にすると少々失礼かもしれないが、官界においては長男には少なからず期待が寄せられる。
学問に秀でなければならず、武芸も劣ってはならない。
家業を継ぐためであれ、家門の体面を保つためであれ、求められる水準は常の人より遥かに高い。
身体の弱い公子にとっては、そのような境遇の中で穏やかに過ごすのは容易ではないだろう。
「お嬢さん、一緒に奥方にご報告に伺いませんか。名医の口から状況を説明していただいた方が、奥方も安心なさるでしょうし、責任の所在も明確になります。」
「奥方ですか?今になって初めて伺いましたが、邸に奥方がいらっしゃるのですね。」
高旭は手招きして、ついてくるよう促した。
歩きながら、高旭は小声で続けた。
「先ほど使用人に聞いたところ、奥方は花苑にいらっしゃるとのことでした。」
花苑?
ご主人が命の瀬戸際を渡ったばかりというのに、奥方は庭にいるのか。
その行動が孔雀にはどうにも理解できなかった。
二人は邸の廊下を歩いた。
曲がりくねった廊下が、棟から棟へと続いていた。
柱の木は新しく取り替えられたばかりで、生木の香りがまだ漂い、年の瀬の冷たい風と混じり合っていた。
しばらく歩いて、ようやく後方の花苑に出た。
孔雀は足を止めた。
目の前に広い庭が広がっていた。
冬咲きの花々が盛りで、赤と黄が薄い午後の日差しの下に重なり合っていた。
庭の空気は清涼で、花の香りがかすかに漂っていた。
その光景はひどく穏やかだった。
先ほどの仲元大人の内室に充ちていた濃い薬の匂いとは、まるで正反対だった。
庭の曲がりくねった小道の中ほどに、一人の女人がゆったりと歩いていた。
満開に咲く花の傍らを歩きながら、小さな茶杯を手に持ち、そっと口元に運んでいた。
まるで庭の春景色を愛でているようだった。
その人は細身で、淡い色の絹の裙が風にゆるやかになびいていた。
高旭は手を合わせて身をかがめた。
「柔苑夫人。」
孔雀も慌てて頭を下げたが、目は密かに上に向けて、この夫人の顔をどうしても見ずにはいられなかった。
女人は声を聞いて、ゆっくりと振り返った。
その瞬間。
天女が降り立ったのではないかと思った。
その清雅な容貌は、思わず嫦娥の伝説を思い起こさせた。
昔、嫦娥は不死の薬を盗み、一人で月宮殿へと飛んでいったと伝わる。
それからというもの、毎夜たった一人で蒼い月の光の中に佇んでいるという。
世の人々はよく語る——その容貌は満月のように清らかで麗しく、多くの男たちを魅了するほどだと。
今、庭の花々の中に立つ柔苑夫人を見て、孔雀はふと思った。
あの言葉は、あながち大げさではないかもしれない。
柔苑夫人は茶杯から唇を離した。
「どうでしたか?」
「愛しきあの方は、もう亡くなられましたか?」
高旭は手を合わせ、礼を保ちながら短く答えた。
「夫人に申し上げます。仲元大人は峠を越えられました。その後は丁寧にお世話をして、しばらく静養が必要でございます。」
それだけだった。
説明も加えず、一言も余分には言わなかった。
二人の間の空気に、にわかに何とも言えない気まずさが漂った。
高旭の返答はあまりにも短く、まるで目の前の夫人にこれ以上何も言いたくないとでも言うような素っ気なさだった。
この夫人の真意は何なのか。
夫がたった今死の淵から生還したばかりだというのに、これほど淡々とした口調で問うとは。
まるで相手の生死など、夫人にとって心を煩わせるほどのことでもないかのようだった。
柔苑夫人は花苑の中央に立ったまま、月のように清らかで麗しい顔を崩さず、手の中の茶杯をゆっくりと回し、さざ波一つ立たない湖面のように静かだった。
柔苑夫人は袖を口元に当て、絹の袖がその顔の半分を隠した。
「そうですか。」
夫人は溜め息をついた。
「残念ですこと。」
そう言って茶杯を石の欄干に置き、目の前に咲く花々をぼんやりと眺めながら、まるで遠い世界のことでも語るように言った。
「何年官をやっても、一段も上に進めなかった夫。」
「体も弱く、剣一本持ち上げることもできない一人息子。」
「全くもって役立たず。何もかもが役立たず。」
夫人はまた一口茶を飲み、それからひとこと、さらりと落とした。
「いっそ死んでしまえばよかったのに。」
妻として……母として……
どうすればこれほど冷淡な言葉が口をついて出るのか。
しかし高旭はいっさい驚いた様子を見せなかった。
「状況はご理解いただけたかと存じます。では、これにて失礼いたします。」




