雨宿りと野良猫(ループ3000回目)
雨が降ってきた。雷鳴が轟き、ザーザー降りの大雨になるのだと理解する。
何もない、田んぼだらけの田舎道。大きな道ではあるが、道端には雑草が生い茂っており、人通りも車通りもまったくない。
さて、何度見たのだろうか、この光景は。
僕が知る限り、この光景を見るのは3000回目であると思われる。
東京で生まれ東京で育ち、東京からまったく出ない生活をおくっていた僕には、無縁とまで言い切ってしまってもよい場所。北関東か南東北のどこか。
なぜ、僕はこの場所にいるのだろうか。
思い出そうとした。
しかし、このままでは、雨でずぶ濡れになってしまう。
ふとそんなことを考えた僕は、辺りをキョロキョロと見回し、近くにあったバス停とボロ小屋のような待合室を見つけ、逃げ込むように待合室の中に入った。
しとしと、と雫が地面に落ち、もうずぶ濡れじゃないか、なんて思いながらため息を吐く。
そんな僕の隣で猫の声がした。
黒猫だった。なんとも、不吉である。
3000回もループを経験した僕ではあるが、こんな展開ははじめてだった。
「やあ、お前。どこから来たんだ」
「にゃーお」
なるほど、わからん。
でも、なんとなくこの辺りに住み着いているわけではないのだろうと思った。
「僕がなぜ3000回もループしているのか、お前にはわかるか?」
「んにゃ、ぶにゃにゃ」
うん、やはり、何を言っているのかわからん。
また、ため息を吐いた。
しかし、親しみというか、この黒猫といっしょにいると安心感がある。
家族といるような、そんな、安心感だった。
「……あっ」
唐突に、僕がなぜ、この場所にいるのか思い出す。
たしか、昔、亡くなったじいちゃんが野良猫によくキャットフードを与えていたよな、なんて感慨にふけっていたからである。
そうか。ここは、じいちゃんの故郷だ。
大学生活、最後の夏休み。どこか、小旅行でもしようと思って、僕はじいちゃんの故郷に訪れたのである。
その帰り道、僕は何度も同じ世界を繰り返すことになってしまうのだった。
3000回もループしたから、忘れてしまっていたよ。
「だけど……なぜ、ループしているんだ?」
「にゃーおっ!」
なるほど、わからん。
人生というものは気まぐれなものであるらしい。
「ま、今度はループしないことを祈って、東京に戻るか」
「にゃおにゃお!」
3000回目にして、ようやく僕はループすることなく東京に戻ることができた。ちゃっかり、黒猫も僕の家に住み着いてしまっている。




