17話 魔法勉強会とにゃんにゃんにゃー
『こんばんユグドラ。みんなの副担任、イズミンです』
《!? 今日はミスティ先生じゃないんか?》
《ユグドラですわぁー! おーほっほっ!》
《あれ? 今日はミスティちゃんじゃないの? そういえば今日の生誕祭も途中で居なくなってたけど、それ関係かな?》
《こんばんユグっ!? 今日はまさかの悪役令嬢回?》
『えー、多分みんな不思議に思っているでしょうけど……見ての通り、師匠はお休みです。といっても病気とか重い理由じゃないので、心配はいらないですよー』
レン《イズミンさんがんばーー》
みーまう《今日は御礼を言いにきたにぅ。イズミンとミスティ先生には感謝してるです》
《おお! ついにみーまうまできたんか。そりゃそうだよな。ワルプルギスの夜会では魔法指導の先生だもんなー》
《うらやま! つか、イズミンの妹弟子になるか?》
『えっと、そのあたりの詳しいことは、師匠が帰ってきてから皆さんに話したいと思います。今日は私が先生から学んだ事を皆さんと共有して、魔法とは何か? 魔法陣とは? 魔力とは? といった基礎知識を説明する枠にさせてください。これはワルプルギスの皆さんにも、ぜひ知っておいてほしいことですので』
レン《はーい》
みーまう《はいです!》
カスミ《承知いたしましたわ》
ムジカ《はぁーい。うふふ》
ララ《はいなのだー!》
《ふはっw 夜想曲勢揃いやんけw》
『コホン。それでは改めまして――記念すべき第一回「イズミンの魔法勉強会」を始めたいと思います!』
《88888888》
《はじまったー!》
《メモの準備はできてるぞ! これで俺も魔法使いになれるんか!?》
《30歳超えてるから、もう魔法使いだけどな(自虐)》
『まず大前提として。リスナーのみなさんは「魔力」って特別な才能や、選ばれた人だけのものだと思っていませんか?』
レン《違うんですか?》
『半分正解で、半分間違いです、レンさん。師匠の受け売りですが……【魔力とは魂に眠る器】のこと。大きさの個人差はあれど、魂を持つ人間なら誰しもが持っているものなんですよ』
《マジか!! 俺にもあるんか!?》
《MP0じゃなかった!》
《でも俺、水とか出せないぞ?》
『そう、持っているだけじゃ使えません。ガソリンがあってもエンジンがなきゃ車が動かないのと同じです。そこで重要になるのが、どうやって「世界」に働きかけるか、というアプローチです』
『魔法を行使する方法は、大きく分けて二つ。一つは【魔法】。そしてもう一つは【魔術】です』
ムジカ《あら、言葉が違うのね? 一緒くたにしていたわ》
カスミ《魔法と魔術……ニュアンスとしては、後者の方が技術的な響きがいたしますわね》
『さすがカスミさん、鋭いですね。まず【魔法】について説明します。これは自分の魔力を「言葉」に乗せて放つことで成立します』
《?? イズミンが難しいこと言ってる》
《副担任らしい、だと!?》
『言葉とは意思。自分の魔力を代償として支払い、言葉という「願い」を世界に届ける。そして、世界そのものに「望む形に変わってもらう」。これが【魔法】の正体です』
ララ《おねがいするのだ? 世界さんに?》
『そう、ララちゃん正解! 「燃えてください」「空を飛ばせてください」って、世界にお願いして、一時的にほんの少しだけ味方になってもらうんです。昨日のライブでレンさんたちが空を飛んだのも、師匠が世界にそうお願いしてくれたからなんですよ』
《なるほど、交渉術みたいなもんか》
《言霊ってやつ?》
《世界「しゃーねーな、今回だけだぞ」→飛行》
《↑わかりやすくて草》
『そしてもう一つ。こちらの方が、これから皆さんがよく目にするものです。【魔法陣】を使った【魔術】です。ああ、いま画面に出したこの魔法陣は、適当に私がデザインしただけでなんの効果もないんです、試してもだめですよー』
《びっくりした! いきなり大量の魔法陣が出されたから、こんなに新規の魔法を教えてくれるのかと……》
《流石にこの種類の魔法陣? 魔術は一気には出さないだろう》
《みんな、表示された瞬間に試したろw 俺も試して発動しなくて絶望してた》
『言葉でお願いするのが魔法なら、魔法陣は【筆談】です。あらかじめ「こういう効果を出したい」という命令文を完璧に記述しておく。そこに魔力を流し込むことで、誰でも同じ結果を出力する。それが魔法陣であり、魔術なんです』
みーまう《プログラミングみたいなものなのです?》
『みーまうちゃん、大正解! まさにその通り。口頭での「お願い」は曖昧で、術者のイメージや感情に左右されます。でも魔法陣は、回路に電気を通すように魔力を流せば、記述された通りの現象が必ず起きます。だから「術」なんです』
レン《へぇー! じゃあ、その魔法陣さえあれば、私でも空を飛ぶことができる!?》
《そういえばレンちゃんは空飛んでたんだっけ! 人類で唯一じゃない? 一切の装備なく動力なしで単独飛行したの》
《さりげなく、イズミンを人類にカウントしてなくて草》
《イズミンは人類じゃなく、種族イズミンだったのだー》
『ま、まぁ、私も飛びましたけど、アレってそんなにいいものじゃないですよ?』
レン《イズミンさん、途中で何度か気絶してましたもんね》
《気絶w そらしゃーない。俺でも気絶する自信がある》
《いくらミスティちゃんが安全を保証してくれててもねぇ。逆によー、レンちゃん空を飛ぶのに気絶しなかったね》
カスミ《私も空を飛んでみたくはありますわねぇ。自由に空を飛ぶのは、魔法使いとしての憧れでございますもの》
ムジカ《私は遠慮したいわぁ。高いところは足がすくんでしまいます》
『ですよね! 気絶しても仕方がないですよね! ――とまぁ、魔法と魔術の関係、そして魔力とはなにか、という概略は伝わったかと思います。ここまでで質問とかはありますか?』
《はいはいはい! 質問! イズミン先生は魔法使えるの?》
《たしかに。ミスティちゃんの弟子ってことは使えるってこと?》
《でもイズミン、元は普通の一般人じゃなかったっけ?》
『あ、はい。いい質問ですね。結論から言うと――使えます。師匠に鍛えられましたから』
レン《ええっ!? すごい! イズミンさん、魔法少女だった!》
《マジかよ……》
《すげぇ、本当に魔法使いだったのか》
《俺たちもイズミンみたいになれる!?》
『えー、そこが次のポイントなんですけど……。どうすれば魔法が使えるようになるか、ですよね? 残念ながら、これにはすごく高いハードルがあるんです』
カスミ《ハードル、でございますか?》
『はい。さっき「誰でも魔力というガソリンを持ってる」と言いましたけど、普通の人はそのガソリンの存在を感知できないんです。見えもしないし、感じもしない。だから、自分の声を魔力に乗せることができないんです』
ムジカ《なるほどねぇ。存在を感じ取れない筋肉は動かせない、みたいなものかしら?》
『ムジカさん、例えがお上手! その通りです。魔力という感覚器官が眠ったままなので、いくら呪文を唱えても、ただの独り言になっちゃうんですよ』
ララ《じゃあ、ララたちは使えないのだ?》
『うーん、ワルプルギスのみんなは少し特殊な訓練を受けてるから、きっかけさえあれば……とは思いますけど、すぐには難しいですね』
《絶望した! 俺の魔法使いへの道は閉ざされた!》
《見えないものをどうやって感知しろと》
《あれ? じゃあなんでイズミンは感知できるようになったの?》
《それな》
みーまう《そうにぅ。イズミンはどうやってその感覚を目覚めさせたのですか?》
『えっ? あー……それはですね……』
《もったいぶるなー》
《秘策があるのか!?》
『いえ、その……正直に言いますと、私にも「わからない」んです』
《ズコーー!》
《わからないんかいw》
《天才タイプかよ!》
『ち、違うんです! なんかこう、気づいたら魔力の流れが見えるようになってたというか……。師匠曰く「変異」らしいです』
《やっぱ種族イズミンじゃねーか!》
《人類の突然変異種イズミン》
《再現性ゼロで草》
『うう、やっぱりそうなりますよね……。でも! だからこそ、今日は感知できなくても役に立つかもしれない、初心者向けの楽しい魔法陣を持ってきたんですよ!』
レン《お! なんですかそれ!》
『えっと、これは師匠が前に言っていた魔法です……その、名前がちょっと恥ずかしいんですが……』
《ゴクリ……》
《どんな破壊魔法だ?》
『……『にゃんにゃんにゃーの魔法陣』、です』
《ん?》
《今なんて?》
《にゃんにゃんにゃーwww》
『わ、笑わないでください! 師匠がふざけて名付けたんですから! でも効果は本物ですよ! この魔法陣を展開すると、動物の伝えたい気持ちが、なんとなく直感的にわかるようになるんです!』
みーまう《動物の言葉がわかるのですか!? それはすごいですにぅ!》
『厳密には言葉がわかるわけじゃなくて、「お腹すいた」とか「遊んで」とか、感情のイメージが頭に直接入ってくる感じですね。これなら魔力の扱いが苦手な人でも、比較的発動させやすいって師匠が……』
ララ《すごーい! ララ、やってみたいのだ! にゃんにゃんにゃー!》
ムジカ《ふふ、可愛い名前。イズミン、ちょっと顔が赤いわよ?》
『うぅ……だって、大人が真面目な顔して「にゃんにゃんにゃーの魔法」って言うんですよ? すっごく恥ずかしいんですからね!?』
《イズミン萌え》
《これは前の放送でイズミン原案と言ってた魔法かw》
《俺の家の猫が何を考えてるかわかるのか。神魔法じゃん》
《早速スクショした。うちの犬で試してくる!》
『これは師匠曰く、人間は全員使えるはずだと言ってたので、使えない人はいないかと思います。これは精神系の魔法で、自我を持ち、社会性を持ってきた人間の基本技能だかららしいです』
《ウチの猫に『うっざ』て伝えられた……そっかぁ。ウザかったかぁ》
《ウチの犬……『ご飯?散歩?構って構って構って!』って魔法使わんくても伝わることを体全体で表現しててワロタ》
《うちのハム……《眠い眠い》しか伝わってこなかったw》
ララ《ウチの子達は可愛いのだぁぁ!! 犬のガーベラ、猫のラベ、ハムのダンデ、フクロウのゲッカ! みんなの気持ちが伝わってくるのだ! みんな大好きが伝わってきて、ララは嬉しいのだぁぁぁぁ》
《ララちゃんどんだけ動物飼ってんのw》
《これ、大好きなあの子に使ったら……脈ありかどうかわかるのでは?》
『ああ、それはダメです。人間には使えませんよー。悪い使い方は師匠がすでに魔法陣で禁じてますし、師匠が人間の精神は複雑すぎて、もしもこの魔法が通じたら、魔法を使った人の精神が壊れると言ってましたからね』
《ひぇっ!》
《ま、まぁ、人間の思ってることが全部一気に流れてきたら、下手すりゃ精神が捻じ曲がるわなぁ》
《獣医師です。この魔法はすごいですよ! 急いで入院中の子たちの状態を魔法で確認したのですが、1匹1匹の要求がわかって助かります! 腹痛を訴えてる子もいたので、これから緊急で検査してみます! すごく助かりました! 魔法は本当にすごい!》
『獣医師さんですか! お役に立ったようですごく嬉しいです』
レン《うちは動物さんいないから試せない……後で野良猫さん探しに行こうかなぁ》
カスミ《私の家にいるアルダブラゾウガメに会いにこられますか?》
ムジカ《カスミちゃん……なんてものを飼っているの……》
《今、外で猫ちゃーん。にゃんにゃんにゃーとか言ってるの誰だww コーヒー吹いてスマホがベタベタになったわ!》
《早速、役に立っとる。つか、イズミンは恥ずかしがってたけど、これ凄い魔法だぞ! 世界にはいまだに生態が不明な動物もいるし、絶滅危惧種の保存の一助になるかもしれん》
『みんなすごいですねー! そんなに役に立てる方法を思いつくなんて……私なんてルーナとお喋り出来たらなーとしか思いませんでした』
《純粋ww》
《むしろ、そういう感性が魔力を感じることに必要なのかもしれんねー》
《汚れた俺たちには一生、魔力の感知は無理だなw》
みーまう《……どうして、飼っている猫に『チュール持ってこい』と言われて見下ろされてるのです!? 伝わってくるのが、パシリに対するそれにぅ!!》
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