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:閑話 エルマーの休日②

少し長くなったので二話に分けました。


 「エルマー、エルマー、おーい」


ゲイリーの呼ぶ声でエルマーはハッと顔を上げた。


「…ん、ゲイリーか?どうした?」

「どうした?じゃないよ。もう一時間位経ったよ」


キョトンとするエルマーに、ゲイリーは呆れたようにようにそう言って壁際の柱時計に目を遣った。

確かに時刻は随分と過ぎていた。


「そんなにか。すまん、待たせたか?」

「本を選んだり店主と話したりしてたからそこまで待ってないけどね」

「ふふ、随分とその本を気に入ってくれたようだね」

「店長もすまなかった。これは買っていくよ、いくら?」

「一二◯リブラだよ。そっちの本は三◯リブラ」

「じゃあコレで」

「毎度あり」


支払いを済ませると店主に別れを告げ二人は店を出た。


「そろそろお茶にしようか?」

「いいね、喉も渇いたし。そうだ前に君が持ってきてくれたお菓子の…なんだっけエタンセレールの」

「ああ、あの店ね。うん、丁度良い。そこにしようか」

「うん。確か中央街の方だったよな?」

「そうだよ。少し離れてるけど、まぁ歩けなくはない」

「普段運動不足だからね。たまにはいいさ」


次の行き先が決まったところで、中央街に向けて足を進めた。





 中央街はヌーベスのメインストリートとも呼べる場所で、大小様々な店舗が軒を連ねている。

その片隅にある、真新しい洒落た外観のその店は、エタンセレール共和国出身の店主が開いたパティスリーだ。

明るい店内は大きな窓から陽射しが差し込み、ガラスのショーケースには洗練された美しい菓子が並んでいる。


「うわあ、すごく綺麗だな。美味しそうだ」

「隣のティールームでも食べて行けるよ」


売り場の隣にはティールームが併設されていて、テーブルでは女性客達が思い思いにスイーツを楽しんでいる。

そこそこに混んでいたが、運良く席が空いていたので座る事が出来た。


「結構メニューも多いな…うーん、迷う」

「エルマーは甘い物好きだしね。俺は小腹も減ったし軽食にしようかな」

「あーそれもアリ、ってかこれ以上迷わせないでくれよ」

「はは、ゆっくり決めなよ」


エルマーがうんうんと悩んでいるのを、にこにこしながら眺めるゲイリー。

ようやく決まったらしいのを見てゲイリーが給仕を呼んだ。


「アールグレイと、サーモンのタルティーヌ、それからシュー・ア・ラ・クレームをもらおうかな」

「んー、俺はガトーショコラと…本日のおすすめの紅茶で」

「畏まりました」


給仕が下がり、暫く待つと注文の品が運ばれてきた。

どれも芸術品のように美しく盛り付けられている。二人は素直に感嘆した。


「うわ、すごいな」

「さすがエタンセレール風だね」


(エタンセレールってフランスにそっくりだよなぁ…)


エルマーは内心そんな事を考えながらケーキにフォークを入れる。

一口食べればしっとりと濃厚な生地の甘くてほろ苦い風味が広がった。


「んん~、うまっ」

「うん、セイボリーもイケるね」


ゲイリーもタルティーヌという、クリームチーズを塗った薄切りのバゲットにスモークサーモンとハーブを盛り付けたものを切り分けている。

相変わらず美しい所作にエルマーはつい見惚れた。やっぱり貴族だな、と思う。

 美味しいスイーツと紅茶を堪能した二人はこの後の事について話し始めた。


「それで、あとはどうする?」

「うーん、買い出しして洗濯物引き取って帰るかなぁ。買った本読みたいし。

ゲイリーは?どこか行きたいところある?」

「俺はエルマーについて行くよ。今日はそのつもりで来たからね」

「あ、そう。まぁ別にいいけど…それと夕飯はどうする?食べて行くのかい」

「久しぶりに君の手料理が食べたいなぁ」

「大したもんじゃないよ。普段もっと良いもの食べてるだろう」

「いいのいいの。さっき食べたのがサーモンだったから…夜は肉がいいかな」

「やれやれ、分かったよ。後で買いに行こう」


 こうしてエルマーの休日はゆっくりと過ぎていくのだった。

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