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あれから暫く経った頃、事の顛末を教えにゲイリーはオクルスを訪れていた。
エルマーの淹れた安物の紅茶を片手に手土産の焼き菓子に舌鼓を打つ。
「これ美味いな」
「最近中央街にオープンした菓子専門店で買ったんだ。
なんでもエタンセレール共和国出身のパティシエが開いたらしいぞ」
「へえ」
今度行ってみようかな…とエルマーは菓子の箱に書かれた店名を眺めた。
エタンセレール語に詳しくないエルマーには残念ながらよく分からなかった。
「それで、あの後結局どうなったんだ?」
「ああ、エルマーのお陰で無事魔剣職人に依頼は出来たみたいだよ。
アドバイス通り伯爵が直接出向いてね。
一ヶ月もあれば直るだろうってさ。さすがアンブローズ唯一の魔剣職人だね」
「そりゃ良かった。伯爵は無事職人のお眼鏡に適ったんだな」
件の職人は非常に気難しい質で、気に入らないと相手が誰であれ断るのだ。
それを知っていたエルマーはひと安心した。
「それから、鑑賞会には精霊剣を持ってきていたよ。まああれも良い品には違いない」
「ふうん」
「折角だから君も来れば良かったのに」
「やだよ。君の紳士クラブって若手貴族しか居ないじゃないか。
俺みたいな庶民なんて場違いにも程があるだろ」
「エルマーならいつでも大歓迎なのになあ」
ゲイリーは残念そうに苦笑しながら焼き菓子を口に放り込んだ。
エルマーももう一つ焼き菓子をつまむ。素朴ながら上品な味わいが口に広がる。
アンブローズの菓子はただ甘いだけの物も多いので、前世の記憶のあるエルマーには少し不満だった。
「そういえばカイルが鑑定はエルマーにまた頼みたいって言ってたぞ」
「ああ。この間の報酬を貰った時にも言われたぞ。お貴族の御用達なんて畏れ多いんだけどなぁ」
「俺も貴族なんだが」
「知ってる」
おどけたように肩を竦めるゲイリーに、エルマーは呵呵と笑った。
《 魔剣の真実 完 》
一章はこれにて完結です。
二章はネタが出来たらその内。




