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普段ムーンでBLばかり書いています。

BLじゃない作品は初めて書きます。

よろしくお願いします。



 アンブローズ王国の首都ヌーベス。レイニー・ストリートと呼ばれる通りにその店はある。





 「それで、これってホンモノですか?いくらになります?」



 画廊や美術商、画材屋などが軒を連ねるレイニー・ストリート。

その片隅には、知る人ぞ知る、様々な物品の鑑定と売買を行う店『オクルス』。

そのオーナーであるエルマー・クレイトンは客とカウンター越しに向かい合っていた。

買取依頼に来たその客は沈痛な面持ちで見守っている。

白手袋をはめたエルマーは依頼品である花壺を手に取って真剣に鑑定を行っている。

ずり落ちた丸フレームの眼鏡の奥では、優しげな若草色の瞳が忙しなく動く。


「残念ながら贋作ですね」


眼鏡を指先で押し上げ、落ち着いた声で宣告する。

客は悲壮感も露わに崩れ落ちた。


「そんな…っ!爺さんは五万リブラ(一リブラ=約一〇〇円)はする逸品だって言ってたんですよ?!」

「ベルティネッリはとにかく贋作が多い事で有名ですからねぇ。

ですが、この壺は彼の弟子カルデローニによる習作だと思います。

ここを見てください、本物には裏側にサインがあるんですけどこれにはない。

弟子の習作にはサインを入れないことになっているんですよ。だからないんです。

まあ、本物ではないとはいえ、これはこれでそれなりに価値はありますよ。

ベルティネッリ特有のこの色合いや絵付けも上手く再現されています。

花入れとして使うもよし、梅干しを漬けるもよし。

買い取りであれば二〇〇〇リブラになりますが、どうします?

事情は存じませんが、もしこっそり持ち出したものであれば元に戻しておく事をお勧めしますよ」


一気にそう言い切ったエルマーの圧に怖気づいたのか、花壺を引き寄せた。


「や、やっぱりやめときます…」

「そうですか。では鑑定料三〇〇リブラになります」


その客は項垂れた様子で金を払い、トボトボと店を出ていった。





 「よぉエルマー、やってるかい?」


先程の客と入れ替わりで入って来た青年は軽い調子で声を掛ける。


「うちはパブじゃないぞ」


エルマーは砕けた調子で軽口を叩く。

その青年ゲイリー・ハウエルはエルマーのアカデミー時代からの親友である。

父親から男爵を継いだばかりの彼は、爵位貴族の癖に随分と気さくで中流階級(ミドルクラス)の者にもあまり態度を変えない。

そして艶のある珍しいローズピンクの髪と顎髭をした、結構な色男だ。


「客が来てたのか?さっきすれ違った」

「ああ。買取希望だったんだが、結局鑑定だけして帰ったよ」

「ふうん。身なりがあまり良くなかったから、身持ちを崩して借金のカタにしようと思ったけどあてが外れた感じかな」

「ノーコメント」


鑑定スキルもないのにおよそ言い当てている所に内心感嘆する。

この友人は昔から妙にカンが鋭いところがあった。

もっとも、エルマーは顧客情報を安易に漏らすような事はしない。


「それで?鑑定の依頼か?」

「まぁそうなるかな。でも依頼主は俺じゃないんだ。

カレッジの同期でね、俺の主宰する紳士クラブの一員でもある男だ」

「ははあ、成程。紳士クラブでお披露目する品を見て欲しいって訳だな」

「そういう事」


そう言ってゲイリーはバチンとウインクを送った。

気障な仕草が嫌味なく似合う男である。



なろうで以前「ピンク髭男爵」なるものを見掛け、普通にアリだな…と思って生まれたキャラがゲイリーです。

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