08:救出
「本当にファンタジーだな……!」
中央にある立派な城、そして街並みを見ればファンタジー世界であることを再認識させられる。
人間という種族はいるがそれ以外の種族も同時に存在している。さらに馬車を引いている馬のところには馬ではなく恐竜を小型にした二足歩行の動物がいたり、露店に売られているものもゲームで出てくるようなものが売られている。
あっ、忘れるところだった。
街中であるが俺は神鳥によって認識をずらして神子を大量に出した。神子は四方八方に散り今回のプレイヤーを探し始める。
うむ、十二神獣は全く問題なく機能している。
初めて使う真偽反転秩序暗転神鳥も思い通りに動いてくれているから最高だ。
街の探索は神子に任せ、プネウマ王国から出て西にある村に向かうことにした。
「……遠いのか?」
このゲーム、マップとかがないから不便だしどこの村かすら分からないぞ。ロールミッションを出すのならそれくらいはしてほしかった。
この世界の馬みたいなのを使ってもいいがそれよりも使い勝手のいい馬がいる。
「神馬」
呼び顕現させれば上空から流星のごとく現れた神馬。
「頼む」
神馬に乗りそう言えば一瞬で成層圏に到達して浮遊していた。
「ハハッ! 速いな! そら行け!」
目的の村は飛び上がればすぐに見えたからそこに向かって流星よりも早く落ちた。
飛び上がってから実に五秒も経たない内に村の中央に到着した。
「どーもー、襲撃をお届けに参りましたー」
周りを見れば柄の悪そうなやつらがたくさんいるからまあたぶんこの村は強盗たちの村だろうな。
「なんだガキが! やんのか!?」
「ここがどこだか分かってんのか!? あぁん!?」
「ご託はいいんだよ。やるならさっさとかかってこい」
俺は神馬から降り、新たな神獣を顕現させる。
「千手千具降魔神猿」
俺よりもでかく、二足歩行をしている毛むくじゃらで豪華な防具を身に付けている猿は両手に剣を持ち笑いながら顕現した。
「ウキ、ウキキキ!」
「さ、腕試しだな」
今の力がどれくらいなのか確認するためにちょうどいい相手だ。
神馬が上空に跳んだ瞬間、俺と神猿は動き始めた。
俺は手前にいる大男の顔面をつかみ、そのまま勢いよく男の後ろの地面に叩き込んだ。頭は地面にのめり込み、頭蓋骨が柔らかくなったのも感触で分かった。
一方の神猿は一撃を振るっただけで何百以上の斬撃が出て広範囲のごろつきを殺した。
さらに上空から戻ってきた神馬もごろつきがたくさんいるところにめがけて落ちてきた。流星が落ちてくれば一たまりもなくぐちゃぐちゃになっているのが見えた。
「な、なんだこいつら!?」
「ひぃ!」
「おいおい、せっかく遊びに来たんだからもてなしてくれよ」
俺は逃げようとしている男たちを逃がすつもりはなく、そいつらよりも早く回り込む。
「くそっ! なめんなぁ!」
男の一人が俺の腹に蹴りを入れてきたから素直に受けるが全く痛くなかった。
「もう少し頑張ってくれよ。蹴りっていうのはこうやるんだよ!」
蹴りをお見舞いしてきた男に向けて同じように腹に蹴りを放てば男の胴体は蹴りの威力で消し飛んだ。
「おぉ、拳じゃないからか?」
拳のつもりで蹴りを放ったら殺してしまった。ぶっとばすくらいにしようとしていたのに。
「に、逃げろぉ!」
「なんだよなんだよなんだよぉ!?」
一人を殺しただけで虫のように散っていくやつらに腹が立つ。
「武器を向けたのなら……」
一足で逃げているやつの背後にたどり着きハイキックで側頭部を軽く蹴った。
「最後まで戦い抜け」
すごいスピードで横回転をして転がっていく男が壁にぶつかって止まれば全身ぐにゃぐにゃになっていた。
「こ、降参だ! だから殺さないでくれぇ!」
武器を置いて両手をあげる男がいた。
「……ハァ」
悪霊たちはどんなに相手が強くても向かってきていたのにな。
戦う気が失せたから俺はそいつの通りすぎたところでそいつが俺に羽交い締めにしてきた。
「ハッ! ガキが油断したなぁ!」
「そうか。それなら俺を殺す勢いでやれ。お前の顔がえぐれる前にな」
俺は後ろにいる男の顎に指を添える。
岩を砕けるくらいだから皮膚をえぐるくらい何ら苦労はない。
「ほら、もう食い込んでいるぞ。早く俺を止めないと顔がなくなるな」
「ひっ、許して」
「ハァ、そればかりだな」
俺は思いっきり男の顔をはぎ腕をもいで拘束から抜き出す。
「二度目をやってきた時点で許されるわけがないだろう。必死に足掻くしかお前の選択肢はなかったんだよ」
体が血やら体液で汚れたから神龍の火で浄化して綺麗にする。
「さて、スィオピ公爵家のお嬢様はどこだー」
すでに神馬と神猿により他の男たちを始末していたからお嬢様を探すことにした。
「ウキ」
「ん?」
神猿が肩をつついてきたからどこにお嬢様がいるのか分かったのかと思ったら槍を渡してきた。
「ウキ、キキキ」
「は? 神具武装で神具にしろって?」
「ウキ!」
「いやいや、お前千個も武器を持ってるだろ」
「ウキキキキ!」
「あって困らないって、使わなければ意味ないだろ」
「ウキー……」
「分かっていないって?」
「ウキ! ウキキ! ウキキ! ウキ! ウキ!」
どれだけ武器を集めても満足しない。食べたバナナの数を覚えているのか。お腹いっぱいになってもバナナは頬張っている。とか言っている。
「意味わかんねー」
こいつ本当に俺の式神なんだよな。それなのに言っていることが全く意味が分かんねー。だけどこれ以上騒がしくするのは面倒だから神具にすることにした。
「おぉ」
「ウキ!」
ボロボロだった槍はかなり神性を帯びた装飾がカッコいい槍に変貌した。
その槍を俺の手から素早く奪い取って頬ずりしている神猿。
「ハァ、自分で探すか」
こいつ使い物にならねぇ―と思って家を一つずつ回っていこうかと思ったがクイッと俺の肩をつついてくるものがいた。
神馬が口で俺の肩を突いてきた。
今度は何を言われるのだと身構えれば神馬はある家の方向を見た。
「あそこにいるのか?」
俺の問いに肯定の意を感じた。
さらに神馬から神馬自身の能力についても説明を何となく受ける。
神馬は星の力を使うことができ大地も精通している。だからどこに誰がいるのかを分かるとか。
「お前、すごいな」
神馬のドヤ顔を受け止め、俺は神馬が指示した家に向かう。
「誰かさんとは大違いだよ!」
誰かさんに言っても槍に夢中で聞いていないバカ猿を放置して家の扉を蹴飛ばす。
「どーもー! ダイナミックにおじゃましまーす!」
家の中は誰もいない。が、神馬の助言によりどこにいるのかをすでに知っている。
ベッドを蹴飛ばしてどければ下に続く階段があり、下で武器を持っている男たちが見えた。
「こんにちはー。暴力のお届け物ですよー」
階段を一気に飛び降りて男たちに拳と死の味をお届けした。
下は牢屋になっており女性たちが閉じ込められていた。
「人さらいか?」
「危ない!」
俺が牢屋を見てそんな呑気なことを言っていれば女性の危ないという声が聞こえた瞬間、俺の頭部に虫が止まったのかと思うくらいの衝撃が来た。
「おい、もっと本気でやれよ」
そう言って振り返れば一番悪そうな面をした男が驚いた顔をしていた。
「俺は油断していたんだぞ。それで俺を仕留める一撃を放つと思うだろ。それなのになんだ、その攻撃は。ふざけてんのか」
一歩踏み出せば男は一歩下がる。
「ほら、がんばれがんばれ。じゃないと上の奴らみたいにぐちゃぐちゃになるぞ」
「ふ、ふざけんじゃねぇぞぉ!」
男は手に持っていた鉄棒で何度も俺を殴るが一切俺は攻撃を受けない。そして耐え切れずに鉄棒はへし折れた。
「終わりか? それなら教えてやるよ、攻撃の仕方を!」
「ひいぃ!?」
俺は男の体をぐちゃぐちゃに叩き潰そうと殴りかかる。
「その男は生かしなさい!」
女性の生かせという声を聞き、顔面を殴って一回転させるだけに収めた。
「……せっかく人が気持ちよく殴っていたのに」
声の主を見れば綺麗だったドレスはボロボロになり、全身傷だらけになっているが凛々しく座っている長い金髪が乱れている女性だった。
「助けに来た王子様としては及第点ね」
間違いない、こいつがスィオピ公爵家の一人娘だ。




