05:蹂躙
ある程度の力を発揮していいと星宮さんについている神子に指示を出し、俺はまず一番近いグラウンドに向かう。
グラウンドは遠目からでも、遠目じゃなく気配だけでも悪霊が溢れているのが分かった。
グラウンドにたどり着けばすぐさま悪霊たちがこちらに押し寄せてくる。
「初陣だ」
二段階進化させた十二神獣を使いたかったから丁度いい敵だ。
「海吞枯渇星喰神蛇」
俺の近くからゲートを通って頭だけの大蛇が顕現した。頭だけでもグラウンドを覆いつくすほどの大きさだ。
「喰らえ」
俺が指示を出した瞬間、目の前の悪霊たちはいなくなりすべて神蛇によって吞み込まれていた。
ついでにグラウンドもえぐれており陣を壊すことができた。
こいつはデカすぎるから戦える場所が限られてくるんだよなー。サイズを変えることができないのだろうか。
……できそう。いやできそうなら炎龍とかもサイズを小さくして出せたじゃん! なんで今になって思いつくんだよ! あっ、もしかして進化させないとできなかったのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
『ロールミッション:魑魅魍魎の陣の一角を破壊する』
さっきのロールミッションと一緒だがクリアされてまた出てきた。
残りの一つはここから近いプールだ。このグラウンドとプール側にはたくさんの悪霊がいるからこっち側は元々多かったのか。
神蛇を戻してプールに向かう。
プールにもまた大量の悪霊がいるのが分かるが俺には経験値にしか見えない。
「お前の力を見せてくれ。豪華絢爛吸魂女王神兎」
顕現したのはウサギではなかった。ウサミミがついたドレス姿の女王のようなきらびやかな格好と雰囲気を持つ女性だった。
「えー!?」
俺は思わず驚きの声をあげてしまった。
どうして神獣がこんな姿になってしまったと驚かない方がおかしいだろう。でも面白いからいいけど。
「うふふ」
神獣が喋っていると感動しつつ神兎はプールにいる悪霊たちに向かっていく。
悪霊たちも神兎に気がついて襲いかかろうとするがすぐにその気配が止まり静かに神兎の方に歩き始める。
「うふふ、食らわれるために生きる家畜よ。ひれ伏せ」
神兎の言葉通りすべての悪霊はひれ伏した。そして悪霊からエネルギーが出て神兎の回りに集まる。
そのエネルギーは神兎の周囲に形となりお姫様が食事する場所に変わる。豪華なテーブルと椅子に豪華な料理が並び、神兎は自動で引かれる椅子に座る。
そして優雅に食事を始める。
食べるということはさっきの神蛇と変わらないがこの神兎は魂すらも喰らう。
魅了されたものは女王の供物になること以外許されず、食べられることに喜びを抱きながら二度と輪廻の輪に帰ることができない。
そういう意味では神蛇の方が優しいかもしれない。
ただこの神兎はすべてを終わらせるのがかなり遅い。だからこそこの空間は不壊だし必ず相手を喰らい尽くす。
その間に神虎で残っている陣を壊しておき、神兎が食事をしている間に神子と視覚共有する。
どうやらあちらは神子が上手くやっているようで星宮さんをサポートできている。そして無事に教室の一室にある陣にたどり着いた星宮さん。
『残りプレイヤー四人』
『残りプレイヤー三人』
『残りプレイヤー二人』
その瞬間に速攻で星宮さんだけになった。
『ハァ……またか』
深く息を吐いた星宮さんは俺みたいになっていた。どうやら星宮さんにとって他の三人は合わない人たちだったようだ。
『だがこれで最後!』
俺とは違い星宮さんは壊された陣が分かるようで羨ましい。
そんな星宮さんは手に持っていたナイフを陣に突き刺した。陣を壊したナイフは普通のナイフではなく術式が込められている。
普通のナイフでは壊すことができないようにはなっているからな、この陣。無駄に性能がある。
『やった! これで魑魅魍魎の陣を壊すだけだ!』
ということは俺のロールミッションも変わっているのかな。
『ロールミッション:鬼姫討伐』
ん? 魑魅魍魎の陣を壊すじゃなくて鬼姫だ。
いや確かに鬼姫をどうするんだよって思ったんだけどここに来てか。
……裏チートキャラか。なるほど、裏で行動するキャラってことか。本筋の物語はあるが、その裏で起こっていることを解決するのが俺ということか。
本筋の話がなければ裏の話は意味がない。だから表キャラが全滅したら戻ってくるのか。
でも俺が神子を遣わしてないと星宮さんは詰んでいた様子だったけど……他にあったのかもしれない。
「おっ、いた」
タイムリーに鬼姫がいる場所を神子が見つけた。しかも中央の魑魅魍魎の陣に向かおうとしている。
やっぱり俺の推測は当たっていた。ここで鬼姫を足止めして星宮さんを魑魅魍魎の陣を破壊させる。
俺と星宮さんたちはとことん交わらないな。まあ関わってはいるけど星宮さんと一切会っていない。しかも会おうにもその隙が無いからな。
……何だかゲームで二週目に行ってルートを立てないと深掘りされない感じだな。ま、面白い立ち位置だからいいか!
校舎の地下にある中央の魑魅魍魎の陣に向かう星宮さんとそこに向かおうとしている鬼姫と遭遇している俺で行動を開始する。
鬼姫は第二校舎に入ろうとしているだけでまだ外にいたからすぐに鬼姫の姿を見つけることができた。
白装束の前をはだけさせ、ゆったりとした足取りで校舎に入ろうとしているおでこから角を二本生やして白髪が伸びて顔が見えない女性だった。
今までの悪霊とは比べ物にならないくらいに強い呪いを放っている。
だから手加減はナシだ。
「風神雷神破天神虎!」
雷と風を纏い顕現した神虎は全力で鬼姫に突撃する。
鬼姫はそれに対応しようとしたが成すすべなく後ろの建物に飛ばされる。
さらに神虎と共に追撃をすべく新たな十二神獣を顕現させる。
「星間跳躍流星神馬!」
通常の馬よりも大きく、気高さを兼ね備えた白馬が顕現した。
神馬は瞬く間に上空に跳躍し、鬼姫に流星のごとく追撃した。
だが鬼姫から追撃の波動を感じたため俺は次の神獣を顕現させる。
「八咫鏡回帰神牛」
鏡を幾重も周りに浮かしている神牛を顕現させ、鬼姫から繰り出される咆哮を鏡で跳ね返す。
いや、跳ね返すという言い方は違うか。すべての攻撃を元の場所に戻す。威力は残っているからそれはそのまま持ち主が喰らうことになるが。
だから今鬼姫はカウンターを受けた状態だ。
その隙を見逃さず、神虎と神馬で攻撃を仕掛ける。さらにすぐに終わらせるためにもう一体大型を顕現させる。
「海吞枯渇星喰神蛇!」
ゲートから顔だけ出した神蛇が口からエネルギーを収束させ、神虎と神馬を引かせた瞬間にエネルギーを放った。
遥か彼方までエネルギーが放たれたが、まあゲームの中だからいいよな。こいつを倒すためなら何でも大義名分は立つ。
反撃も許さぬ怒涛の攻撃により鬼姫からの動きがなくなった。呪いの動きもないから完全に静止している。
鬼姫がどうなっているのか確認するために神牛を引き連れて近づく。
やりすぎたと思うくらいにボロボロになって倒れている鬼姫があった。
彼女は蟲毒により産み落とされた存在。他者の悪意により意思を失くしただの化け物と化してしまったことに同情しかない。
「……せめて安らかに眠ってくれ」
蟲毒のような苦しみが生まれ変わってもないことを祈っている。
「あ……り……と……」
辛うじて音を発した鬼姫が何を言ったのかはすぐに分かった。
「大したことはしていない。礼を言われるには遅すぎたからな」
お礼を言われる段階は蟲毒を止めることができた時だけだ。
そんなことを言えば伝わったか分からないが鬼姫は光の粒子となって消えていった。
「ん?」
光の粒子は空に行くのではなく俺のもとに来た。俺に纏わり消え、俺の中に何かが増えた気配がした。
俺はもしやと思いステータスを開く。
『天日晴明
Lv100(100/100)
攻撃:S
防御:S
速度:S
魔力:S
P:40000
スキル
十二神獣・鬼神』
おっ、やっぱり鬼神というスキルが増えていた。てかステータスがマックスになっているし十二神獣にスキルを割り振ることができそうだ。
その前に星宮さんがどうなっているのかを確認すれば、悪霊がいる中で神子に守られながらちょうどナイフを魑魅魍魎の陣に突き刺そうとしているところだった。
そして陣にナイフが突き刺されば魑魅魍魎の陣は完全に消えた。




