01:ロールは裏チートキャラ。
「ん……? 何だここ」
俺はどうしてこんなところにいるんだ。
ここはおそらく学校の体育館。だが俺の高校の体育館ではないし見たことがない体育館だ。さらに言えば血の跡や何かが暴れた跡が生々しく残っている。
さっきまで家でゲームをしていたから夢かと思ったがこの感じは夢ではないと思う。夢なら夢って思わないと思う。
それなら違和感を覚えているのは寝ぼけているからかと思ったが今着ている制服は俺が通っていた高校の制服ではない。
夢だと思った方がまだマシだと思うレベルなほどに意味が分からない。そうだ、きっと夢なんだろうな。
夢でこんな風に思う初めての経験なんだろうな。それなら今すぐに起きてゲームの続きをしたい、MMОをしていたんだ。
そう思っていたがこの夢はどうやら意味不明なことが続くらしい。
『あなたのロールは裏チートキャラです』
俺の目の前に空中ディスプレイに文字が出てきた。
『ロールをこなして経験値を得ましょう』
本当に意味が分からないが楽しそうではある。
『あなたがいるそこは数年前に廃校となった高校です』
『何者かによる悪霊の大召喚があったため大規模な霊障が起き廃校になりました』
『高校生であるあなたは悪霊を祓うため派遣された陰陽師です』
『あなたは幼い頃に悪霊により両親を亡くし、陰陽師である師に助けられ修行をつけてもらいました』
『悪霊を祓うという強き心のもと、陰陽師をやっています』
おー、そういう設定なのか。
俺の両親は健在だし俺が両親を亡くしたとしても悪霊を祓うという強き心は持たないと思う。だからこれはロールだ。
『この世界でのプレイヤーは五人』
『しかしあなたのことを他のプレイヤーは知らされていません』
つまりは他のプレイヤーは四人だと教えられているってことだよな? 違うのか?
『この世界でのクリア条件は「魑魅魍魎の陣の破壊」』
『制限期間は魑魅魍魎の陣が発動した時』
『発動した際は最初の時点に戻ってきます』
おいおい……クリアまで繰り返されるってことか。とんでもなく強かったらとんでもなくループすることになるってことだよな。いや、そもそも死に戻りなのか?
制限期間が過ぎても生きていれば最初の時点に戻るのか、それとも死んでも最初の時点に戻るのか。まあ分からない。
『失敗条件は全員の脱落』
『他プレイヤーが全員死亡した際、あなたの生死にかかわらず共に最初に戻ります』
あっ、死に戻りらしいな。それならまあ、クリアできないことはないか。
『説明は以上です』
『ロールをしっかりとこなしてクリアできることを祈っております』
本当に俺たちにはロールをこなすことを要求しているのか。てか経験値ってどういうことだよ。
『天日晴明
Lv1(1/100)
攻撃:F
防御:F
速度:F
魔力:F
P:1200
スキル
十二神獣』
疑問に思えばステータスが出てきた。名前自体は俺の本当の名前だ。
てっきりロールをこなすから名前も違うものかと思っていたがそうではないらしい。
この十二神獣がどういうものか知りたいと思えばまた違う画面が表示された。
『十二神獣
環子
鏡牛
雷虎
魅兎
炎龍
水蛇
星馬
界羊
武猿
幻鳥
剣犬
暴猪』
うぉ……多いな。でも十二支になぞらえた神獣たちか。
なんだよ、楽しそうじゃないか。こんな夢ならかなり楽しめそうだなぁ……いやこんなハッキリとしているのが夢なわけないと思うんだが。
「さて、これからどうしたらいいものか……」
ここからどうすればいいのかと考えた時、今までにない感覚が刺激される。
そしてそちらを見れば悪霊らしき軍団が体育館に入ってきているのが分かる。
鉈を持った大男やら戦国時代を思わせる甲冑姿の武士、さらに鬼のような角を持つ鬼人までいた。
「いきなりクライマックスかよ」
おそらく普通の人ならビビり散らかすような状況だろう。
だが力を持っているせいか、いや元々こういうことにビビらない質だからむしろ力を試せると思ってかなり興奮している。
十二神獣の使い方はすでに理解している。ならやることは一つ。
「来い、雷虎」
俺の傍に雷を纏った虎が出現した。
「鏡牛」
さらに額に鏡を付けた牛も出現させた。
「さぁ、誰から来る?」
俺の問いにまず俺の足首がつかまれるのが分かる。さらに引っ張られているが弱弱しい。
「雷虎」
軽い雷撃を足首をつかんでいる悪霊に放てば鉈を持った大男が倒れてのたうち回っている。
「おいおい、今のは撫でただけだぞ?」
とは言っても十二神獣や俺の攻撃は退魔を秘めている。だからかなり効くのだろう。
「次は誰だ?」
俺がそう言えば全員が一斉に仕掛けてきた。
ただ俺一人だと侮っているのかまだ全力は出していない、様子見な感じがする。
どんな感じなのか、お手並み拝見と行こうか。相手の力も、俺の力も。
さっきの大男のように俺に呪いが飛んでくる。首を絞められたり足を引っかけようとしたり俺をとにかく呪おうとしてくる。
「そんなもんじゃ足りねぇだろ!」
俺はそれらをものともせずに本体に向かって無造作に悪霊一体の顔をつかむ。そしてその悪霊を地面に叩きつけた。
「ほら、もっと呪い殺してみろよ」
すげぇ、めっちゃ無双していると思いつつも、もっと冷や冷やさせてほしくて煽ってみる。
すると効果覿面ですごく呪いを振り撒いてくる。燃える呪いやら潰れる呪いやら姿が変わる呪い。
だがこの俺には一切の効果がない。それがなぜか、俺が強くてこいつらが弱い以外にはないだろう。
「もっと、もっともっと! 気張れよ!」
俺は悪霊に頑張ってもらうためにストレスを与えてみる。
殴る蹴る、雷撃、突進などなど、目についた悪霊を思い付く限りで遊ぶ。そうすればきっとヒヤッとしたり命が脅かされるかもしれない、そう思った。
「……終わりかよ」
いつのまにか体育館には俺しかおらず、倒れ伏した悪霊は消えていた。
もう少しちゃんとした戦いを期待していたのに全くそんなことにはならなかった。どういうことだよ。
俺はさっきこの世界に来て右も左も分からなかったんだぞ? そんな高校生にやられるなよ、ジジババよ。
『ロールミッション:体育館を探索する 0/3』
おっ、これがロールミッションか。
これをクリアすれば経験値が手に入るんだよな。……それなら悪霊を倒しても経験値は得られないのか?
「おぉ……?」
『天日晴明
Lv13(13/100)
攻撃:F
防御:F
速度:F
魔力:F
P:15600
スキル
十二神獣』
レベルは上がっている。ポイントも貯まっている。でもステータス値が全く上がっていない。
あっ、もしかしてステータス値をこのポイントで振り分けるってことなのか?
……できない。それならこのポイントは……あぁ、スキルに割り振ることができるのか。スキルポイントってことか。
さて、どれに割り振ろうか。いや待て。そもそもこのポイントってのは割り振る上限があるのだろうか。いやそんなこと気にしなくていいか!
強い奴ができればそれでいいや! 雷虎か鏡牛のどちらかで迷うが……雷虎だな。
100ずつポイントを割り振っていけば1000で止まった。念が足りなかったのかと思って再び割り振ろうとすれば画面の文字が変わる。
『風雷神虎』
雷虎から風雷神虎という名前に変わった。
しかも出していた雷虎が少し変化して風も纏うようになっていた。
「ほぉ、いいな」
千で変化したのか。でも俺は雷虎に最後まで割り振ると決めたのだからこのまま割り振り続ける!
「お」
続けて神虎にポイントを割り振り続けていれば一万で止まった。そして同じように文字が変化する。
『風神雷神破天神虎』
おぉ……! なんかカッコいい名前になってる! しかもまたしても姿が変わって鎧のようなものをつけてそこにいるだけで存在感を感じる。
「これで終わりか」
どうやら一万で打ち止めらしくそれ以上ポイントを割り振ることができなかった。でもこれなら十二神獣たちに一万ポイントを割り振れそうだな、レベルを100にすれば。
「ロールミッションをするか」
とりあえず俺のロールをこなすために体育館の中を調べることにした。それで経験値が得られるみたいだしそれに従わない手はない。
体育館を探索すれば壇上の端に紙があるのが見えた。
『○×高校閉校のお知らせ』
『○×高校の見取り図』
この二つの紙を見つけた。
一枚目の紙については説明を受けている通りのもので、異常現象が起きて生徒たちや教師たちが事故によって亡くなったことが続いて閉校することになったと書いている。
二枚目の紙はこの学校の見取り図だった。この体育館の形を見るに第一体育館がここらしい。
この高校は校舎が第一と第二があり、体育館も同じく第一と第二がある。
「あとは――」
他の手がかりを探そうとすればまた目の前に文字が出てきた。
『残りプレイヤー四人』
『残りプレイヤー三人』
『残りプレイヤー二人』
「ん?」
一気に三人も減ってしまった。いやー、これはやり直し確実か? 一人じゃ何もできなさそうだが。
でもこういう場合って主人公が一人で頑張るストーリーが多いよな。だから頑張ってくれ。
そう軽く祈りながら残り一つのロールミッションを探していれば簡単に見つかった。体育館の角にお札を発見した。
「……これは、結界か」
一見すれば何のお札か分からなかったが陰陽師としての俺はこのお札が結界の役割をしているのが分かった。
だがここを守るためではない。ここを封じるためのお札だ。閉じ込めると言った方が正しいか。
よく見れば体育館の壇上を除く場所を囲むように四方にお札が張られている。
「……封じ込められていたのか」
封じ込められ、惨殺されたのではないかと予想する。
悪霊にされたのかと思ったがお札を張ったのは陰陽師だよな。まあ陰陽師じゃない奴でも術を使える奴がいるのかもしれない。
『残りプレイヤー一人』
「あっ」
『裏チートキャラ以外のプレイヤーが全滅しました』
『ロードします』
俺が反応するまでもなく意識が引っ張られる感覚に支配された。




