表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/41

夏休み

 私の勤めている飲食店に、バイトの男の子がいる。近田一希くん。彼はとても真面目で礼儀正しい素敵な子。彼が入ったばかりの頃、告白されてしまい私は卒業したらと、やんわり断った。けれど、近田くんは変わらず優しくしてくれている。




 私が風邪を引いた時も心配してくれて、その時にライムを交換してからやり取りをするようになった。彼はとても頑張りやさんな男の子。微かに惹かれているのは気のせいと言い聞かせている。




――だって、彼は高校生。私は年上の女性。世間的にまずいし。




 そんな気持ちを抱えながら私は、いつものように仕事をしていた。その日はいつもより人手が足りないのに、お客さんが沢山来店していた。




「透子ちゃんごめん、ウェイトレス足りなくて、こっちは間に合ってるから、少しだけホールに入ってもらえる?」




 料理長とホールのリーダーからの指示なんて断れる訳が無い。本当はホールなんて出たくもない。




「分かりました」




 私は作業着からホール用の制服へ着替え、ホールへ向かった。すると早速高校生の男の子達のグループから呼び止められる。




「すみません!」



「はい」



「注文お願いします」



「はい」



「ハンバーグ定食2つお願いします」



「ハンバーグ定食、2つですね?」



「はい!」



「かしこまりました、ご注文は以上でよろしいですか?」



「はい、大丈夫です!」



 少年達は何やらニヤニヤしてるように見える。私はそれに気付かないふりをして厨房へ戻って行く。すると、耳に微かに声が届いた。



「一希の言ってた人だよな?」



「ああ、多分」



「美人だな」



「なー」



 私はその時気づかなかったけど、それを一希くんは見てたみたいで、その後の態度が最悪だった。



「オーダー入ります!」



 厨房に戻った私が作業をしていると、苛立ちを隠せないような声で注文を告げに来る。


 その後も一希くんは私と目を合わせず態度がおかしい。



――何なの? どうしたの? 一希くん。



 そんな気持ちのまま一希くんが帰る時間になった。私もあと数時間で帰る時間になる。他のスタッフももう、私と料理長しかいない。



「お先です」



「あ、近田くん!」



「……なんですか?」



 帰ろうとしている一希くんは後ろを通り過ぎたまま、振り返りもせずに返事をした。いつもと違う冷たさに私は心苦しくなった。



「ううん、何でもない。お疲れ様です」



「お疲れ様です」



 かろうじて会釈だけはしてくれて、一希くんは帰って行った。






* * *





 私はこの気持ちをどうしたら良いのか迷い、以前勤めていた職場で仲良くなった友達の黒部 佳代子(くろべ かよこ)に相談することにした。私はライムでメッセージを送る。



『佳代ちゃん、相談しても良い?』



『どうしたの? 何事?』



『実はね……好きな人がいるの』



『そっか。長谷川さん?』



『違う、私ああいうタイプは嫌』



『へぇ? じゃあ誰?』



『佳代ちゃんは知らない人だよ。言いづらいんだけど……相手は高校生の男の子』



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ