表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

将来

「近田くんは将来何かしたい事とかあるの?」


「僕、進学して薬膳の勉強がしたいと思っています。なので、進学資金を貯めたくて今バイトをしてるんです」


「進学資金貯めてるなんて凄いね?」


「……いえ。(うち)、両親が離婚してるんです。母も亡くなってて祖父母に育てられたんで……」


「……そっか。ごめんね、立ち入ったこと聞いちゃって」


 僕が目線を伏せながら話すと、透子さんは切なげにまぶたを伏せる。


「いいえ。気にしないでください。大丈夫ですから」


「……うん。けど、薬膳やりたいと思ったのは何で?」


「母が病気で亡くなったので、そういう体に不調がある人の役に立ちたくて……」


「そっか。なんか色々苦労して来たんだね……」


「ああ…大丈夫ですから! 確かに笑って話せる内容ではないですけど、僕にしたら慣れてるというか、離婚は小さな頃ですし、母が亡くなったのも小学生の頃なので。時々寂しいですけど、おじいちゃんやおばあちゃんが本当に良くしてくれたので、だから大丈夫です!」


 僕は透子さんを困らせないように明るい口調で話す。


「そうなんだ……凄いなぁ、近田くん」


「凄くなんてないですよ。白雪さんだって……」


「え?」


 僕は思わずとても素敵だと言いそうになって、思い留まった。


「……白雪さんはどうして料理の仕事をしてるんですか?」


 僕は恥ずかしさの余り、話題をそらしてしまう。


「私はね、普通に好きだから……かな?」


「調理学校へ行ったんですか?」


「うん、そう。専門学校ね」


「そっかぁ」


「薬膳の学校って? 専門学校?」


「みたいなものです。でも、専門学校ほどは費用かからないですよ」


「そうなんだね……頑張ってね! 応援してる!」


「ありがとうございます」


 透子さんが応援してくれて、なんだか僕は嬉しくなりますます頑張ろうと思えた。



* * *



 暖かな日が続くある日のこと、バイトへ行くと透子さんの様子がおかしい。


「……白雪さん? 大丈夫ですか?」


 どこかぼんやりしている透子さんに僕は声をかけた。透子さんは作業をしているのに、いつもよりも動きがスローに見える。


「え? うん……なんかちょっとボーッとしてて」


「もしかして、風邪でも引きました?」


「風邪? どうなのかな?」


「ちょっと、体温測った方が良いですよ」


「……うん」


 僕達の会話に気付いた周りのスタッフも、声をかけてくる。


「え? 透子ちゃん、体調悪い?」


「はい、少し」


「無理しない方が良いよ? 今日は帰って休んだら?」


「はい、すみません」


「あの、僕心配なので付き添っても良いですか?」


「近田くん? 今日は人がいるから良いけど、すぐに帰って来てね?」


 ホールのリーダーが許可をくれて僕は透子さんに付き添った。休憩室へ行き事務室から体温計を持ってくると、透子さんは体温を測った。


「ピピピッ ピピピッ」


「どうですか?」


 体温計を取り出した透子さんは、じっと体温計を見つめている。


「……38度」


「ええ?!」


 思わず僕は透子さんの額に手を当てる。


「え?」


――無理だ。言えない。言える訳が無い。恥ずかし過ぎる……!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ