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友達

「う〜ん……卒業したら……ね?」


透子さんは軽く微笑んで少し考えてからそう言った。


「卒業……したら」


 卒業なんてまだ当分先だ。これは断られたのか、それとも希望を持っても良いのか?


「分かりました。出直します。それなら、友達になってくれますか?」


「……友達?」


「はい、友達から……いえ、今は友達になりたいです」


「うん、良いですよ」


 屈託のない笑顔を透子さんは僕に向けてくれた。


――この笑顔を見られるなら、今は友達で構わない。




 それから数日が経ち、お昼休憩の時、厨房の長谷川さんが透子さんを食事に誘っていた。


「いいでしょ? 一回位」


「……お断りします」


 透子さんは容赦ない。内心安心してはいるものの、僕だってただの友達だ。


「もう〜、透子ちゃん」


「……()()()()って呼んで下さい」


 少し嫌そうに顔をしかめながら透子さんは長谷川さんに伝えている。


「え〜、いいじゃん」


「良くありません」


「またやってる……」


「え? また?」


 僕の近くにいたパートの女性が呟いた。


「そう。年中誘っては断られての繰り返し。透子ちゃん綺麗だから、理想高いのかな?」


――理想が高い? そうなのかな?


 透子さんを見ていると、こちらに体を向けた透子さんと視線が合う。


――あ。


 思わずそらせずにいると透子さんは、微笑んでくれた。


――ずるい。今の微笑みはずるい。僕の気持ちを知ってるくせに……。


 ドキドキする心臓をごまかしながら、そんなことを思い、僕は思わず(うつむ)いてしまった。



 僕はバイトのある日が楽しみになり、学校が終わると一目散にバイト先へ向かった。


 お店に着くと透子さんが作業をしていた。 真剣に作業している姿を見て、僕は嬉しくなる。


「おはようございます!」


 他のスタッフが挨拶してくれるものの、透子さんは気付かない。僕は準備を整えてホールへ出て行った。


 仕事を始めてしばらくしてふと視線を感じると、透子さんが僕の方を見ていた。


――え? こっち見てる?


 僕は戸惑いながら他の皆にバレないように、こっそりと会釈をした。何故見てたのかは分からないけど、僕はとても嬉しい気持ちに包まれていた。



 * * *



 季節が変わり、桜の花びらがひらひらと風に飛ばされている、暖かい春の日。僕は今日もバイトに来ていた。今日は休憩のある日曜日。


 休憩室に行くと透子さんがいた。


――やった! 今日は付いてる。


「お疲れ様です」


 僕が声をかけると透子さんは振り返って“お疲れ様です”と微笑んでくれた。透子さんの笑顔に見惚れてると、透子さんはいつまでも座らない僕に尋ねてきた。


「どうしたの? 座らないの?」


「あ……座ります!」


 僕はそう言って透子さんの隣に座った。


「白雪さんはお弁当なんですね?」


「うん、そう。近田くんは?」


「僕は近くのコンビニで買ってきました」


 そう言った僕はコンビニの袋を持ち上げて見せる。


「何買ったの?」


「おにぎりとサラダです。あと、ジュースを」


「へぇ? もしかしてパンよりご飯派?」


「いえ、特にこだわりはありません」


「そうなんだ?」


 透子さんとは時々休憩が一緒の時に話が出来るようになった。一度早まって告白してしまったから、僕は慎重に距離を縮めようと考えている。

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