一希の不安
あの日。再会の約束をした日に会えなくて僕はとても、モヤモヤしていた。僕のことを朝から呼び出したのは、倉本でパソコンが動かなくなったから見てほしいってことだった。
大事な透子さんとの先約があるというのに。かといって、困ってる友人を放り出す訳にもいかなかった。結局、そこで時間を取られ、透子さんには会えず業者を呼ぶことになり、僕は軽く倉本に恨みがましい気持ちを抱いてしまった。
――恨んでもしょうがないけど……。
そらから数日後、懐かしい高校時代のバイト先の店長から電話があった。
「もしもし?」
「あ、もしもし、お久しぶりです。分かるかな? 店長の……あ、ごめん。近田くんがバイトをしていた時の店長の辻だけど」
「分かります、お久しぶりです」
僕は電話の向こうの店長に頭を下げる。
「皆がさ、近田くん最近どうしてるのかなぁ? って気にしててさ、それで電話したんだけど、元気?」
「はい、元気です、皆さんは元気ですか?」
「うん、皆元気だよ」
「そうなんですか。良かったです」
「うん。そう言えば最近さ、透子さんの周りに男が現れてさ……」
「え?」
「何でも、ずいぶん前に婚活で知り合ったとかで、諦められないから考え直してほしいとか言ってたな……」
「そうなんですか……」
「うん、困ったもんだよね」
「それで、透子さんは?」
「うん、まあ、もちろんというか断ったんだけどさ、これがなかなかしつこい男で……俺や長谷川さんが追い払ってはいるんだけどね、あまり大ごとには出来なくてさ」
「透子さんは大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。だけど、あまりにしつこいとさ、流石に心配だよね」
店長の心配そうな声が僕の耳に響く。
「そうですね」
「会いに来る?」
「え?」
「透子さんと付き合ってるんでしょ?」
「……え? 何で?」
思わず僕は問いかけてしまう。
「何でって……見てて何となくね。まあ、多分気づいてたのは俺と料理長位かな?」
「……そうなんですか」
「別に、良いじゃないの? 付き合ってても」
「そうなんですけど、これでも秘密にしようとしてたんです。付き合い始めたのも卒業してからですし」
「あれ? そうなんだ? 一緒に土日休んだこともあったから、あの頃から付き合ってたんだと思ってたよ」
「あれは、まあ、一緒に出かけましたけどあくまで、友達としてですから」
「そうなんだ?」
「はい。でも、本当に近い内に会いに行きます。会いたいですし、心配なので……」
「うん、それが良いよ」
店長との電話の後、会いに行こうとしたものの、新たに始めたコンビニのバイトが忙しくなかなかまとまった休みを取れずにいた。
そうこうしているうちに、1週間が経ち秋の気配を感じ始めてしまった。僕は急になってしまうものの、次の休日に帰省しようと心に決めた。




