約束
私と一希くんは数カ月ぶりの再会の約束をしていた。一希くんが地元へ帰ることになっている。
待ち合わせは10時。私が家を出ようとしたその時だった。私のライムに着信が鳴り響いた。
「もしもし?」
「あ、もしもし、透子さん?」
「うん、どうしたの?」
「それが……友達がトラブルに巻き込まれたとかで、連絡が来たんです。どうしても来てほしいとか言われて……」
「うん」
――なんか嫌な予感がする。
「正直、大事な約束があるからって言ったんですけど……」
電話越しに何やら女の子のような声が微かに聞こえる。
「今、そこに他にも人がいるの?」
「はい、その友達の所にいます。なので、今日は行けなくなってしまいました。ごめんなさい!」
――やっぱりそうなるの?
でも友達も大切だしと私は思い、寂しさを堪えた。
「……わかった。その、トラブルとかって大丈夫なの?」
「はい、なんかパソコンが動かなくなったとかで、今見てるんですけど……」
「そう、解決すると良いね」
「はい」
「会いたかったけど、また次回だね」
私は努めて平静を保つ。
「そうですね、僕も会いたかったです」
「……また、連絡するね」
「はい、また後で」
せっかくの約束が流れてしまった。私は久しぶりに会える喜びに胸を躍らせていたのに、すべて台無しになってしまった。
少しでも彼に素敵に見られたくて着たこの服も、メイクも。仕方ないとはいえ、モヤモヤが私の胸に広がっていく。
――女の子の声が聞こえたけど……。
一希くんが友達だと言っていたのだから信じるしかない。なかなか会えないのに疑い始めたらきりがないし、信じられないのなら中距離恋愛なんて続けることなんて出来なくなってしまう。
――不安だけど信じよう。
一希くんは私のことだけを想っていると、例え今離れていても現状が分からなくても、信じるしかない。私はそう思っていた。
その夜。一希くんからビデオ通話が入った。
「もしもし、透子さん?」
「うん」
私は嬉しくて笑顔になる。
「今日は本当にごめんなさい!」
一希くんは部屋の中にいるらしい。
「ううん、トラブルは解決したの?」
「ああ……はい。結局僕じゃ手に負えなくて業者を呼びましたよ」
一希くんはなんだかうんざりした様子の顔をしている。
「そうなんだ」
「はい。僕が行かなくても良かったと思うんですよね」
「うん、友達って女の子?」
「ああ……はい。そうなんですよ。やたらなつかれて? 構われてるだけなんですけど」
「そうなの?」
「そうですよ。あ、誤解しないでくださいね、本当に何ていうかただの友達ですから。女の子ではありますけど、異性には見えませんから」
一希くんは私に信じてもらおうと必死な様子だ。
「うん、分かってるよ」
「透子さん……」
「うん?」
「……やっぱり会いたいです!」
一希くんは画面に近付いて、今にも画面にぶつかるのではないかと言うほどの距離まで来た。
――結構アップになってる。
「うん、私も。凄く会いたい」
「近い内に会いに行きますから」
「うん、待ってる」
「約束ですね」
「うん」
そうして私達は約束を交わした。




