イルミネーションの中で
更に季節は進み、すっかり街はイルミネーションに彩られる季節になった。クリスマスソングがあちらこちらで流れている。
僕と透子さんは、休日にイルミネーションを見に来ていた。冬の夜の街を彩る電飾はクリスマスツリーや木々を光り輝かせている。2人は程良い距離感を保ちながら並んで歩く。
「綺麗ね……」
「はい」
――透子さんも負けずに綺麗です。
なんて言えるわけない。
「もう7時だけど、どうする? 帰る? それとも夜ご飯食べてく?」
「そうですね……寒いですし、どこかで食べて行きますか?」
「うん、そうしよう」
僕達は近くの飲食店に入りそれぞれに食べたい物を注文した。店の中には家族連れのお客さんがちらほらといる。食事を終えると僕は透子さんに話しかけた。
「透子さん」
「何?」
飲食店は賑やかで大事な話をするには不向きだ。ある程度声をあげないと、聞き取れない。これから僕が話すことは出来れば周りに聞かれたくはない。
「話したいことがあるんですけど……場所を変えましょう?」
「大事な話?」
透子さんは僕の様子に何かを感じたのか、そう聞いてきた。
「はい、そうなんです。ここだと話せなくて……」
「……だよね、出ようか?」
「はい」
飲食店を出た僕達は、何となく歩いて行く。公園に着いた僕達はベンチへ座る。僕は今日、透子さんにプロポーズをする。その為にも安物だけど指輪を用意した。
「透子さん」
「何?」
通り過ぎるカップルが視界に入りながら、僕は指輪をバックから取り出す。指輪の入ったケースは優しい紺色をしている。
「まだ付き合ってないですけど……僕には透子さんが必要なんです。いつまでも一緒にいたい。僕が戻って来たら……そしたら僕と結婚してください!」
「……一希くん……」
透子さんは驚いているようで、一瞬目を見開いた。けれど、僕の差し出したケースを僕から受け取った。
「ありがとう」
両手でケースを包み、透子さんは僕に向かって微笑んだ。透子さんの瞳が微かに涙がにじんで美しく煌めいている。
「私達年齢差や人間と妖との壁みたいなものもあるけど、それでも良いの?」
「そんなこと問題ありせん、僕のこれからの人生に透子さんが必要なんです!」
「一希くん……私もこれからの人生を一緒に生きたい、戻って来て来たら……よろしくお願いします」
透子さんは僕に向かって頭軽く下げた。
「ありがとうございます!」
僕は嬉しくて抱きつきたい衝動を堪えながら、透子さんに向かって微笑む。
「そうと決まれば、ますます頑張らないとな……。僕の未来は、僕達の未来ですから」
「うん、応援してる。私も頑張るからね」
「はい、ありがとうございます。僕も透子さんのこと、応援してます」
「ありがとう。あ、開けて良い?」
「はい」
透子さんはそっとケースを開く。中にはシンプルで小さな人工ダイヤが埋めてある。小さいながらもキラキラと輝きを放っている。
「可愛い……」
「安物ですけど」
「ううん、凄く素敵」
「良かったです、気に入ってもらえて。働くようになったら、もう一度改めてプレゼントします」
「え? これで充分だよ」
「いえ、僕がプレゼントしたいんです」
「ありがとう」
透子さんはとても嬉しそうに微笑んでくれた。
こうして僕達は少し先の未来の誓いを立てた。まだ僕は10代だけれど、僕には透子さんがいれば良い。透子さんじゃなきゃこんな気持ちにはならない。だから、僕はこの決断をした。




