友達へのお土産
僕は翌日学校で玲士にお土産を渡した。まだ始業前の時間。
「はい、お土産、口裏合わせてくれてありがとう」
「ああ。ありがとう、開けて良い?」
「え? ここで?」
「何? 駄目なの?」
「いや、そういう訳じゃないけど」
なかなか教室でバスタオルを広げることもないから、少し戸惑ってしまう。アルファベットのYもあるし。
「お、バスタオルじゃん! なになに? 吸水性抜群? 心地良い肌ざわりは癖になります?」
どうやらバスタオルのタグにそんなことが書かれているらしい。
「へぇ~、株式会社Y? ってどこ?」
「……さあ? 小さな会社なんじゃない?」
僕は一瞬焦ってしまう。まさかホントに突っ込まれるなんて驚いてしまった。
「あ、そろそろ時間だ」
「あ、そっか。始まるな」
僕達はそれぞれ自分の席へ戻った。
* * *
その日の放課後、僕はバイトへ向かう。その日はとても忙しく、あっという間にバイトが終わった。そして、長谷川さんが動いた。
僕が帰ろうとしていた時に長谷川さんが透子さんに近づいた。透子さんは帰る準備を始めている。
「透子ちゃんさ、土日休んで出かけてたの?」
「はい、出かけてました」
「どこまで?」
「秘密です」
――そりゃあそうだよ。言えるわけない。
「そういえば。近田くんも休みだったよね?」
「え? 僕?」
「そう、君」
「たまたまですよ」
「たまたまねぇ?」
そう言いながら長谷川さんは目を細める。
「なら良いけどさ、透子ちゃん俺と付き合ってよ」
「……お断りします」
透子さんは長谷川さんを見もせずに、答える。というか、仕事中に長谷川さんは何をしているんだろう?
「俺、本気なんだよ、誰にも渡したくない」
目がとても真剣な長谷川さんは、透子さんに近寄っていく。
「長谷川さん!」
僕は阻止したくて大きな声を出した。
「何? 今大事な所なんだけど?」
長谷川さんは僕にあからさまに不機嫌そうな表情と声を向けた。
「火、つけっぱなしですよ?」
「え? あ!」
長谷川さんは話に夢中になり、鍋に火をかけたままにしていた。
「うわ……」
「大丈夫ですか?」
「うん、少し煮立ったけど、大丈夫。ありがとう、教えてくれて」
「いいえ、どういたしまして」
「透子ちゃん、考えといて? 返事」
「今考えましたけどごめんなさい。私好きな人がいるので」
「え?! 誰?」
「秘密です」
「近田くん、知ってる?」
「いいえ、僕も知りません」
「えー……誰なんだ?」
「長谷川さんの知らない人です」
「そうなんだ……付き合ってるの?」
「いいえ、まだ付き合ってません。でも、今後付き合う約束をしています」
「そっか……俺も潮時なのかな。諦めたくないけどさ、結構本気だったんだよね。いつも冗談みたいになってたけど」
長谷川さんは鍋の様子を見ながら話をする。
――長谷川さん、辛いだろうな。
「近田くん、お互い辛いけど他の女の人探そうな」
「え? はい」
何故か僕まで失恋仲間になってしまった。
――ごめんなさい、相手僕なんです。
心の中て僕は長谷川さんに謝っていた。




