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翌朝、僕は目を覚ます。うっすらとまぶたを開けると、視界に透子さんの姿が映る。
――あ、そうだ。透子さんと旅行に来てたんだ。
まだ眠っている透子さんは、無防備でどこかあどけなさを感じる。朝日が差し込んで来た部屋はほのかに明るい。壁の時計を見ると6時を指していた。
――綺麗だな……このままずっと見ていたい。
僕は透子さんの顔をじっと見つめた。見つめていると、透子さんはまぶたを動かす。
「ん……」
寝返りを打ち、向こうへ体を向けてしまう。
――残念。
僕は体を起こし窓の外を眺める。窓の外は川が流れていて、何かがいる。
――ん? 何かがいる?
僕は思わず目を凝らして見ると、何となく見覚えのある姿だった。
――あ。平助さん!
僕は聞きたいこともあったため、着替えて外へ出た。朝は少し肌寒い。川で泳ぐなんて風邪を引かないのかな? そんなことを考えながら僕は川原に敷かれている小石を踏んでいく。
気配に気付いたのか平助さんは川から顔を出し、こちらに顔を向けた。朝日がどんどん昇り続け辺りはすっかり明るくなって来た。
「おや? 貴方は一希様?」
「はい、おはようございます!」
「これはこれは。おはようございます。ずいぶんお早いですね」
「はい、目が覚めたので」
「そうですか。温泉はどうでしたか?」
「とても気持ちよかったです」
「それは何よりでございます」
平助さんは僕に頭を下げると川から上がり、僕に近づいて来た。
「平助さんに聞きたいことがあるんですけど」
「私にですか?」
平助さんは目を丸く見開いた。
「はい、友達にお土産を頼まれてしまったんですけど、人間の世界でも使えそうなオススメのお土産ってありますか?」
「そうですね……」
平助さんはあごに手を当て、考え込む。
「アレならどうだろう?」
「アレ……ですか?」
「はい、アレです」
何やら自信満々に平助さんは答えてくれた。
「何ですか? アレって」
「妖怪の世界で人気の代物です。河童にも人気がありますよ」
満面の笑みで言われてしまい、何かは教えてくれずそれ以上僕は聞けなかった。
「キュウリとか?」
「残念ですが違います。見てのお楽しみです」
僕に向かって平助さんはウィンクをした。
「ありがとうございます。ところで平助さん」
「何でしょう?」
「この寒いのに川で泳いで風邪引いたりしないんですか?」
「ああ……お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ。私は河童なので」
「ああ、なるほど」
「お部屋へ戻られますか?」
「はい。何も言わずに来たので、僕がいないと透子さん心配するかもしれませんから」
「それがよろしいですね」
「ありがとうございました」
「お土産屋さんに寄る時は、是非お声掛けください。今日はお土産屋さん近辺にいますから」
「はい」
僕は頭を下げ、部屋へ戻った。部屋へ戻ると、透子さんは起きていた。




