温泉で
声をかけてきたのは優しい目元にタヌキの耳がついた、妖だった。
「え?」
「ああ、ごめんね、僕は透子さんの友達だよ」
「友達ですか?」
「そう、街中噂になってるけどね、透子さんの恋人の人間が今、ここにいるって」
彼はそう言いながら面白そうに微笑んでいる。
「まだ、恋人ではないです」
「そうなんだ? にしても、君、若いよね?」
彼はそう言いながら、僕の顔を覗き込んでくる。
「18歳です」
「人間の年齢と妖の年齢は違うけど、でも透子さんは人間で言うと君と同じくらいになるのかな? 君より少し年上だね」
「透子さんは、周りの人には30歳位と言ってるそうです」
「まあ、そのくらいかもね、人間の年齢なら。透子さんは今確か……300歳位のはずだから……」
「妖ってどのくらい生きるんですか?」
「う〜ん……そうだね。種族によって違うかな。透子さん達のような妖は1000歳位までかな」
「そうなんですね、凄い長生きなんだ……」
「気にしてるの?」
「そりゃあ、気にしますよ。年齢差はもうどうでも良いですけど、寿命は」
「人間と同じでさ、妖怪だってその寿命まで生きられる訳じゃないんだよ。何があるか分からないのは同じ」
「あ。そうですよね」
「そう。そういうこと」
「僕は応援してるよ、君達のこと」
「ありがとうございます」
「なんか、熱くなってきました……」
「え? 大丈夫? のぼせた?」
「かもしれないです」
「あ〜、上がった方が良いよ。ごめんね、長話したから」
申し訳なさそうに彼は謝ってくる。
「いいえ、大丈夫です、話出来て良かったです。ありがとうございました」
僕はぼんやりしたままお風呂から上がって、脱衣所から出た。入り口の傍に立っていた透子さんは僕に気付いた。
「あ、一希くん」
「おまたせしました」
「ううん、って大丈夫? 顔真っ赤。のぼせた?」
「はい、多分……」
「部屋に戻れる?」
「はい」
僕は透子さんと一緒に部屋まで戻ると、冷たい飲み物を飲んで布団に横になった。透子さんは僕の横にいる。
「そうだ、ねえ、一希くん?」
「はい?」
「私の手、冷たいから額にあてる?」
「……お願いします」
すると透子さんは立ち上がり頭の位置まで移動すると、僕の額に手をあてた。
ひんやりとした氷のような手がとても心地よい。
「う〜ん、なんかやり辛いな……一希くん」
「はい」
「膝枕しても良い?」
「え?!」
「何でそんなに驚くの?」
「いや、だって膝枕と言えば恋人同士がするものでは?」
「……駄目かな? この体勢辛いのもあるんだけど、私がしてみたいって言うのが本音かな」
「分かりました」
僕は頭を少し起こし枕の変わりに透子さんの膝に頭を乗せた。
――どうしよう。冷えたはずなのに、また熱くなって来た!
冷えた手に心地よさを感じながらも、僕はドキドキする心臓を抑えきれずにいた。
「え? 大丈夫? のぼせた?」




