2人の旅行 2
平助さんと呼ばれた男性は、透子さんと僕に深々と頭を下げる。
「紹介するわね、平助さんは河童の妖怪よ。温泉旅館で働いてるの」
「そうなんですか、よろしくお願いします」
「あ、どうも、よろしく坊っちゃん」
平助さんは小柄で僕とそれほど身長は変わらない。細身で華奢な感じだ。僕に向かってニコニコと笑顔を振りまきながら、ペコリと会釈した。
「平助さん、彼は一希くん」
「これはこれは。透子様の大事な方ですね、一希様」
「あの、僕まで様を付けなくても良いですよ」
「そういう訳には参りません! 透子様のお連れの方に失礼のないようにしませんと!」
「さあ、参りましょう、こちらです」
辺りは石畳で出来た地面の両側にお土産屋さんがずらりと並び、美味しそうな何かの食べ物の匂いがする。
「いい匂いがする」
「あ、多分、中華まんかな?」
「人間界の食べ物があるんですか?」
「もどきだけどね、似たようなものを沢山作ってるよ」
「そうなんですか」
「食べてみる?」
「え? 良いんですか?」
「うん、平助さん」
「はい、何でしょう」
「中華まんを2つお願い出来る?」
「かしこまりました。お待ち下さい」
平助さんは僕達に頭を下げ、あっという間に買いに行きすぐに戻って来た。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
僕達は平助さんから中華まんもどきを受け取ると、口に入れた。
「美味しい……」
「ね? 美味しいでしょ?」
「はい、人間界の物と味まで同じですよ」
「人間界マニアがいるからね」
「人間界マニア……ですか?」
「そう、人間界大好き!って妖怪がね」
そう言うと透子さんは楽しそうに笑う。
「それなら、透子さんが透子様って呼ばれるのは……」
「雪女だからって言うのもあるけど、人間の血が混ざっているから、ある意味崇拝されてる所もあるかな?」
「純血の方が良さそうなのに……」
「でしょ? なんかその辺りはよく分からないけど、不思議よね?」
「全く不思議ではございませんよ」
平助さんは突然会話に入って来る。
「どうして?」
「透子様一族は元々身分の高い一族で、更には人間との駆け落ち。中には反対する者もいましたが、人間を大好きな妖怪も確実におりました。ですので、今や伝説の一族のようになっております。中には、人間と結婚したいと言う妖怪までおります」
しばらく平助さんの後を着いて行くと、一件の宿が見えてきた。透子さんの家も日本家屋で趣があったけど、この宿もまた築何年あるのかと考えてしまう。妖怪の世界だから、何百年とか経っているのだろうか?
そんなことを考えながら歩いていると、僕達の泊まる宿に着いた。
「さ、到着致しましたよ」
「ありがとう、平助さん」
「ありがとうございます」
僕達がお礼を告げると、平助さんはお辞儀をして去って行った。
「彼はここまでなんですね」
「お客様の案内係だからね」
「そうなんですか?」
「うん、入ろう?」
「はい」




