2人の旅行
『玲士ごめん、口裏合わせてほしい!』
僕はライムでメッセージを送った。
『どうした?』
『透子さんと旅行へ行くことになった』
『おお! マジ? 良かったな!』
『ありがとう。で、親には玲士と行くことにしたから口裏合わせてほしいんだ』
『良いよ、いつ行くの?』
『来週の土日に』
『分かった、場所は?』
――そうだった。妖怪の世界に行くのに考えてなかった。一応人間が行きそうな場所にしとくか?
『草花温泉』
『草花温泉か、分かった』
一応観光名所的な場所だから大丈夫なようで僕は安心する。
『じゃあ、お土産楽しみにしてるから』
『分かった』
――いや? 妖怪の世界にお土産なんてあるのか?
若干の不安を覚えながら僕はメッセージを終わらせた。
* * *
当日。僕は白雪家へ向かった。白雪家自体が妖怪の世界と繫がっているらしく、人目が気にならないのはありがたい。
慣れたもので出迎えてくれた透子さんと部屋へ向かい、着替えが入っている透子さんの荷物を一緒に持った。
「持ちますよ」
「え? 大丈夫。自分で持てるよ」
「持たせてください」
僕は少しでも透子さんにカッコよく思われたくて、透子さんの荷物を持った。
「ありがとう」
透子さんは嬉しそうに微笑んでくれた。
ただでさえ年下なのに、可愛いとかしか思われてなかったら、いたたまれない。好きだと言ってくれてはいても、カッコいいかまでは分からない。男としてはやっぱり可愛いよりもカッコいいと思われたい。僕はそんなことを考えていた。
透子さんと一緒に廊下を歩いていくと1番奥の部屋に到着した。ひんやりとした空気が辺りに漂っている。透子さんは僕を見ると声をかけてきた。
「一希くん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
少しばかり緊張しているのを見抜かれたのか、気遣ってくれた。
「あ、でも、僕は人間なのに妖怪の世界に行っても大丈夫なんですか?」
「うん、それは大丈夫。雪女の私だってクォーターだし。それに、向こうに連絡行ってるから」
「そうなんですね」
「うん」
「じゃあ、開けるよ」
「はい」
僕はゴクリと唾を飲んだ。次の瞬間、襖は勢いよく開き、温泉街のような場所が現れた。人間の世界と変わらない、お土産屋さんがあり、日本語で書かれた看板もあり、言われなければ妖怪の世界だと分からない。
いや、見るからに妖怪もいるから、全く分からない訳ではない。
「着いたね、良かった」
僕達は靴を履きながら話している。
「良かった?」
「うん、たまに全然違う場所に着いちゃうこともあるから」
「え? そうなんですか?」
「うん、余計なこと考えて集中してないと危ないかな……」
「そうなんですね……本当、良かったです」
「えっと……そしたら、私達がお世話になるのは……」
「透子様! お待ちしておりました」
声が聞こえた方を見ると、紺色の着物に身を包んだ、50代位の男性が現れた。人間に見えるけど……。
「あら、平助さん」
――妖怪……なのかな?
透子さんは嬉しそうに微笑んでくれた。




