ご挨拶
中へ入ると畳の部屋に置かれたちゃぶ台があり、おばあさんが座っていた。背筋を伸ばしとても美しい佇まいだ。妖怪だけど、とても700歳を超えてる様には思えない。
「一希さん、ようこそ、お座りください」
「はい、失礼します」
僕はうながされ、透子さんと並んで座布団の上に座った。
紗雪さんが人数分のお茶を入れてきてくれて、僕達の前に置いてくれる。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
紗雪さんは透子さんに似た笑みを僕達に向けた。
「この間は本当にありがとうね」
雪乃さんは、僕に優しく微笑んでくれる。
「いいえ、回復されたようで何よりです」
僕は雪乃さんに頭を軽く下げる。
「本当だ、雪乃様が回復されて私達も安心だよ」
さっきまでいなかったはずの人が突然部屋の中にいて、僕は驚いてしまう。
「え?! いつの間に……」
「騒ぐな、人の子よ」
この間神社で会ったあの子達が部屋の中にいた。
「おお、よく来たね」
雪乃さんは平然と歓迎している。紗雪さんと透子さんも何事もなかったように落ち着いている。
「お久しぶりです、雪乃様に紗雪様」
「ああ、久しぶりだね、2人とも。神社を留守にして大丈夫なのかい?」
「はい、今代理の蛇神が守っています」
「だから、大丈夫です!」
――お稲荷様の神社に今、蛇神様が? 今だけ蛇神神社?
僕は頭に余計なことがよぎったことをかき消した。
「そうか、2人はどうしてここへ?」
「雪乃様のお見舞いに来ました」
「来ました」
「もうすっかり良くなったから大丈夫だよ、ありがとう。そこに座っている一希さんが、助けてくれたんだよ」
「イツキ、ありがとう」
「ありがとう!」
「いいえ、お役に立てて良かったです」
「お礼がしたいと思っていたから、こうして会えて嬉しいよ」
「とんでもないです」
「お礼として何が良いか考えたんだけど、透子と2人で旅行にでも行かないかい?」
「おばあちゃん?!」
「旅行ですか?」
「そう、白雪家が所有している土地で、人間は本来入ることの出来ない温泉があるんだよ」
僕と透子さんは顔を見合わせる。
「人間の世界は面倒だから、年齢差とか世間体とか気にしないといけないだろう? だから妖怪しかいない所なら何も気にせずのんびり過ごせるんじゃないかと思ってね……どうだろう? 2人とも」
「私は構わないですけど……」
透子さんは僕の方をチラリと見る。
「僕も行きたいです」
こうして僕達は2人で白雪家所有の温泉地へ出向くことになった。翌月の透子さんと僕の休みを合わせて、土日に連休をもらった。
2人で土日に連休なんて何か言われるかと思ったけど、何も言われなかった。そう言えば、最近長谷川さんは大人しい。透子さんのことは諦めたのだろうか?
僕は透子さんと旅行へ行けることが嬉しくて、長谷川さんのことはすっかり忘れて行った。
両親には学校の友達と一泊温泉旅行に行くと告げ、友達には口裏を合わせて貰うことにした。




