お礼
透子さんから翌日、メッセージが届いた。
テレビのニュースでは、秋に関東で雪が降ったと騒ぎになっていた。僕は朝食を取りながらメッセージを読んでいる。
『昨日はありがとう。おばあちゃん、良くなったよ!』
『良かったですね!』
『一希くんのおかげ! 本当にありがとう!』
『それでね、元気になったらお礼がしたいっておばあちゃんが言ってるの。お母さんも一度会っておきたいって言ってるんだけど、良いかな?』
透子さんの送ってくれたはてなマークのスタンプのキャラクターがとぼけた顔をしていて、笑ってしまう。
『良いですよ』
「一希、何1人で笑ってるの?」
祖母に突っ込まれてしまうが気にしない。
「透子さんのスタンプに笑っちゃったんだよ」
僕はメッセージを返信して朝食を食べ続ける。
僕と透子さんの休みが一緒の日に、僕達は透子さんの自宅へ行くことになった。
* * *
この間は透子さんが僕の家に来て、とても緊張していたけれど、今度は僕が緊張している。つい最近来たばかりとはいえ、挨拶となると何で緊張するのか分からない。
僕は大きく深呼吸をする。
「大丈夫? 一希くん」
「……はい、大丈夫です」
そう言っている自分の声が微かにかすれている。
「大丈夫よ、家の家族は好意的だから」
「はい、それは何となく分かるんですけど……この間と逆ですね。この間は透子さんが緊張して、今度は僕が緊張してて……」
「そうだね」
言いながら透子さんは微笑んでくれる。お茶菓子でも用意しようかと思い、とりあえずアイスクリームを買ってみた。
「透子さん、アイスクリーム買ってきたんですけど、皆食べられますか?」
「え? アイスクリーム用意してくれたの? ありがとう! おばあちゃん達、喜ぶよ!」
そう言われて僕は安心した。2人で歩いているとすぐに玄関へたどり着いた。
透子さんは玄関の戸を開けると、“ただいまー”と中へ声をかける。こうして見ると、普通の人間と何も変わらない。この間はあまり見る暇がなかったけれど、結構大きな屋敷のような作りになっている。
今どきの洋風の造りの家とは違って、なんだかほっとする。
「おかえりなさい」
どこかの部屋から紗雪さんが出てきて僕達に顔を見せる。
「ただいま」
「お邪魔します」
「どうぞ」
僕達は靴を脱ぎ3人で部屋へと移動する。襖が沢山あり、何が何の部屋なのか分からない。
「迷子にならないでね」
「はい」
「なっても見つけるから大丈夫だけど。どこも同じように見えるでしょ?」
「はい、襖の部屋だらけですからね」
「ふふふ、でしょ?」
いくつかの部屋を通り過ぎて、紗雪さんと透子さんは立ち止まった。
「おばあちゃん、お連れしました」
「どうぞ」
透子さんが声をかけると中から返事が聞こえた。とてもハキハキとした声に聞こえる。
「失礼します」
「失礼します」
僕は透子さんに続いて中へ入った。




