表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/41

謎の美女

 リリーが去るのを見送ると、玲士が話しかけて来た。


「で? どんな人なんだよ? 美人?」


「うん、ものすごく美人」


「へぇ……どんな感じなんだ?」


「黒髪に雪のように白い肌の美人だよ。雪の降る中に立っていたんだ。見た感じ20代半ばから後半って感じかな?」


「まるで雪女だな。雪の中にいたとかさ」


「雪女なんて、たんなる伝説だよ」


「いいや、そうとも言えない。全国各地にある伝説は、全くのでたらめって訳でもないんだよ。昔から狐に化かされたとかあるだろ? それに関東のこの地域にもそんな話がある……」


 玲士はそういう系の話が好きらしい。僕はこの目で見ないものは信じられない。


「じゃあ、河童や天狗、山姥(やまんば)、いわゆる妖怪とかいると思ってる?」


「まあ、いてもおかしくはないよ」


「でも、彼女は人間だよ」


「何でそう言い切れるんだ?」


「……何となく」


 とは言ったものの、本当は確信は持てない。

 きっと人間だと思いたい。僕はそう思っていた。


 それから1週間ほどして、僕は高校近くの小さな飲食店でバイトを始めることにした。白い壁に赤い屋根の可愛いらしい見た目の飲食店で、チェーン店ではないが和食に洋食何でもある。


 店長と面接をして、今日から初めてのバイトが始まる。内心ドキドキだ。僕は飲食店の裏口から入るとスタッフルームに人影が見えた。


「失礼しまーす」


 黒髪を1つに束ねた女性が後ろを向いて椅子に座っている。僕の声に振り向いたその女性は僕を見ると、優しく微笑んでくれた。


「あ……」


 言葉が消えてしまったのも無理はない。あの時の女性が目の前にいるからだ。


「新しいバイトの子?」


 彼女は椅子から立ち上がり僕に近付いて来ると正面に立ちながら、柔らかく透き通るような声で僕に尋ねてくる。


「……はいっ。僕は近田 一希(ちかだ いつき)です。よろしくお願いします!」


「ふふっ。私は白雪 透子(しらゆき とおこ)です。よろしくね」


 そう言って微笑んだ彼女を見た僕は、今すぐ天に召されてもおかしくないほど、舞い上がってしまった。


――白雪透子さん……名前までも綺麗だ。でも、僕のことは覚えてないみたいだな。


 少しだけがっかりしながら、僕は店長へ挨拶に行く。


「ここに事務室があるから……店長?」

 

 透子さんが声をかけると店長が出てきた。


「ああ、近田くん、よろしくね。白雪さん、色々教えてあげて?」


 店長は背が高く渋い声をしている。


「分かりました」


「近田君は、ウェイターをしてもらうかな? 今人手が足りてなくて」


「はいっ。分かりました」


 店長は僕にそう言って紺色の制服を渡して来る。


「サイズは……Мかな?」


「はい、Мです」




* * *




 僕はウェイターの仕事を他の先輩に教わり、仕事を始めることが出来た。それから数日が経ち、何とかウェイターをこなしていると溢れかえっていた客が引いた。

 ふと厨房の方を見ると透子さんが中で作業をしている。


――素敵だなぁ……。


 そんなことを思いながら透子さんを見てると、後ろから声をかけられる。


「何見てるの?」


「うわっ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ