透子さんの祖母
「おばあちゃんが?」
「うん、そう。ごめんね、ずっと黙っていて」
「いいえ」
「信じられないよね? 顔に出てるよ」
「……ごめんなさい」
「ううん、謝らなくて良いよ。私だって人間ならそう思うよ」
「おばあさんの名前は?」
祖母は突然透子さんに尋ねた。
「え? 雪乃ですけど」
「雪乃? まさか……」
考え込んでしまった祖母に祖父は声をかける。
「春?」
「……昔もしかしたら……会ったことがあるかもしれない」
「え? 知り合い? おばあちゃん?」
「子供の頃。私が実家の庭で雪の中、1人でいる時にだけ、遊びに来る少女がいた。同じ位の歳の子で、透子さんのように色白で……黒髪の可愛い女の子だった。決まって雪の日に来て私以外の人がいる時は来なかった。確か、雪ちゃんって呼んでた……気がする。遠い昔のことなんだけど」
「世間は狭いねぇ」
祖父はのんきにお茶を飲んでいる。自分で入れに行ったらしい。気付くと僕達の分までテーブルに置かれていた。
「歳の差がどうこうの話じゃなくなっちゃったね」
僕は誰にともなくつぶやく。
「白雪さん」
「はい」
「あなたの気持ちが本物なのは分かりました。でも、人間じゃないということは寿命も違うでしょ?」
「そうですね。見た目こそ実年齢より若いですが、祖母は700歳で、母も500歳ですから」
「でしょう? 人間と結婚して大丈夫なの?」
「妖怪と人間の結婚は、人間に負担がかかります。その力が強ければ強いほど。祖母は祖父と結婚して母が産まれましたが、祖父の生命力は底をついてしまい……亡くなりました」
「ほら……」
「ですが、母は力はほぼなく、私自身も人間とさほど変わりません。なので、将来的に一希くんと結婚することになっても、彼に負担はかかりません」
「さほどってことは少しはあるの?」
「寒さに強いとか体が冷たいとかですね。雪の結晶を作ったり彫刻を作れます」
透子さんは手のひらを広げ集中すると、手のひらに雪の結晶の固まりが現れた。結晶達はキラキラと輝きを放っている。
「凄い!」
「どうぞ」
透子さんは僕の手のひらに1つの結晶を乗せる。
「冷たい……本物だ」
「……信じてくれた?」
「はい、疑ってごめんなさい。でも、白雪さんは人間じゃないことに……」
「気になるよね……」
「歳の差なんて吹き飛びました」
「だよね……」
「白雪さん」
「はい」
「一緒にいても一希に負担がかからないなら許します」
「本当ですか?」
「おばあちゃん、本当?」
おばあちゃんは僕に向かって優しい笑顔を向けた。
「ありがとうございます!」
「ありがとう、おばあちゃん!」
こうして透子さんは僕の家族に無事、受け入れてもらえた。
――僕も透子さんの家族に会った方が良いのかな?
ふとそんなことが頭をよぎったけれど、透子さんに後で聞こうと思いながら、僕は透子さんを自宅まで送った。




