初めまして
透子さんは緊張しているようだ。さっきから何度も深呼吸を繰り返している。
「白雪さん、大丈夫ですよ」
「うん、分かってる。大丈夫。大丈夫なんだけど、やっぱり緊張しちゃう」
透子さんはそう言いながら僕に向かってぎこちない笑顔を向ける。
「確かにおばあちゃんはちょっと頑固ですけど、きっと許してもらえます」
「……そうだと良いな」
僕達は玄関の前に立つと一呼吸置いた。そして、ドアノブに手を伸ばしドアを開ける。
「ただいまー!」
「おかえりなさい」
奥の方から祖父母の声が聞こえる。
「お邪魔します」
遠慮がちな透子さんの声が僕の耳に届く。
「上がってください」
「うん」
透子さんは僕に続いて玄関から廊下に上がると、僕と一緒にリビングに向かった。
ドアを開けると祖母が作ってくれた料理が4人分用意されていた。祖母はお客さんが来るからと、焼き魚や煮物を沢山作ってくれた。
「いらっしゃい」
祖母は透子さんに向かって挨拶をする。
「は、初めまして! 白雪透子と申します!」
「どうぞ、座って」
「はい、失礼します」
リビングに置かれたテーブルに4人がけの椅子が配置されていて、祖母は空いてる僕の隣の席に透子さんをうながした。
ほぼ無言で食事を口に運び食べ終えた頃、祖父が僕に声をかけた。
「一希は面食いなのか?」
「え?」
「とても美人さんじゃないか」
「うん。確かに一目惚れしたけど、顔だけじゃないよ」
「そうか?」
「うん」
「白雪さん」
祖母は突然透子さんに声をかける。
「はい」
「一希とは本気なの?」
祖母は真剣な眼差しで透子さんに尋ねる。
「もちろん、真剣です」
「……そう。でも、あなた人間じゃないでしょ?」
「おばあちゃん?!」
「春、何を言い出すんだ?」
「勘違いならごめんなさいね。でも、あなたのまとっているオーラが純粋な人間じゃないように視えたの」
そう言えば祖母は霊感が強い家系に産まれて、霊能力があると昔聞いたことがある気がする。僕自身、そういう類の話に興味がないせいか記憶が曖昧だ。
透子さんも、何故か黙り込んでしまったまま話さない。
――どうしたんだろう? 透子さん。
「白雪さん?」
「あ」
透子さんは顔面蒼白になっている。
「体調でも悪いですか?」
「ううん……そうじゃなくて。その……」
まさか本当に人間じゃないとか言ったりはしないはず……。僕はそう思っていた。
「おっしゃる通りです。私は純粋な人間じゃありません」
「白雪さん?! 本当ですか?」
僕は今耳にした言葉が空耳だと、気のせいだと信じたかった。
「本当です。私の祖母は雪女なんです」




