第五幕 ギャグなんだかシリアスなんだかよくわかりませんが、とりあえずヤバい状況には変わりありませんわ
死越者たるもの、決して戦う運命からは逃れられない!
さあ戦え死越者たちよ!
戦わなけれれば生き残れないぞ!
ナガレ「それ結局戦っても生き残れねー奴じゃねーか!」
俺の名前は、北川ナガレ……
「ぐぇはぎゃあっ!?」
『大人しくしろクソガキが……
共犯者の数と配置を言え……!』
クリスマス・イヴに賑わう街を襲う不届き者を折檻する、蟹座担当の死越者だ。
〈#◎皿◎〉<俺は特撮一般怪人とかそこそこ好きな方なんだが、
例外的に人間関係崩壊させる奴とクリスマス荒らすヤツはわりと嫌いでな……!
時は遡ること日本時間の西暦2025年12月24日16:23分……
中国、アメリカ、イギリス、インド、フランス、カナダ、日本の各主要都市に突如現出した正体不明の不審者・変質者・テロリストの集団は、
不可解な能力を以て各国の軍や警察を圧倒、それぞれ全く異なる目的の為に行動を開始……
人々で賑わう都市を蹂躙し暴虐の限りを尽くしていた。
「ゲェーハハハハハハハハァ!
リア充どもめぇ、爆発しちまえぇぇぇっ!」
「木っ端微塵に砕け散れぇーっ!」
「ぎゃああああっ! たっ、助けてぇぇぇぇ!」
「俺達がっ! 俺達が何をしたぁぁぁぁ!?」
日本は北海道札幌市。
電飾煌めく駅前は、
白いレスラー風マスクで顔を隠した不審な男女数名が
デート中のカップル目掛けて爆弾を投げまくり、瞬く間に悲鳴渦巻く火の海と化す。
「おねータマ! ボクちゃんアレがほしーでチュ!」
「ええ、わかったわコマシャクーレっ♥
ズッコケール、やっておしまい!」
「了解でありますジョレーミ様ァ。
あ、ズコっとな!」
「うわぁぁああっ!?
ボクのがぁっ!?」
「なっ!? う、ウソだろっ!?
物凄い勢いで吸い込まれていくっ!?」
「さぁコマシャクーレ♥ お姉タマが取ってきてあげたよっ♥」
「ウワーイワーイ! ありがとでチュお姉タマぁ!」
「あっ……ううっ……!
うああああああっ! ボクのザビーゼクターとられちゃったあああああ!
ボクのザビーゼクター、返してくれよぉ!
クリスマス会のコントで使うんだよぉっ!」
「おいっ、あんたらふざけるな!
それは俺がうちの息子の為に買ってやったんだぞ!?
断じてそいつが持ってていいものじゃないんだ!」
「うーるちゃいうるちゃいうるちゃーい!
ボクちゃんがほしいといったら
おもちゃでもおかしでもいえでもとちでも
ぜーんぶボクちゃんのものなんだーい!
おまえなんかにゃあげないよーだ! んべーっ!」
「フン、全く庶民の分際でうちの王子様に楯突くとは生意気だねぇ。
スカヂッペス、この庶民どもを教育してやりな!」
「ヴイ! ヴァッガリヤシダァ!
グラエヤ! 石炭バズーカ、ロッテンポテト弾ン!」
「うぎゃああああ!?」
「ぐわあああああ!?」
フランスはヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ジロンド県の都市アルカション。
昭和臭い癪に障る喋りの不審者四人組がクソダセェデザインのロボット兵器を乗り回し、
巨大掃除機やマジックハンド、吸盤付き釣竿等の武装を用いて道行く人々からクリスマスプレゼントを強奪していく。
「お、おおお、お客様ぁ!? 何してるんですか!?
おやめください! ショーケースを破壊されては困りますお客さ――
「じゃあかあしゃあっ!」
「ぐえあああああ!?」
「「「て、店長おおおおおおっ!?」」」
「オドレらパティシエやろがい!
ほんならワシの為にケーキ作っとったらええねん!
ワシゃあこれでも天下一の食通で通ってんねん!
オドレらの作ったもんがちゃんと売りもんになるか味見したらァ!」
「はっ!? な、何言ってんのあんた!?
ケーキ食べたいなら金払いなさ――」
「うっらあああああ!」
「ぐげああああああああ!」
「「ウィルキンス先輩ーっ!?」」
「オドレゴルァァ、それがお客様に対する態度かァ!?
ワシゃあ客やぞ! お客様は神様やァ!
ほんなら神様は平伏し崇め奉らなアカンやろがい!
……ん。概ねウマいが、味にムラあるし価格設定が高すぎるわ!」
「いや、た、高すぎるって……」
「当店は素材や製法に拘っておりますので……」
「恥知らずが、仮にもプロが言い訳すなァ!
なんやオドレら、商売の基礎何もわかってへんのやなァ……
もうええ、こない最低の店なんぞ建っとる価値ないし、
いっそ建物ごと吹き飛ばしたらァ!」
「「グワーッ!?」」
イギリスの首都ロンドンが中枢部スクエア・マイル。
どこからともなく現れた醜く肥え太った大男が、
ケーキ屋を無差別に襲撃しては商品を食い荒らし、難癖をつけては店を次々爆破していく。
「突然だが失礼するぞ店主!」
「あぁいらっしゃいお客さん。なんか珍しい恰好だネ。
今日は何をお求めで? お勧めは日本産の鶏肉だよ!」
「殴り込みだ! 突然押し入っておいてこのような発言をするのも気が引けるが、
クリスマスシーズンに鶏を売るな! というか陸産物を売ってはならぬ!」
「え? 突然何言い出すんだよ。ウチ肉屋だから陸産物売れなかったら商売あがったりなんだけど?」
「勿論それは心得ておる! だがそれでも陸産物を売るのはご法度だ!
この店の商品は全て没収させて頂く! 代わりに倍の量の鮭を贈呈しよう! これを売るといい!
では、去らばだ! よいお年を!」
「いやちょっと待って!? そんな困るよいきなり! うち肉屋だから衛生上鮭なんて売れないってば!
そもそもこの辺年の人あんまり鮭食べないんだって! ちょっとぉぉぉぉぉ!」
「いきなりだけど失礼するわよ店長!」
「あらいらっしゃいお客さん。なんだか変わった格好ね。
今日は何を買いに来たの? お勧めはノルウェー産の鮭だわよ!」
「殴り込みに来させて貰ったわ! 正直心苦しいのだけれど、
クリスマスに鮭なんて売ってはダメよ! いやそれ以前に海産物の取り扱いをやめるべきね!」
「はあ? いきなり何なのよあなた。うちは魚屋だから海産物以外に売るものなんてないわよ?」
「当然それは百も承知よ! けどそれでも海産物の、というか水産物の取り扱いはやめなさい!
この店の商品は全部あたしが貰ってくわ! 代わりに三倍の量の鶏肉をあげるからこれを売りなさい!
じゃあお元気で、メリークリスマス!」
「ちょっと待ってよ!? 困るのよそんなの! うちは代々魚屋だから肉の扱い方なんてわかんないのよ!
てかこの辺最近『魚は痛覚ないから食べても大丈夫』とか謎理論振り翳すタイプのヴィーガン()ばっかりで肉の需要ないんだってばぁぁぁぁぁ!」
中華人民共和国各所。
鮭の化け物率いる集団が肉屋を襲撃しては商品を強奪し代わりに鮭を置いていき、
鶏の化け物率いる集団が魚屋を襲撃しては商品を強奪し代わりに鶏を置いていく、
『鮭ハラスメント&鶏ハラスメント』の被害が相次ぎ、
時折遭遇した二者が周囲の迷惑も省みず乱闘するもんだから各所が大混乱……。
「うわあああ! 大竜巻だぁぁぁ!」
「しかもサメが巻き上げられてるぅぅぅぅ!」
「てかサメ、風に乗りながら人食ってるんだけどぉ!?」
「あとなんか頭が幾つもあったりタコの足が生えてたり
メカだったりゾンビだったりちょくちょく変なサメが飛んでるぅぅぅ!?」
「ア。
ドーモ、人類の皆サン。
サメでーす」
アメリカ合衆国カリフォルニア州。
メキシコ湾で発生した大竜巻は無数の怪物じみたサメを伴い大都市ロサンゼルスへ上陸……
木々や建造物を尽く吹き飛ばし、人畜を食い殺しながら突き進むサメ竜巻の裏には、三叉銛を手にパーカーを羽織った子供らしき影があった。
「ノオオオオオオッ! オレは『閃光のハサウェイ』を見てた筈ッ!
それがどうして『メタルマン』になっちまってんだぁーっ!?」
「いやああああ! 娘と映画『プリキュアオールスターズ』を見てたら画面がいきなり『アーヤと魔女』にぃぃぃ!」
「ぎゃああああ! 『マイティ・ソー』が『ソー 生命の木とアスガルドの神々』になっとるううう!」
「エーシャッキッキッキッキ!
大いに苦しんでおるようだなぁ!
よいぞよいぞ、もっとゴミ映画を強制視聴させられ苦しむがよいわぁ!
さあこの調子でもう一発!
いざ、強制クソムービィィィィム!」
インド中南部テランガーナ州の州都ハイデバラード。
様々な媒体で映画を視聴中の人々を
『見ていた作品の内容が全く異なる別作品、
それも総じて完成度が低く駄作と称される作品のものに変わってしまう』
っつーなんとも意味不明な異変が襲う。
やがてその異変はテランガーナ州全域、更にはインド全域へと拡散していく……。
「ぐわあああああ!」「ぎゃあああああ!」「ぐげええええええっ!」
「ひいっ!? 雪玉で車のボンネットがブッ潰れたぁ!?」
「ウッソだろオイ! ヘラジカ轢き殺せるボルボの最新型だぞ!?」
「てか大雪玉が! 大雪玉がああああああっ!」
「んふふ……試験運用は順調のようね!」
「ああ。滞りなく進んでいる」
「これなら本番の聖戦でも問題ないでしょう」
カナダ東部ニューブランズウィック州はセントジョン。
日本の東北地方程じゃねえにせよ世界有数の豪雪地帯として知られるこの地に現れたのは、
都市にあるどの建物をも余裕で押し潰す巨大な雪塊と、
それを転がして肥大化させ乍ら砲弾みてーな雪玉を無差別に乱射し突き進む
やけに厳つい除雪車の如き謎の機体。
戦車の如く町を蹂躙しながら進むそいつを駆る奴らの目的は……。
〈;●皿●〉<然しこうして見るとギャグなのかシリアスなのか今一よくわかんねーな……
「諸君、この連中をどう思うね?」
「愚問に御座いますなあ。実にふざけた連中だ……!」
≪全くです。このような者どもに生きる価値などありはしない≫
『……中には贖罪の余地のある者もいるようですが、
そのような者はごく一部であると愚考致します』
「全くですぜ。世界有数の先進国に生まれといて
彼氏彼女が居ない程度で現実生活が充実してねぇなどとゴネるとかナメてんのかっつー!」
「斯様な蛮行が許せるものか!
亡きダクロ・ザンタス殿の気高き遺志と、
それを受け継ぐ魔術師ニコラウス殿への著しい冒涜に他ならぬ!
何が王子だ、何が王族だ! あれらなどただの卑しい盗賊に過ぎぬわ!」
【『神たる客とは信仰に値する上客・賓客なり』、私の好きな言葉です。
『客とは総じて無条件に神である』、私の苦手な言葉です。
『神たる客は如何なる暴虐も許される』……この世から根絶すべき思想です】
「ワシはトリもシャケも等しく好物じゃ。日本のテレビドラマも好いておる。
また津久井教生氏こそはかの国が世界に誇る偉大な役者の一人であり、
氏が病に苦しんだ挙句声を喪い役者生命を絶たれてしもうたのはこの上ない悲劇じゃろう。
そして氏が『快盗戦隊VS警察戦隊』にて演じた鮭ハラスメント鮭怪人は、
特撮怪人史、ひいては悪役史に名を遺すべき偉大なるキャラクター。
奴が成し遂げし偉業は、演者たる氏とともに後世迄語り継がれねばならぬ……
然しなればこそ、奴めを貶めるが如き蛮行を許すわけにはいかぬであろう!」
「サメ映画意識した展開ってのは悪くねーが、
よりにもよって『シャークネード』ベースに『トリプルヘッド・ジョーズ』やら『シャークトパス』ネタにしてんのが気に食わねぇ……!
要するにアレ起こしたヤロウにとっちゃ"サメ映画"ってのは
"アサイラムやらが作ってる低予算の支離滅裂なギャグ映画"のことでしかなくて、
『ジョーズ』や『ディープ・ブルー』、『MEG』みてーなのはサメ映画じゃねーつってんだろ……?
なら最低でも八不可思議回はぶっ殺さなきゃいけねぇよなぁ……!」
『……ハァーー……
あのさぁ? ダチを何回もクソ映画視聴に付き合わせた俺が言うとブーメラン臭いけどよ、
クソ映画ってのは自分で選んで、その作品を見るんだって覚悟決めた上で見るもんなんだよ。
断じて他人を大した理由もなく苦しめるために使っていいもんじゃねぇのよ。
そもそもそれ以前に映画見てる途中でいきなり内容が別のに丸ごと切り替わるとか名作駄作問わずただの地獄だしよ……
これ起こした奴はもう見つけ次第即殺していいんじゃねぇか?』
「私は昔セントジョンで暮らしていました。
あそこは確かに雪こそ多いけれどそれも込みで本当に素晴らしい場所だった……
そこをこんな風に荒らす時点で、犯人に生きる価値などありはしません」
事態を重く見た魔界二十三閥族は各々激昂し、早速一連のテロ事件に対抗すべく各組織から選りすぐりの精鋭たちを送り込む決定を下した。
そして急遽結成された十六の混成部隊
――『白金の不死者団』所属の死越者十二体を含む――
はテロリスト集団駆除と被害者の救助を目的に各地の現場へ向かった……
これが大体、30分程前のこと。
先に述べた通り俺もルージュ様やガルゴノーツ団長の推薦で混成部隊の一つに参加させて頂いていて、
テロリスト集団駆除担当として札幌駅周辺に現れたレスラーマスクの不審者どもをブチのめしていた。
〈=皿=〉<そんな感じで冒頭の場面になるわけだな。
『よぉー兄ちゃん、大人しく洗い浚い吐いちまった方が賢いと思うぜぇ?
お前らもう後戻りできねー所まで来ちまってんだ、
処罰は免れねぇにしてもせめて五体満足綺麗な状態で楽に死にてぇだろ?』
「ひっっ……! くっ、ふざけんなぁ!
だーれがテメェなんかの言う事なんか聞くもんかよ!
俺の人生はこれまで不幸のドン底だった!
年齢=彼女居ない歴のままダラダラと高校生になっちまって……
こんな悲しいことが他にあるかぁ!?
ねぇだろっ! 俺は日本一不幸な男子高校生なんだよっ!
だから復讐してやるんだ!
クリスマスなんてクソみてぇなイベントは中止にさせて、
クソ忌々しいリア充どもを
爆破してやるん――『うるせェ』――だあっ!?」
喚き散らすレスラーマスクのバカを、俺は軽く殴って黙らせる。
まあ鼻っ柱は見事に折れたが、命に別状はねぇだろう。
「ぁ、がごぁ……!?」
『おいクソガキぃ、
てめー何やら勘違いしてるようだが、
今この場で主導権握ってんのは完全俺の側だってなァ
流石に理解できてるよな?
てめーの悲しい過去()やら悲惨な生い立ち()なんざ誰も聞いちゃいねぇ。
ただてめーは俺の質問にだけ答えてりゃそれでいいんだ……!』
「いぎっ、ぐぁぁっ……!?」
圧をかけ乍ら奴の右手を押さえつけ、
五本ある指のうち一本に軽く力をかけてやる。
正直こんな奴の指如きへし折るのに大した力なんて要らねぇ、
テコ抜きでも堅焼プリッツ程度のもんだ。
だがこの出会いは敢えて恐怖心を煽るに留めた方が効率的でもあるし、
痛みに発狂して舌噛み切られちゃ本末転倒だからな。
『もう一度質問すっからよ、しっかり答えろよなぁ?
共犯者の数と配置は?
あと序でにてめーらの具体的な目的も教えて貰おうか。
断ったらどうなるか……わかんねーワケねぇよなぁ?』
「ひっ……! い、言うっ!
あんたの、
いえ、貴方様の仰有ることは何でも聞かせて頂きますっ!
な、なのでどうかっ、どうか命だけはっ……!」
『……いいだろう。前向きに検討しといてやる。
で、共犯者の数と配置、あとてめーらの目的は?』
「ぁ、はいっ! 仲間は俺含め全部で56人居ます!
配置は俺のスマホん中に印付きの地図が入っててそれに書いてあります!」
アホガキに言われるまま奴のスマートフォンを確認すると、
確かにあちこちへ印や文字の書き込まれた札幌市北区の地図が保存されていた。
俺は早速その画像を部隊内へ拡散する。
これで奴らの駆除もスムーズに進むだろう。
「目的はリア充の爆破、ですけどっ!
リーダーの語呂下さんはなんか他にも隠してるっぽいです!」
『……"なんか"って具体的には何?
お前そいつの手下なんだから何かしら知らされてんじゃねーの?』
「いえそれがぁ! 語呂下さんは顔も声もでかい割に
そういうとこ秘密主義で何も教えてくれないんです!
そもそも俺らXで知り合った仲だからお互いについて殆ど何も知らないんすよ!」
なんてこったよ。
あの腐れ気違いガキ中年が、ろくでもねぇ真似しやがって。
元々無害な絵描きや芸能人を無作為に有害認定し理不尽に痛め付ける一方、
政府の無能税金食い虫や売国奴のゴミども、朝鮮系痴漢軍団にヤクの売人といった害悪どもを甘やかすネット社会の癌細胞なのは周知の事実だったが、
都市一つ壊滅させ数多の死人を出そうとしてるテロリストを野放しにした挙げ句に実際被害拡大の片棒担ぐとはいよいよ救えねぇ。
(ほんと死ねよマスかきイーロンがよぉ……)
『……』
「本当なんです信じて下さい!」
『……別に信じねぇとは言ってねぇ。
ただお前の地図にその語呂下だかゲロ元だかいうヤローの持ち場が書いてねぇってだけだよ。
なんだ、親分の癖に仕事は子分に丸投げでてめーは呑気にクリぼっちかぁ?
ろくでもねぇなてめーらの親分様はよ』
「ぁっ! いえいえ、それに関してはちょっと事情が異なっててですね!?
語呂下さんも勿論指揮官としてこの作戦には参加してて、札幌市北区内にはいらっしゃるんですが、
身の安全を確保するために複数の隠れ家を転々としておられるんですよ!」
『成る程、んでその隠れ家ってのの所在も当人しか知らねぇ、と……』
面倒なヤロウだ。
『華の天羽組 天京戦争編』の日下みてぇな真似しやがって。
(こんなクソ寒いし雪多いから
大嶽のオッサンや銀田総帥ほど捨て身になれとは言わねぇけど、
せめて城ケ崎か我妻くらいには表出ろよめんどくせぇ……)
最悪奴を放置して実働部隊のみを叩くのもアリだが、
とは言えヤツがこの集団を結成・指揮してる以上放置すればまた新たな被害が出るだろう。
(カップル向けのイベントを狙うなら次は聖バレンタインデイ辺りか。
今の時代なら人員確保は比較的簡単だし仮に単独犯でもやりようによっちゃ何十何百の被害者も出せる……!)
よって、何としてでも語呂下は殺すのがマストだ。
ってワケで俺は取り押さえたアホガキに命令する。
『よぉガキ、てめー生き残りてぇよな?』
「え? あ、はいっ! 生き残りたいですっ!
生き残るためなら何でもさせて頂きますっ!」
『よく言った。
じゃあてめー、今から語呂下を呼び出せ』
「へぁっ!? そ、それは無理です!
語呂下さんはデブの割に寒さが苦手で、最低限しか外に出ないんですよ!」
『じゃあ奴の隠れ家に案内させろ……それならできるよな?』
「いえっ! お言葉ですがそれも難しいんじゃないですかねっ!
つまていうのも語呂下さんって基本的にかなりマイペースな方で!
基本的によっぽど緊急でもなきゃこっちからの連絡はNG!
かつ語呂下さんからの電話には3コール以内に出なきゃいけないって決まりがあるんです!」
『クソだな語呂下』
「加えて仮にこっちから連絡したとして、その内容が語呂下さん的にくだらなかったり
語呂下さんをムカつかせちゃったりするとその時点でかけた奴はあの人に殺されちゃうんですよ!」
聞く所に依るとこいつらのマスクには特殊な仕掛けがされていて、
外せない上にスイッチ一つで装着者の脳幹を冷却し即死させちまうかなりおっかねぇ代物だ。
『そうか……ならつまり、
奴が思わず嬉しくなりまくって
呼び出しに応じずにいられなくなっちまうような、
そんな用事を捏造すりゃ万事解決なワケだ』
「そっ! その通りですっ!
けど語呂下さんをそんな上手い具合にノせられる話があるのかってのが、
一番の懸念点ですけどもっ!」
『……それに関しちゃ心配ねぇ。
準備ならもう、できてるからな』
恐らくこっちはこれで問題ねぇハズだ……
他ん現場も心配になってきたし、
とっとと終わらせて増援に向かうとするか。
次回、世界七か国同時多発クリスマステロの裏に潜む陰謀が明らかに!