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二十 話 ふた

「お前さん方の事情はさて置いといて……どんな魔法を身につけたいんじゃ?」


「僕は……純粋に力を増す魔法……」


「可愛げ無いのう……却下じゃ」


「え……」


「力なんて普通に鍛えれば良いじゃない!」


「確かに……」


「お主名前は?」


「そういうプライベートなことは……」


「名乗らんと魔法を授けてやらんぞ」


 う〜ん…、魔女に名乗ったくらいで家庭が崩壊するわけでも無いと思うし大丈夫か。


「天照椛です」


「ほぇ〜……どのような字で書くのじゃ?」


「天を照らす……名前は木へんに花です」


「なるほどのぅ……じゃあお主は光の魔法にしようかよう」


「ど……どうしてですか?」


「お前には明るさが足りん。復讐に取り憑かれたまま大人になるとろくなことにならん」


「はぁ……」


適当な魔女だな……


「光の魔法も使い方を研究すれば十分協力じゃ……しかし使いすぎると己の目が疲れやすくなると思うから気を付けるのじゃぞ」


「はい……」


「おっと……お主に大事なことを伝えよう」


「大事なことですか……?」


「魔法を使えるようになった者には必ず代償がある。それを頭に置いておくのじゃ」


「代償って……椛は将来大丈夫なんですか!?」


「使いすぎなければ大丈夫じゃ……怖いなら止めても良いのじゃぞ……?」


「……分かりました。光の魔法で良いです。よろしくお願いします」


「ちなみに……一人一種類の魔法しか使えないからまたわしに会いに来ても無駄じゃぞ」


「分かりました」


そして数分後、魔女が呪文を唱え終えた時、僕には光の魔法が使える様になった。


「ありがとうございました」


「どうもじゃ」


「クエーー!」


金色に光る鳥が鳴き、僕の目の前に降り立った。


「椛危ない!」


金色の鳥は頭で僕の頬を優しくスリスリ撫でた。


「光るもの同士惹かれあったか……さっきまでわしのことを厄介者扱いしていたくせにのぅ」


「う〜ん……椛に懐いてる様だけどペットにするのは無理ね……」


「その鳥は武器じゃ。変化すれば家においておけると思うが……騒ぎにはなるのぅ」


「……なら僕がたまにここに来る。ここで特訓して強くなる」


「椛……! それは駄目よ……!」


「止めても無駄じゃ……その子は止めても勝手に行くじゃろう。それにボスと仲良くなった子供なら他のモンスターも手は出すまい!多分じゃが!」


「ごめんなさい……お母さん……」


「椛……」


お母さんは悲しみの目で僕を見ている……そりゃあそうか……


「ここで修行を開始するならわしが別の人に魔法を授け終わってからにしてほしいのう」


「とにかく今日はもう帰ろう椛」


「……分かったよお母さん」


「じゃあのう」



その後、魔力を宿した僕は母と共にダンジョンに帰った。それから数週間後、僕は一人で金色の鳥がいる部屋に入った。


「とびら重……」


「クエーー!!」


金色の鳥が出迎えてくれた。


「特訓するから……僕に向かって炎吐いてくれない……?」


「クエ?」


流石に日本語は分からないか……


「じゃあ僕を背中に乗せて……」


「クェ〜……」


反応した?もしかして声が小さかった……?


「炎を吐いて!!」


僕が大きな声でそう言うと金色の鳥は炎を吐いた。吐かれた炎は金色で、僕の横スレスレを通った。


「危なかった……」


今のスレスレ……狙ってやっとしたら凄いな……炎の色も金色なんだな……


「僕を背中に乗せてくれない?」


僕はいつもの声量より少し大きめの声で金色の鳥に向かってそう言うと、金色の鳥は僕に背中を向けた。


「乗せてくれるの?」


「クエー!」


僕は金色の鳥の背中に乗った。


「ありがとう……えっと……名前は?」


「クエエ?」


「……無さそうだからリュウで良い?」


「クエー!」


「機嫌良さそう!お前の名前はリュウだ!」


この日から僕は金色の鳥に乗る訓練と、炎に慣れる訓練をする様になった。



数ヶ月後、僕とリュウが特訓する部屋に探検服を着ている人が複数入って来た。この時、僕は金色の鳥に乗って空を飛んでいた。


「隊長!ボスです!」


「……もしかしてダンジョン調査隊が来た!?」


降りて話さないと……!


「隊長……! モンスターの上に子供が乗っています!」


「子供……?」


あいつは……! あの時の……!!


「姿が子供であろうがモンスターには変わり無い。殺せ」


この頃の僕はその場にいるダンジョン調査隊の隊長のその言葉を聞くと我を忘れ、ダンジョン調査隊に向かって攻撃した。しかし数分後、空中でリュウは呆気なくやられて僕はリュウと共に10mの高さから地面に落下した。


「次はこの子供だな」


落ちた時のダメージで全身が痛い……


「隊長! この子供……もしかすると人間かもしれません……!」


誰か……隊員のおじさんが……


「橋本……隊長である俺に指図するのか」


「すみません隊長……!ですが子供がダンジョンに遊びに来た可能性もあります! この子はモンスターではない気がします!」


「……断ると言ったら?」


「隊長と戦います」


「良いだろう。ただしこの子供を病院に連れて人間でないと分かれば、お前は責任を取って隊を抜けてもらう」


「リュ……リュウは……金色の……鳥は……」


僕はこの時、完全に気を失う前にリュウを殺して欲しくないという想いを伝えようとしていたが、ほとんど何も伝えられなかった。


「おい!この子供喋ったぞ!」


「やはり人間か!?」


それがこの日聞いたダンジョン調査隊の最後の言葉だった。



ある時、僕は目を覚ました。場所は病院で両親が見送りに来ていた。


「椛!起きたのね!」


嬉しそうにするお母さんと、怒った顔をしているお父さんがいた。


「椛……無事で良かったがもう二度とダンジョンに行くな」


「ごめんなさい……」


「でもダンジョン調査隊の方が言っていたのだけど……椛が遊んでいたダンジョンはしばらく調査しないって約束してくれたけど……」


「それでも駄目だ……!」


「ごめんなさいお父さん……ですがまた僕はダンジョンに行きます。仇を討つにはまだまだ弱いので」


「ということはまさか椛……法灯村 東二と戦ったのか!」


僕は父からの質問に頷いた。



そして現在、配信を一旦停止し、リュウに乗って移動しながら僕はある程度の過去を振り返った。


小二の僕をまとめると……前の両親は姫様のお父様に殺され、恨んだ僕は光の魔法を覚えて出会ったリュウと特訓を重ねた……って感じ?


そして……姫様のお父様率いるダンジョン調査隊に挑むもあっさり敗北……モンスターと間違われて殺されそうになった所を橋本さんに救われた。


それから僕が宝箱を開けて記憶喪失になる日まで……リュウと特訓し続けた……


配信を始めたのは有名になり、法灯村 東二のことを全国に広める為だったな……


あっそういえば……魔女が一人一つしか魔法を使えないって言われたけど……結局記憶喪失の魔法を使う人って誰なんだ……?


その答えは……まだ思い出せない前の両親を亡くした頃の記憶に隠されてる可能性が高いな……


「もしかして……!」


両親が死んだ記憶が辛すぎてふたをしてしまっているのかもしれない……! だから解除の杖に触れても全部思い出せない部分があるのか!!


「このふたを取るにはどうしたら……」


僕は過去のことを探っていると、すぐそこの広い部屋にダンジョンのボスが待ち構えていることに気が付いた。


「とにかく……過去を振り返るのは一旦止めよう」


「おぉ!戻って来たと言うことは俺と戦う為の武器は見つかったってことか!」


「僕の武器ならあったけどね。小二から乗っていたリュウが」


「ならさっさと初めてようぜ!」


「その前に……撮影の為にスマホ置いていい?」


「……貴重品はさっさと置けよ」


僕を乗せてるリュウは地面に降り立ち、僕はリュウから降りた。


「ついでに……お前の負けざまを配信していい?」


「ふはははは!やってみろよ! 負けざまを晒すのはお前になるだろうがな!」


僕はスマホの配信サイトを開き、配信を開始した。


≮:··Ο∫

来た


ω%%ω

おっ!


∠ΖΨ!∋$∃

配信再開した!!


©‥∞∞∑№∑∨∑№

あれ?ボス戦!?


「あぁ……今から僕とリュウでボスを倒す」


∈⑸χ↘⊇≧∧

いやいや!


⁇∏√⊆Υ↙∣

無謀だって!!


Ι!¿¿©7∠77∠

おいー!


「うるさ……」


僕はスマホをタッチして、配信を終わらせた。


「……行くぞリュウ」


僕はリュウに乗り込み、僕を乗せたリュウは飛び上がった。

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