新妻(?)
夏休み。両親の居ない僕は特に何かをする訳でもなく、普通の休日の様な日々を過ごしていた。
「………」
今日も特に何もない。1人、部屋でのんびり音楽を流しながら課題を消化していた。
「(そろそろか)」
時計を見ると正午をさしていて、ガチャリと勝手に電子ロックが解除される音が聞こえる。
が、気にせず課題を続ける。
「邪魔するわ」
「ああ」
僕のボディーガードであり剣の師匠、深海だ。手には深皿に盛り付けられた美味しそうなカツカレーが。
「500円になります」
「金取るのか」
「冗談よ」
勉強机から離れ、ソファに座ると目の前に差し出される。手を合わせ、早速頂く。
相変わらず美味い。夏休みに入ってから何故か深海が毎食僕の食事を作ってくれる様になった。その上勝手に部屋に上がり込んでは洗濯物を畳み、部屋の掃除をしていく。
もはや護衛というより母親だ。
「(にしても……)」
この前のことを思い出す。
『私は、そんな貴方が好きなのよ』
その言葉の通りの意味なのだろうが、思い出してはなんとも言えない感情に頭が埋め尽くされる。
告白、とも受け取れそうだし、しかしただ単に気安く話せる程度の割と気に入ってる部類ってだけかもしれないし。
「そういえば、智恵から連絡は来たかしら」
「ああ。2学期に向けて皆んなと一緒にお屋敷で合宿したいとか、なんとか」
「そう、それ」
楽しそうだし僕は別に構わないのだが、深海の都合がある。余計に遠出すると深海の負担にならないだろうか、と少し返答に困っていた所だ。
「OKしとくわよ。どうせ貴方暇でしょ」
「あ、うん………え?」
「何?何か用事でもあった?」
「ああ、いや、暇だけど」
「なら良いわ」
ポチポチと深海が返信すると直ぐに着信音が鳴る。多分燕翔寺から返事が来たのだろう。
「三日後だそうよ。荷造り、早めにね」
「深海は?」
「勿論着いていくけれど」
「そ、そうか」
「………?」
深海は不思議そうに首を傾げる。まあ、深海が大丈夫なら良いか。
「ちなみに予定では何日間なんだ?」
「1週間ね。食事は出してくれるそうよ」
「1週間か……」
割と長い。
「着替えはあるのかしら?」
「えっと……」
普段外出しても日帰りだし、そもそも外出をあまりしないせいで下着はともかく私服なんか2着しか無い。
「無いなら買いに行くわよ」
「やけに乗り気だな……?」
思わず出た言葉に深海の目が細ばる。
「ジャージ姿で燕翔寺の屋敷に上がるつもりなら無理にとは言わないけれど」
「行きます!!!」




