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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
月夜の晩餐
92/108

月下の獣









 隠れ家はもうバレた。なら、もうこちらから打って出る他は無い。それに今なら一時的とはいえ聖杯の機能不全が治っている。


「深海!」

「ええ」


 最初の眷属の死体がエレミュートとなって霧散したのを狼煙のようにして次々と眷属が姿を現す。その時


「ふっ」


 燕翔寺の部屋から白い影が飛び出す。


「ここは私にお任せを」


 影は眷属の1人を捕らえ壁に叩きつける。黒をベースにところどころに白い装飾。そして特徴的な頭の金と黒のグラデーション。


 壁にめり込んだ眷属の喉元にはポッカリと穴が空いていて、右袖からは鋭利な針のようなものが伸びている。


 自体をあまり飲み込めないが、多分このメイドさん、ただのメイドさんじゃ無いことだけは分かった。


「ええ、任せる。行くわよ、桐堂」

「あ、ああ」


 深海に手を引かれ、避難通路の階段へと向かう。振り返るとメイドさんはタバコを吸いながらこっちに手を振っていた。


 


________________________________________________






 屋上に辿り着くと、そこには紳士のような格好をした長身の男が。


「お前が黒幕か」

「黒幕かと言われたら違うが、この襲撃の首謀者という意味でなら確かに黒幕だな」

「桐堂、話を聞くのはコイツの手足を引きちぎってからで良いわ」


 問答無用で小夜時雨を抜く深海に、男は笑うと血の滴る右手をこちらにかざす。滴る血は徐々に形を成し、それは美しい装飾が施された剣となる。


「血の気の多いお嬢さんだ」


 互いの刃が交差する。


「だが、君とのダンスは後の楽しみにとっておきたい」

「レディの誘いを断るだなんて、最低ね」


 鍔迫り合いの最中に深海の拳が男の脇腹を襲う。が、さほど効いていないのか平然と直立したまま。しかし執拗に殴打を続ける深海に痺れを切らしたのかついにその腕を掴む。


「良い加減にしてもらおうか」

「なんだ、ちゃんと効いてるじゃない」

「ふんっ!」


 男は深海の腕を掴んだまま振り回し、外壁や床に叩きつけ、最後に投げ飛ばす。


 そして、空中に投げ出された深海に無数の血の槍が放たれる。


 流石に深海でも分が悪いか。そう思った矢先、その槍の上を駆け抜け、跳躍し、男の顔面に飛び膝蹴りを浴びせる。


「ぐぁはっ!?」


 勢いが乗ったその一撃を受け、男の体勢が崩れる。その隙に深海は急旋回し、毒の槍を放つが、再び現れた血の剣がそれを弾き返す。


「私を、怒らせたな……!」

「ハッ。とっくの前にキレてたくせに、今キレた風に言ってんなよ」


 再び激突する2人。獣と獣、どちらが狩り、狩られる側かを決める、そんな戦いが目の前で繰り広げられていた。








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