血吸いの羽虫
「…………」
近くで爆発音が聞こえる。どうやら桐堂達は見つかってしまったらしい。
「こんな状況で他人の心配ですか」
「雑魚に用は無いから」
「舐められたものです」
足元や天井に穴のようなものが出現したかと思いきやそこから鎖が飛び出す。
その鎖はまるで血のように赤く、鉄臭い匂いを漂わせる。
「くどい」
槍を放つと相手は射出した鎖を引き戻し、それで盾を作る。槍はそれを貫通するが、それ以上先に進むことはなく数秒後周りを溶かしながら消えてなくなる。
「チッ」
吸血鬼だろうとは思っていたが、この出力、やはり学生の血を吸ったのだろう。コイツら以外の部隊は侵入したその時に私が殺した。補給を望めない以上それ以外は無い。
ただ味方がいないのはこちらも同じ。なら
「っ、ふぅーーーーっ」
「うおっ!?」
死水の毒霧を相手に吹きかける。そして、その混乱に乗じ
「っ、こんなもの!………かはっ」
投げつけた小夜時雨が心臓部に命中。それに掌底を打ち込みさらに押し込む。
「吸血鬼って心臓を杭で打たれると死ぬらしいわね?」
「き、さまぁ………!」
「あら……?まだ元気ね」
足で抑えながら小夜時雨を引き抜く。一応これもただの刀じゃ無いし、いけると思ったのだけど。
「仕方ない」
一度鞘に納め、抜刀。
「おろし六連」
解き放たれた刃が即座に目の前の男を7つの肉塊に変える。
恐らく先の爆発音で気づいたのは傘草達だけじゃ無い。敵もまた以上事態に気づいたはず。
「さて、急がないと……」
柵に足をかけ、一つ上の階へ飛び移ると桐堂と鍔迫り合いを繰り広げる私の姿が。
「チッ」
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「くっ……!」
燕翔寺の炎で全身を焼かれて尚、このパワー。やはり僕では勝ち目はないか。メラノさんの援護もあってギリギリ渡り合えているが、それも限界に近い。
「くそぉっ……!」
そのまま押し切られる。そのとき、白い手が相手の後ろから伸びてきて、その頭を包むと
ゴキィッ
次の瞬間鈍い音と共にやつの頭が180度、上下真反対に回ってしまう。
「うぉぁぁぁ!?」
咄嗟に飛び退くと崩れ落ちるやつの後ろにはもう1人、深海が立っていて
「死ねよクソ虫が」
そう吐き捨てると地面に落下するまもなくその顔面を蹴り上げ、あたりに血が飛び散る。
「ふ、深海……?」
「待たせたわね。怪我はない?」
そう言って深海は落ちていた小夜時雨とカフェオレを拾い、カフェオレの方を投げ渡す。
「なあ、深海。コイツらは一体……?」
「吸血鬼、と言いたいところだけど少し違うわ」
そう言って深海は倒れ伏す偽物の顔を掴むと皮を剥ぐ様に引っ張る。すると、なにやら布のようなものが。
「これって……」
「ええ、メラノが襲われた時に拾ったものと同じね」
確かアレは深海が対策部の研究機関の方に調べるように言っておいたとか
「これ自体はただの布だけれど、付着していたものに特殊なものが備わっていた」
燕翔寺の炎でほとんどが燃えてしまったが、それには反射材と思われるものがあったと言う。
「(けど……)」
燃えた後も擬態が続いていたのはどう言うことなのだろうか。その疑問に応えるように深海は僕の頬をペチペチと叩いてみたり、前髪を触ったり目の前で手を振る。すると
「うおっ」
突然目が覚めたように景色がガラリと変わる。いや、変わったのは目の前で横たわっている人物だけだが。
「っ、なんだ……?コイツ……」
「虫、ね」
深海の言う通り、まるで虫、それも巨大な蚊のような生き物が横たわっていた。
「聖杯が上手く機能しないように細工されていたみたいね」
ふと気になって時計を見ると1時間ほど経ったようで9時を指していた。
「(いや、待て)」
数字の前にAMとついている。午後8時だと思っていたのは午前8時だったのか。
「深海、これってまさか」
「ええ、結界の中よ。どうりで増援が来ないわけだわ」
侵入する際に深海に迷彩を看破されたのを踏まえ、今度は作戦より確実なものとするべく、ここら一体を全て結界に閉じ込めたのだ。結界の中なら実際に見ているものとは違うものが見えてしまっても不思議ではない。
メラノさんの結界もそうだ。本来学園に暖炉なんて無いし、紙の本もあんなに沢山は無い。
「コイツらはおそらく眷属。吸血鬼では無いけれど、結界を張っている吸血鬼が何処かにいるはずよ」




