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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
月夜の晩餐
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打ち上げ花火






 何不自由ない生活、しかし


「…………」

 

 沈黙が続く。最初は女装に対して多少抵抗がありつつも修学旅行みたいでなんだかんだ楽しかったのだが、1週間も経てば変わり映えのない生活。


 その上、今にも誰かが襲われているかもしれない。そんな中呑気にこの生活を続けろと。罪悪感、焦燥感に苛まれ頭がおかしくなりそうになる。


「気持ちはわかるけれど、今は抑えて」

「だが……!」


 結局対策部のメンバーは深海と先生、そして姿のない来てるかどうかも分からないもう1人のみ。


「それについては本当に申し訳ないわ……」


 深海も内心思う様にいかない現状に苛立っているのか頭を掻き回す。


「飲み物買ってくるわ。何が良いかしら」

「そうだな……じゃあ、カフェオレで」


 深海がよく飲んでるのを思い出し注文すると、深海は少しだけ笑って「任せて」とだけ言って黒いジャケットを羽織ると部屋から出ていく。


「ふぅーっ」


 ため息をつく。そろそろ何か解決の糸口を掴めれば良いのだが。そんな時


「廻影くん、最初の被害者がやっと目覚めたみたい」

「本当ですか!?」


 メラノさんが端末の画面を見せてくれる。そこには医務室のような場所で治療を受けている女子生徒の姿が。


 今は事情聴取を受けているようで、質問に答える形で会話が続けられている。


 少し音が遠かったため、完全ではないがいくつか聞き取れたことがある。相手は初め知り合いと同じ姿と声をしていたと、そして最後は霧のように消えてしまった、と。


「擬態するのか……」


 そうなると、かなりマズい。今この場に居ない人物が1人いる。深海だ。


 もし深海が戻ってきたとして本物か偽物かがわからない。

 

 急いで深海に通話をかけるが繋がらない。それに飲み物買って戻ってくるにはやたら時間が長い。もしかしたら襲撃者と遭遇してしまったかもしれない。


「クソっ!」


 最悪だ。深海以外に奴らと対抗できる面子はここに居ない。なのに深海が戻ってきてもそれを深海だと信じることができない。


 その時、コンコンッとドアを叩く音が。燕翔寺が様子を見に行こうとして、それを咄嗟に止める。


「(僕がいく)」


 小声で囁く僕に燕翔寺は頷くとジャキッとレッセンを展開し、構える。


「開けて」


 聞こえてきたのは深海の声。覗き穴を覗いてもそこにはよく知った少女の姿。だが


「(何かおかしい)」


 その違和感に気づいたのは深海との最後の会話を思い出してからだ。そもそも深海は外に何をしに行ったか。


「(手ぶら……つまりコイツ……!)」


 敵だ。燕翔寺にメラノさんを呼ぶように伝え、僕もロッカを構える。


「(って、開いてるじゃないか!!!)」


 鍵が閉まってない事に気づき慌てて閉める。そういえば何処かで聞いたことがある。吸血鬼は招かれないと家に上がることができないと言う。


 魔除けが原因だったり建物を建てる前に行うまじないがそうさせると。


「(今更吸血鬼ごっこかよ……!)」


 現在時刻は午後8時。扉と睨めっこしているとメラノさんの人形がゾロゾロとやってきて何やら糸をいじっている。


「(蜘蛛の巣……?)」


 思わずそんなことを連想してしまう。


 そうこうしていると糸で作られた網に何やら球体のような物体を取り付けていく。それは何処か見覚えが


「(まさか!)」

「入ってきて良いよ!」


 メラノさんの声に応えるように勝手に鍵が解錠され、扉が開く。そして


「っ、うおっ……!?」


 足元に配置された一本に引っかかり、倒れるように前方の網にかかる。すかさず奥から燕翔寺が出てきて


「吹き飛んでくださいまし!」

「しまっ……」


 夜空に少し早めの花火が上がった。














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