宣戦布告
スッと深海は僕と矢那瀬先輩の間に挟まる様に前に出る。
「……どうしたんだ?」
「………」
声をかけるも誰からも返事は返ってこない。2人が睨み合い、ただ時間だけが過ぎていく。
「そんなに気を張らないで。あたし、別に御子を恨んでるわけでも時花に何かあるわけでも無いから」
「なら何故桐堂にその目を向けた?」
何の話か良く理解できなかったが、深海の質問に矢那瀬先輩はニコリと笑う。
「さっきその子に言った通りだよ。強そうな新入生がいるから様子を見にきただけってさ」
底が見えない。いくら腕が立つからと言って、ただの学生が出していい気迫ではない。
固唾を飲み、思わず後退りすると矢那瀬先輩の後ろからまた1人、知らない顔が。
「絵留。帰ってこないと思ったらどこで道草食ってんのよ」
「両葉ちゃん!」
長身で僕より身長が高い。それに、見ただけでわかる。
この人も強い。
「で、誰?コイツら」
「今年のライバル候補だよ〜。みんなそれなりに強そうなんだ」
特に白い子はね、と深海を見据えながら付け加える。
「(この人、どこまで知っているんだ?)」
確かに深海の地毛は白い。だが死水の生成が安定してきた今ではもうほとんどが黒に塗り替えられている。
「チッ」
不快そうに髪に手を添える深海。しかし矢那瀬先輩と違いもう1人の先輩はあまり興味が無い様で
「あっそ」
とだけ言って矢那瀬先輩の襟を掴むとズルズル引き摺りながら僕達に背を向け歩き出す。
が、数歩歩いたところでぴたりと足を止める。
「アンタ達が何処の誰かしらねぇけど、優勝するのは今年もウチらだ」
最後にフンッと鼻を鳴らすとまた歩き出す。
「あっ、ちょっ、待って両葉ちゃん!きょ、今日はごめんね!廻影くんと、瑠花ちゃん!またどっかで会おうね!」
あれが前年度王者とその相棒、と言ったところか。
「………貴方もあれくらい強くなったら上出来かしらね」
「そうだな」
「ま、無事今回の試験を通過できればの話だけれど」
「えっと……今更だけどそんなに難しいのか?」
「そりゃそうでしょ」
名前こそ狩人だが、その実、フォリンクリと戦うための兵士だ。必然的に命の危険と隣り合わせの現場、送り出せるのは生き残れる者だけ。
それに、だ。聖杯が無くとも僕より強いやつはいくらでもいるし、そんな凄い人達ですら未だフォリンクリからこの星を取り返せていない。
いずれ世界を救うともなるならそれ相応の試練が待ってるわけか。
「深海……」
「分かってるわ。あのバカは私が抑える」
深海や大江山は普通の学生では無い以上ある程度自由に行動できるかもしれないが、僕は違う。
ただでさえ厳しい試験に妨害なんか入られたらたまらない。だが、いずれは越えなければならない相手だ。
「今は確実に力をつける事。そのことだけに集中だな」
矢那瀬先輩は僕達をライバルと言った。知り合って少ししか経ってないが、その期待にも応えたい。
「やってやるさ」




