鷹の目
深海と燕翔寺がシュミレータを起動して数分、中々帰ってこない2人がちょっとだけ心配でモニターを覗く。
そこには
「もっとよ、もっと。誰よりも速く、鋭く、その翼を羽ばたかせて見せなさい!」
「くっ……!」
やたらテンションの高い深海とそれに気押され防戦一方の燕翔寺が。
「………深海ってこんなに戦闘狂だったっけ?」
しかも握っているのはシオンではない。アレは僕が先ほど使っていた……
「あれ?」
ふと気になって懐を見るとそこにあるはずのゼロが無い。
「(おいおい)」
深海も僕に対してだいぶ遠慮が無くなってきた。それにあのゼロ、僕が使っていた時より遥かに刀身が長い。
アレじゃナイフとは言えない。まるで直刀だ。
「手加減の中でも割とレベルが高い方ってことか」
深海の本気を少しでも引き出させている燕翔寺に少し妬いてしまう。
「僕も自主練でもするか」
ある程度スペースがあれば何とでもなるだろう。辺りを見渡す。特段邪魔になる様な物も、通行人も居ない。あるのはちょっと大きめの布袋。
「よし……いや待て」
なんだちょっと大きめの布袋って。
近寄って見ると人がちょうど1人分入りそうな大きさ。
「てか寝袋じゃん」
汚いものを扱うかの様に足で転がすとぽっかり空いた穴から人の顔が覗いていた。
「嘘だろ……」
思わず頭を抱える。この人、寝てる。
「(気を失ってる可能性は……いや、無いな。気持ちよさそうにグゥグゥいびきをかいている)」
「ぐぅぁ〜………」
「…………」
見たところうちの学生の様だ。近くに学生証が落ちていた。拾って見るとやっぱり同じ顔。カラーからしておそらく3年生。
「名前は……矢那瀬先輩、か」
一応放課後ではあるんだが、何でこんなところで寝てるんだか。
「能力者なのか」
シークレットモードが施されており、何の能力なのかは分からないが、それよりこの名前の横の王冠の様なマークは何だ?
僕はもちろん、深海や燕翔寺にも無かったはずだ。
「あー、それー?なんか前年度の学園祭で優勝した時から付いてるんだよねー」
「優勝者なのか……凄い」
「それほどでもぉ〜?」
「ん?」
見下ろすと寝袋の人物が目を閉じたまま笑顔でこっちを見上げていた。
「うぉぁっ!?」
「そんなにびっくりしなくても……」
モゾモゾしながら寝袋から出てくる。やはり女子生徒だった。パッと見かなり華奢な印象を受けるが、この人が前年度の優勝者。
毎年この学園では個々の実力を発揮する場として学園祭が開催される。僕達狩猟科はそれこそ学生同士本気で戦う対人競技やホログラムを使った点取り合戦で競い合う。
その前年度王者。噂で小耳に挟んだ事がある。
ホーク・アイ、狙った標的は必ず仕留めるスナイパー。
「で、そんな凄い人が何でこんなところに?」
「んー?いやぁね、期待の新入生がいるって聞いて偵察に。いつの間にか寝ちゃってたけど」
テヘ、と言いながらその目を覗かせる。
それは、ふんわりした言葉遣いとはあまりにもかけ離れた物だった。




