未来を担う者
「申し訳ございません桐堂様!私……!」
「いや、気にしないでくれ」
暫くして2人が戻ってきた。本を閉じ、迎えに行くと智恵が桐堂に必死に頭を下げていた。
「……?何かあったの?」
「ああいや、なんでも「なんでもなくありません!」」
「えっと……とりあえず、落ち着いて?」
珍しく深海が困惑していた。
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「とりあえず話は分かったわ」
どうやら燕翔寺の能力、蒼炎が味方ごと焼き尽くしてしまう、と。仲がいい割に桐堂がペアを組もうとした時、気乗りしない様子だったのはそういうことだったか。
「ちなみにどう言うフォーメーションだったのかしら?」
「僕が前に出て燕翔寺が後方支援だ。ペアを組んだ時は毎回火力で援護射撃していたらしいからな」
彼女の能力は確かに強力だ。おそらく体内に宿したエレミュートも亜人の中でもトップクラスの粒子量を誇るヴァンプであるメラノとタメを張るレベル。
その圧倒的な出力を生かした火力、殲滅力はもはや災害と言っても過言ではない。
「(そんな恵まれた能力を使わないのは勿体無い。と、今までのペアは思ってたわけね)」
その結果、味方を巻き込み全てを焼き尽くす死の鳥になっていたと。
よくよく考えれば妙な話だ。彼女は飛燕グループの令嬢。
気に入られれば取り入る機会が得られる可能性が高い。そうで無くても彼女の様な性格は男女問わず好かれるタイプだ。
そんな彼女が桐堂に声をかけられるまで誰にも誘われていなかった。
「(でも、私は彼女の良さは他にもあると思うのだけど)」
手合わせしたからわかる。強化されていたとはいえあの大江山とも打ち合えるパワーとスピード。
定期的に炎を垂れ流すだけの固定砲台として使うには勿体無い。桐堂が遠近中のオールラウンダーなら、智恵は速く、鋭く、極限まで研ぎ澄ました高速アタッカー。
そして裏方にメラノを合わせる。
「悪くない」
自分が目にかけた3人がこの世界の行末を担っていく。想像するだけで心が躍る。
『そこに君は居なくて良いのかい?』
「私が?馬鹿言いなさい」
私が彼らと共に歩めるはずがない。私を含め、全てのフォリンクリは死滅しなければならない。
けど
『これからも頼りにしてる』
桐堂の言葉が頭をよぎる。違う、私はあくまで
「深海?」
桐堂に声をかけられハッとする。いけない、最近気が緩んでいる気がする。しっかりしなさい、深海瑠花。
「………何でもない、気にしないで。それよりも智恵、私に良い考えがある。もう一度シュミレーターを起動して頂戴」
「は、はい!」
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「しっかし因果なモノだねぇ」
暗い意識の海の底で1人呟く。まさか飛燕の末裔を宿主が弟子にするなんて。
「君が生きていたら何て言ったかな。ねぇ?不知火」




