コソ練
「そこ!」
狙いを定め、撃つ。直後、射線に吸い込まれる様に深海が飛び出す。
「っ!」
「チッ」
直撃する寸前で深海は急旋回して真逆に飛ぶ。
「デタラメな!」
「ふふっ」
直撃コースだと言うのに当たらない。弾速より深海の反応速度が上回っているのだ。
「なら!」
壁に身を隠し、シオンのバレルを展開し、スナイプモードに変形させる。やった事はないが、コイツの貫通力ならできる筈。
速度、標準、よし。
「当たれよ!」
ドウッ
予想通り光線は壁を貫き、線を描きながら飛ぶ。しかし、そこには深海の姿が無く
「っ!」
違う、真上だ。すかさずシオンを向けるがついさっき最大出力でぶっ放したばかり。リチャージが間に合っていない。
「まだぁ!」
ただではやられてなるものか。深海の持つ黒い剣を睨みつける。軋む音が聞こえ、その直後剣は粉々に砕け散る。しかし
「なかなかモノになって来たじゃない。でも」
砕けた剣の破片から無数の手裏剣が。
「くっ!」
漆塗りの陶器の様な黒い刃は一斉に襲いかかり、全身をズタズタに切り刻む。シュミレータでなければ更に毒を受け、死んでいた。
だが、まだ負けていない。
「近づきすぎたな!」
降りてくる深海に左手に隠し持っていたナイフ状の初期型ハウンド、ゼロを突き出す。取った。
「それは少し露骨過ぎよ」
手にしたばかりの新たな武器は呆気なく足で払われ、顔面に蹴りを喰らう。だが、そこまでは見えていた。
「囮だからな」
「何?」
ゼロを囮にシオンをロッカに持ち替えていた。僕の顔を蹴りながら飛び退くが、今の深海には足場がない。
これが今僕にできる全力。大きく踏み込みロッカを振り下ろした。
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「またダメだったか……」
これで10回目だ。お互い手の内を知り尽くした相手とはいえ、一度だって深海に攻撃できなかった。不意打ちすら読まれる。
片手と片目を使えない上、小夜時雨や爆薬など普段使っている武装の殆どを使ってないと言うのに。
「逆にそんなに早く追いつかれると私が困るのだけど」
「まあ、そうなんだが」
何が不満なの?と眉を顰めながらスポーツドリンクを深海きら手渡され、受け取る。
キンキンに冷えていて熱った体に染み渡る。
「今までちょっとした死線は潜り抜けて来た。経験値はそこそこある。とは思ってるんだが、あまり実感できないんだ」
「………」
深海は顎に手をやり、しばらく考え込むと何か思いついた様で僕に向き直る。
「貴方、本番は燕翔寺と組むのよね?」
「え?ああ、まあ」
「この前言った、与える力。その練度を上げるのも良いかもしれない」
「………与える力、か」
比出塚さんの言葉を思い出す。
『自分はやっぱり頼りないのかなーって』
そうか、そうだな。自分に特別な力があるからと、少し気を張り過ぎていた。
「ありがとう、深海」
「………?急に何?」
「いいや、これからも頼りにしてるって事。燕翔寺を呼んでくる。深海も少し休んでてくれ」
「え、ええ。分かったわ」




