再スタート
朝、例の場所に行くと見慣れた顔があった。
「……桐堂?」
「えっと……おはよう」
ここにも随分と来てなかったが、深海は変わらず毎日来ていた様だ。ベンチに座って本を読んでいる。
それを知ってまた、罪悪感が湧く。
「傷は……まだ治ってない、よな」
「血は止まったわ。少し跡になったけれど」
そう言って深海は左目を覆う眼帯を捲ると、そこには大きな切れ込みが深々と刻まれていた。他にも、腕や足、至る所に包帯が巻かれていた。
「すまない……」
「何で貴方が謝るのよ」
はぁ、とため息をつくと隣に座る様、促され大人しく従う。
「今回、全面的に私に非がある。ごめんなさいね、偉そうな事言いながら貴方を1人にした」
「でも、1人なら1人で気をつけるべきだった」
あの日、深海がいなかったとは言え傘草先生や他のメンバーも居た。学園内にさえ居れば僕が攫われることは無かった。
「怖い思い、したでしょ。護衛失格よね」
「………」
「所詮は殺戮人形、殺すことはできても護ることは出来なかった………」
「そんな事は無い」
「……?」
深海がいなければ僕は入学直後に死んでいたし、手加減されていたとは言え、稽古をつけていてくれたからこそ、あの場で深海が体勢を立て直すまで、テレサ相手に時間稼ぎする事ができた。
「ならお互い様ね。………頼りない護衛だと思うけれど、また守らせてくれるかしら」
「何言ってるんだ。お前が居ないと文字通り死ぬぞ?」
「それはそれでどうなのかしら……」
突然深海の手が僕の後頭部に伸び、そっと抱き寄せる。
「まぁ、そう言う事なら守ってあげないとね」
「全く手のかかる子だ。そう言うところも素敵だけど?」
抱きしめる力が強くなる。この口調、オルキヌスだ。
「可愛いなぁ。食べちゃいたいくらいだよ」
「ひっ」
「オルキヌス」
「はいはい、冗談、冗談ですよ」
そう言って再び深海に戻ると、手を離す。それが少し名残惜しく感じる。
「で、明日からは登校するのかしら」
「まあ、一応は」
ただ学園には大江山がいる。少し気が引ける。
「私が守る。さっき約束したばかりでしょ」
「そうだけど……」
「メラノ達も待ってるわ。結局あれから会ってないでしょ」
そうだ、深海だけじゃ無い。メラノさんも、皆んなが僕を助けてくれた。
「お礼、言わなきゃな」
「そ。今日は適当に言っておくから、明日からは来なさいよ」
「ああ。あと、そうだ。深海」
「……?何?」
弱いままではいたくない。今後テレサの様な相手が来るかもしれない。それに
「また、稽古をつけてくれないか」
「良いけど……ああ、そう言う事」
何より、あの大江山に勝ちたい。実力であいつを負かしたい。
「前よりも厳しくしていくわ。それでも良いかしら」
「望むところだ」
「………HRまでまだ少し時間があるわね」
そう言って深海は袋から2本のダミーソードを取り出すと、片方を僕に投げ渡す。
「なら、早速稽古といきましょうか」
「え?怪我は」
「あら、この程度の損傷で私が貴方に負けるとでも?」
「ははっ、違いない」




