洗浄
皆んなの僕を見る目が変わった。
大多数の人間の耳には、成績優秀だともて囃されていた僕がもう一人の成績優秀者、大江山を恐れて危害を加えた。という話で伝わってしまっている。
………らしい。
先生は「お前が悪く無いのはわかってる。だが……すまん」と苦い顔をするだけで事態は一向に好転しない。
「クソッ、クソッ……」
噂が広まるのは早いもので、廊下を歩くたびにコソコソと内緒話が聞こえる。
「(なんで、僕がこんな目に)」
意味がわからない。僕が何をした。僕があいつに何をした。
「桐堂様……」
「僕に近づくな。話しかけるな」
「っ………」
「……ごめん」
顔を伏せ、その場を去る燕翔寺を見送りながら呟くように謝罪する。
突然攻撃され、止む無く交戦した結果このあり様。あの時、どうすればよかったんだ。
むしゃくしゃして廊下を駆け抜け、外に飛び出す。
「あら、あら」
そこには修道女のような姿をした少女の姿が。年は僕たちと同じくらいに見えるが、少しだけ大人びた雰囲気を感じる。
「貴方が御子、ですね?少しお時間頂けますか?」
「誰だ、アンタ」
イライラしていることも相まって自分の正体を知っているかのような口ぶりに敵意をむき出しにして睨みつける。が、まるで瞬間移動したかのように彼女は僕の後頭部にそっと手を添えると胸に抱き寄せる。
恐ろしい速度に驚愕する。すぐに振り払おうとするも、肩の力がどんどん抜けていく。
「(これは……いったい……?)」
不思議な匂い。なんだか心が落ち着く。懐かしいような、安心感で満たされる。
すぶぶっ
「うぶぉえっ」
突然吐き気がしてハッとする。少女の右手が僕の頭を貫き、中をグジュグジュとかきまじ、ぇあぇぃふぃ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
やはり奴の狙いは桐堂だった。本来ならまだ授業中のはずだが何故か外の広間で2人が対峙していた。
「ふんっ!」
急降下しながら小夜時雨を振り下ろし、躱した先を狙って蹴りを放ち、桐堂から引き剥がす。
「おそくなった。桐堂、平気?」
「?」
私の問いに彼は不思議そうにただ見つめる。そして、桐堂が発した一言で全てを察する。
「君は………誰、かな?」
「っ……お前、桐堂に何をした」
「特別な事はしてませんわ。ただこちら側は招き入れただけのこと」
「死ね!」
「うふふふふふっ」
女は嬉しそうに笑うと霧のようになって消えてしまう。それを見て桐堂は
「あの子、また会えるかな」
そう確かに呟いた。




