疑惑
「お、おはよ。桐堂くん」
「おはようございます、メラノさん」
朝、教室に入ると僕たちのクラスに例の人形の正体である噂の女子生徒、メラノさんが遊びに来ていた。
「桐堂様、おはようございます」
「ああ。燕翔寺もおはよう」
どうやら先程まで燕翔寺と何やら話していた様だ。この2人が並んで座っていると何処か優雅な雰囲気が漂う。
お嬢様特有の気品。
「汚してみたいものだ……」
「道尾、気持ち悪いからちょっと離れてくれ」
「やだやだやぁだぁ!」
「はー、うっざ」
しっしっ、と手で払うと「ムキー!」と言いながらどこかへ走り去っていってしまった。もうすぐホームルームが始まるんだが……まあ良いか。
「そ、それでね、ここの場面がね・・・」
「成る程・・・」
「(2人で本を読んでいるのか)」
それぞれ片側を持って2人で一つの文庫本を見ている。口振り的におそらくメラノさんの本だろう。
「何ていう本なんだ?」
「この本ですか?これはk「だ、ダメっ、教えちゃ」そうなのですか?」
どうやら僕には教えられない様なタイトルの本らしい。どんなものかはあまり想像しない様にしておく。
「すみません、桐堂様」
「いや、大丈夫だ」
誰しも人に知られたく無い事くらいあるだろう。
僕だってある。女子にコテンパンにされたとか女子にコテンパンにされたとか。それをわざわざ知ろうとするのは無粋だろう。
「(知られたくないこと、か)」
ある席に視線を移す。最近じゃよく一緒に行動を共にする様になった黒髪の少女の席だが、今日はまだ来ていない。いつもならこの時間には来ているはずなんだが。
命の恩人には変わりないのだが、深海は何かと秘密が多すぎる。昨日もそうだ。
彼女は何か隠している。




