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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
オートマチック・ファニードールズ
31/108

自立人形






「おやおやぁ〜?」


 聞き覚えのある声にバッと振り返ろうとするも、その前に肩に腕を回される。


「ハーレムですかい」

「違う」


 耳元で囁く声に即答で返す。深海はボディーガードだし、燕翔寺は少なくとも今はまだ友人だ。


 特に燕翔寺は飛燕グループの社長令嬢。もう既に許嫁的な存在があるかもしれない。


 そんな余計な事を考えているともう片方の肩にも手が。


「即答は逆に怪しいなぁ〜?」

「だから違うって」


 安良川だ。僕の今のところ唯一の同性の友人、と言える様な人物なのだが、正直言って道尾が2人に増えた様なものだ。


「いやぁ、良い御身分ですな」

「話を聞いてくれ……」


 めんどくさいセクハラオヤジ2匹に囲まれ、思わず項垂れる。やはりこの手の人種は苦手だ。


「それで、何の用だ……?道尾」

「茜音って呼べよぉ!」

「いづっ!?」


 相変わらず苗字で呼ばれるのは嫌な様で、背中に張り手を喰らう。結構痛い。


「あの、道尾様?」

「って、そうそう!本題忘れるとこだった!サンキュー智恵ちゃん!」

「ひゃぁっ!?」


 突然のハグにアタフタする燕翔寺。対する道尾はそのまま、その本題とやらを語り始める。


「皆んな、この学校の七不思議って知ってる?」


 思わせぶりな顔で聞く道尾に対する返答はそれぞれ


「知らん」

「興味ないわ」

「七不思議、なんだか古典的なワードでございますね」

「…………」


 期待していた反応ではなかったらしく、頭を掻きながら口を尖らせる。


「ちぇっ、せっかく面白い話聞いてきたのに」


 ただ道尾の好意を無碍にするのもなんだか可哀想な気がして、同じく道尾に申し訳なさを感じている燕翔寺と目を合わせ頷く。


「すみません道尾様。せっかく話題を用意していただいたのに、私ったら……」

「もぉー、智恵ちゃんったら可愛いなぁ!いーのいーの!なら、せっかくだし聞く?」

「はい」

「隣のクラスの子から聞いたんだけどさ、なんか一つだけ席がずっと空いてるんだって。先生に聞いてみてもなんかはぐらかされただけで、教えてくれないみたい」

「………」

「でも昨日だったかな?一個上の先輩がその教室覗きに来たの。その時ね……」



『あそこ、まだ空いてんのかよ』



「って言ったの」


 よくありそうな話だ。ただ実際にこの学園で、となると少しだけガセネタ感が減る。


「それで、どうしたんだ?」

「先輩に聞いてみたの。何か知ってるんですかーって」

「お前凄いな」

「え?何が?」


 恐らく初対面だっただろうに、そんな自然に目上の人と会話できるなんて


「いんや、そこの真くん使った」

「使ったってお前……」


 真というのは安良川の事だ。


「だって真くんも気になるって言ってたし」

「おう!まあ、その先輩俺の知り合いだったしな。気にすんな」

「そしてね!そしたらね!去年もその前の年もずっと空いてあんだって言ってて、座席表の名前まで変わって無いんだって」


 ただの不登校の可能性も捨てきれない。しかし、何年も同じ席というのは少し変な気がする。今の時代、映像でも授業を受けられるし、ある程度単位が足りていればそのまま進級できるはずだ。


「(どう言う事だ……?)」

「確か名前は…………【メラノ=リードリヒ】って言ってたな」


 安良川は人差し指を振りながら件の人物の名を告げる。


「(メラノ=リードリヒさん、か)」


 聞き覚えのない名前だ。


「(亜人族の人かも知れないな)」


 2人に視線を送るが燕翔寺も首を傾げる。深海にいたっては読書をしていた、があることに気づく。


 ページが進んでいない。よく見れば少し不機嫌そうな目で道尾たちを眺めていた。


「そしてね、ここからが本題なの!」


 まだ本題じゃ無かったのか。と言う疑問は呑み込み、僕は黙って道尾の力説に耳を傾ける事にする。


「で、これが出てくるわけ!」


 そう言って懐から取り出し、何やらスマホを操作する。

 この武凪士学園ではスマホにインストールしたアプリを使用し、電子学生証としても扱うため、授業中に使用するなど余程のことがない限り使用に制限はされていない。


ピコンッ


「……ん?」


 軽い調子の着信音が僕のポケットから聞こえる。


 音の正体であるスマホを取り出すと、一件の通知が来ていた。連絡先を交換した覚えはないからクラス共通のグループ経由で勝手に登録されていたのだろう。


 まあ、それは良いとして。


「これは……」


 送られてきたのは一つの映像データ。ぬいぐるみの人形がちょこんと机に座って写っている。背景が暗いことから夜の間に撮影されたのだろう。


「お人形さんでございますね?あの、道尾様。このお人形さんがどうかされたのですか?」


 さも当然の疑問に道尾は「待ってました」と不敵に笑い、僕のスマホをタップする。


 ザザっという雑音と共にグリッと人形は頭を擡げ


『私の名はメラノ=リードリヒ』


 確かにそう名乗ったのだった。






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