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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
交差する運命、深みの使者
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理想郷





 体育館から戻り、指示通り教室で待機していると1人の女子生徒が近寄ってきた。


 その少女に僕は見覚えがある。


 【燕翔寺(えんしょうじ) 智恵(ともえ)】。中学の頃、一度だけ同じクラスになっただけで殆ど接点は無い。


「(しかし、こんな学校に来るとは)」


「中学2年生以来、だな。燕翔寺さん」

「はい。覚えていてくださったのですね、桐堂様」

「ああ」


「いや、燕翔寺が有名人なだけで……」と言いそうになったが、寸での所で抑える。


 【燕翔寺家】。世界有数のハウンド開発企業【飛燕(ひえん)グループ】の責任者であり、ここ、化狩学園都市内でもトップに君臨する有力者の一家で彼女はその令嬢だ。学校だけで無くメディアでも一時期よく取り上げられていた。


「見知った方がいらして本当に良かった。これから宜しくお願い致します」

「ああ、こちらこそ宜しく」


 しかし顔見知りが1人いるだけで気が楽になるのは事実。燕翔寺とはこれから仲良くできたら良いな。


「わたくしのことは呼び捨てで構いませんよ」

「えっと……」


 飛燕グループの令嬢様を呼び捨てと何とも恐れ多いことを要求されるが、本人が言うなら仕方がない。


「わかった、燕翔寺……で」

「はい、宜しくお願い致します。桐堂様」


 そっちは様付けかよ、とはつっ込まない。多分彼女は天然だ。


「(さて……)」


 隣の席の少女を横目で見る。


 深海瑠花、今年の新入生代表である黒い髪の女子生徒。エレミュートの影響を受け人間の髪色は様々だが、黒と白はかなり珍しい。


 エレミュートの影響の薄かった前の時代はまだ多かったらしいが。


「……何か用?」


 勘づかれたらしい。観念してそちらに向き直る。


「ああいや、深海さんもこれから宜しく」

「ええ、宜しく。そちらの子も」

「はい、宜しくお願い致します」


 全くの無表情。怒らせてはいない様だが……


「お知り合いですか?」

「いや、全然」


 メガネをかけていて、雰囲気的にもあまり活発ではない様子。それもそのはず、武凪士学園には将来フォリンクリを討伐する所謂「ハンター候補生」だけでは無い。普通に勉強してさらに上の学校を目指す「普通科生徒」もいる。


 一年目はお互い基礎知識を学ぶ為に同じ教室で過ごす。


「(代表に選ばれるって事は相当賢いんだろうな)」


 それに多種多様なのは科目だけでは無い。ここにいる人間も多種多様だ。


 ツノが生えていたり尻尾がある生徒がちらほら見える。亜人の生徒だ。エレミュートの影響は髪だけでは無い。適合し、不思議な異能に目覚めた「能力者」から肉体が変質し、異形の姿になった「亜人」、そして僕の様な異能も特殊な体質も持たない「無能力者」。


 昔はこの"違い"は色々と問題を抱えていた。それが今は学舎を共にしている。


「(やっぱり、ここはすごいな……)」


 ある意味理想郷の様な空間に少し感動していた。






 



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